AIオペレーター支援(Assist)vs AIオペレーター代替(Replace)の判断基準 ー 何をAIに任せ、何を人に残すのか

Klarnaは2022年から2024年にかけて約700人分のカスタマーサポート業務をOpenAIと組んだAIアシスタントに置き換え、導入初月に230万件の会話を処理し、当時のカスタマーサービスチャットの約3分の2(約67%)をAIが担うところまで一気に進めた。ところが2025年、同社は人間のエージェントを採り直す方向へ舵を切る。CEOのSebastian Siemiatkowski本人が「効率とコストを重視しすぎた。結果として品質が落ちた。それは持続可能ではない」と認めた。この一件は「AIで人を減らせるか」という問いが、実は「何をAIに任せ、何を人に残すか」という設計の問いだったことを示している。本稿の立場は単純で、コンタクトセンターAIの意思決定は「支援(Assist)か代替(Replace)か」を業務単位で切り分ける設計判断であり、全体を一律に語る話ではない、というものだ。
1. いま業界が置いているのは「代替」ではなく「支援」の側

2026年の各種調査を並べると、コンタクトセンターの主流の型は全面代替ではなく、AIと人の役割分担(human-in-the-loop)に寄っている。CMSWireが2026年にまとめた統計では、リーダーの76%がAIはルーティングや対応可能性の判断を担い、複雑で感情的・高リスクな対応は人が担う、という分担を制度として定めている。エージェント支援(agent assist)の効果も具体的で、次に取るべき行動を検索なしで提示することで、解決件数を14%増やし、処理時間を9%短縮するとされる(同記事が引くMcKinsey調査由来)。
当て馬として全面代替の側を置くと、輪郭がはっきりする。Klarnaはカスタマーサービスチャットの約3分の2をAIに寄せた最も先鋭的な代替事例だったが、2025年に人の再採用へ戻った。つまり、最も遠くまで代替を進めた企業が、支援と代替の混在(ハイブリッド)へ引き返した、という構図になっている。
もっとも、この76%や9%という数字はベンダーやメディアの調査由来で、測り方や母集団が揃っていない点には留保が要る。Gartnerは2029年までにエージェンティックAIが一般的な問い合わせの80%を自律解決し、運用コストを30%削減すると予測しており、代替の比率が今後上がる見立ても同時に存在する。ここで押さえるべきは「支援か代替か」は固定された勝敗ではなく、業務ごとに動く境界線だという点だ。

