顧客はAI応対をどう受け止めているのか ー 満足度調査データを読み解く対話

「顧客対応にAIを使う」ことへの企業側の迷いは薄れつつあるが、対応される側の消費者はどう感じているのか。Gartnerの顧客調査(2026年2〜3月・3,566人対象)では、企業が生成AIを使う際「有人窓口へのアクセス手段が必須」と答えた顧客が87%にのぼった一方、「生成AIのおかげでやり取りが楽になった」と答えた顧客も50%存在した。導入の是非ではなく、受け止め方の中身を読み解く必要がある。今回は国内外の消費者調査を持ち寄り、世代差・用件差の両面から対話で整理する。
「使いたい」と「任せたい」は別 ー 海外調査が示す期待と拒否の同居
相馬迅: 冒頭のGartner調査、数字が矛盾して見えるところが面白いです。有人担当者へのアクセスを求める声が87%ある一方で、生成AIのおかげでやり取りが楽になったという回答も半数いる。AIを使うこと自体への抵抗は薄いのに、逃げ道の確保だけは譲らない、という構図に見えます。
相原ことは: その整理は妥当ですが、もう一段掘ると「AIで十分な場面」と「人でないと困る場面」を顧客が最初から区別している可能性が高いです。別のGartner調査では、商品・サービスの推薦について人間の担当者を信頼すると答えた顧客が54%、AIを信頼すると答えた顧客は32%にとどまっています。判断や助言が絡む用件だけ、信頼の置き所が違う。同じ発表に含まれるサービス責任者321人への別調査(2025年9〜10月実施)でも、人の担当者の役割を拡大していると答えた責任者が85%に上っており、現場の受け止め方と経営判断は同じ方向を向いています。
相馬迅: 期待値のインフレも見逃せません。ZendeskのCXレポートは22カ国・消費者6,000人超を含む1万1千人規模の調査ですが、チャットボットに「熟練した人間の担当者と同水準の専門性」を求める回答が68%でした。これは相当ハードルが高い。多くの企業はこの水準に届く前にチャットボットを公開しているはずで、「AIが使えない」という不満の少なくない部分は、精度そのものより期待値との差から生まれているのではないでしょうか。
コールセンターの音声AI受付、国内消費者の本音は
相原ことは: 海外調査はチャット中心ですが、国内でコールセンターの電話窓口に限定した調査だと、もう少し厳しい数字が出ます。ウィズ・プランナーズの調査(2026年6月・全国1,000人)では、電話窓口でAI音声応対に何らかの不安・不満を感じると答えた人が73.3%、「人のオペレーターでないことへの不安・違和感」を挙げた人が27.2%でした。「AIで十分」と答えた人はわずか26.7%です。テキストのチャットと、声で応答する電話は、消費者にとって別物として受け止められている可能性があります。
相馬迅: チャネルの違いは重要な留保ですね。ここで一つ注意したいのは、この数字は一社が実施した単一の調査であり、業種や設問の作り方次第で振れる余地があるということです。ウィズ・プランナーズの調査は電話窓口という特定チャネルを対象にしたものなので、これを「AI応対全般への拒否感」に一般化すると読み違えます。
相原ことは: 同意します。実際、生成AIの利用経験そのものは急速に広がっていて、NRCの2026年3月調査では生成AI利用経験率が20代で69%、60代で37%と世代差はあるものの、全体では半数近くに達しています。「AIに慣れているかどうか」と「電話でAIに応対されて安心できるかどうか」は、別の軸として扱うべきです。
世代差より効いていた変数 ー 用件で分かれる受け止め方
相馬迅: その世代差についても、単純に「若い人ほどAI受容的」と決めつけていいのか気になります。NRCの数字だけを見ると、そう読みたくなる誘惑があります。ただ、相談内容によって順位が入れ替わる調査があれば見てみたいです。
相原ことは: そこはむしろ逆転する事例があります。Helpfeelの調査(2025年12月・AI利用経験者1,203人対象)では、恋愛や人間関係の相談について20〜30代はAIを選ぶ割合が人への相談を上回った一方、40〜60代は人への相談が過半数でした。ところが「今日の献立を決めたい」という情報整理寄りの相談では全世代でAIが多数派になり、60代以上の女性ではむしろ83.3%と最も高い割合でした。世代ではなく、相談内容の性質(感情や関係性が絡むか、単純な情報整理かどうか)で、受け止め方が逆転しています。
相馬迅: コンタクトセンターの用件に置き換えると、どう読めますか。料金照会や配送確認のような定型情報は年齢を問わずAIで構わないが、クレームや複雑な事情説明は年齢を問わず人を求める、という仮説は成り立ちますか。
相原ことは: その仮説を補強するデータもあります。ラクスの調査(2025年9月)では、チャットボットやFAQで自己解決を試みた人のうち約7割が、結局解決できずに有人対応へ移行した経験があると答えています。ここでも「使ってみたが最終的に人を求めた」という構図は、冒頭のGartner調査の87%と重なります。世代よりも、用件が定型か非定型かの方が、受け止め方を左右する変数として強いのではないでしょうか。
複数の調査を並べても、「AI応対はどこまで受け入れられているか」という問いに一言では答えられない。ただし共通して見えるのは、AIそのものへの拒否感より「人に切り替えられる保証」への強いこだわりであり、国内外・世代を問わず表れている。コンタクトセンターの設計者が持ち帰るべき判断軸は、対象顧客の年齢層ではなく、扱う用件がどこまで定型か、そして有人への切り替えがどれだけ滑らかに用意されているか、の2点だ。
注記: 本記事の事実関係は2026年8月21日時点で各出典URLにて確認した。各社・各調査機関の数値は公表資料に基づく。本対話は公開情報のデスクリサーチに基づく編集上の構成であり、見解にわたる部分は筆者個人のものである。
出典
ウィズ・プランナーズ株式会社「『AI音声の電話受付』に対し約7割が不安・不満を実感!?効率化の影で低下する“顧客満足度”」(PR TIMES)
株式会社Helpfeel「2025年、最も積極的にAIを活用しているのは『60代以上の女性』【こんな時、AIと人、どちらに相談する?】AI利用の実態調査結果を発表」(PR TIMES)
株式会社ラクス「【約7割が解決できずに有人対応に移行した経験あり】チャットボットやFAQページに期待される“問い合わせ削減”に潜む落とし穴と改善策」(PR TIMES)
この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。



