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コールセンターの「雇用」とAI ー オペレーターの役割はどう変わるか

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コールセンターの「雇用」とAI ー オペレーターの役割はなぜ「消える」より「変わる」なのか

Forresterは、2030年までにカスタマーサービス職の49%がAIによって失われると予測している。国内でもベルシステム24が2026年から応対の完全自動化で人手を5割減らす方針を示し、アフラック生命保険はOpenAIと組んで日本のコールセンター人員を半減させ、500億円規模のコスト削減を見込むと報じられた。数字だけを並べれば、コールセンターは人がいなくなる職場に見える。

ただ、同じForresterの調査をもう一段めくると、別の数字が出てくる。8割超の企業が「人間のオペレーターの責任範囲をむしろ拡張する」と答え、84%が「新しいスキルを役割に加える」としている。消える予測と、広げる予測が同居している。ここで立てたい問いはひとつ。オペレーターの仕事は本当に「消える」のか、それとも「変わる」のか。結論を先に言えば、消えるのは業務であって役割ではない、というのが現時点での私の見立てだ。

1. 「49%消滅」の内訳 ー 減っているのは採用、次いで人員

まず数字を押さえる。Forresterの2030年49%減という予測は強い。だが「いま何が起きているか」を見ると、減り方には順番がある。Metrigyの最新調査では、AIを理由に「新規採用を絞った」企業が55.7%にのぼり、これが最も多い。次いで「AIを理由に人員を削減した」が36.8%で、Metrigyはこれを「企業がAIを直接の理由に人員を減らした初めての局面」と位置づけている。

当て馬として過去の自動化と比べてみる。IVRや音声認識が入った2010年代、コールセンターの人員は「置き換え」より「増やさずに済ませる」方向に動いた。つまり採用の蛇口を先に締め、既存の人はしばらく残る。今回のAIも入り口は同じで、まず採用が絞られ、次に人員に及ぶという順序をたどっている。もっとも、Metrigyが「初めて人員削減が理由に入った」と言う通り、置き換えの圧力は前回より一段強い。単純に「昔と同じ」とは言えない。

減り方には偏りもある。Forresterは、定型の問い合わせがAIエージェントにほぼ移るため、ジュニアや中堅の担当者が最も影響を受けると指摘する。実績の数字も出ている。Anthropicでは顧客問い合わせの96%にAIが関与し、Heathrow空港では旅客対応の90%、Rocket MoneyやTeamSystemでは68〜80%をAIが解決しているとされる。数字は各社の自己申告ベースで、解決の定義もそろっていない点は割り引く必要があるが、定型領域から人が抜けていく方向ははっきりしている。

2. なぜ「消える」で終わらないのか ー 抜けた後に残る仕事の質が変わる

では、なぜ「消える」だけの話にならないのか。メカニズムはシンプルだ。AIが定型を持っていくと、人に残るのは非定型だけになる。そして非定型の対応は、これまでより難しい。

料理店の厨房を想像すると分かりやすい。仕込みと盛り付けを機械が担うようになると、料理人に残るのは味の最終判断と、クレームやアレルギーのような例外対応だ。作業量は減るが、一件あたりの難度は上がり、求められる技能はむしろ高くなる。コールセンターでも同じことが起きる。Forresterは、人間の役割の中心が「顧客に直接応対する」ことから「顧客に応対するAIを管理する」ことへ移ると整理し、58%の企業がオペレーターをナレッジマネジメントの専門職の方向へ動かすと答えている。No Jitterも、AIによる人員の縮小と、残る役割の高度化が同時に進む構造を、複数の統計から示している。

具体例で見ると、この「変わる」側が見えやすい。家具のIKEAは、AIが定型の問い合わせを吸収する一方で、8,500人超のカスタマーサービス担当をインテリアデザインのアドバイザーへ再教育した。応対要員を減らして終わりにするのではなく、AIに任せた分の人を、ブランドの差別化につながる高付加価値の接客へ振り替えている。国内でも同じ形が出ている。ニトリはギブリーと進めたコンタクトセンター改革で約30人分の工数を削減し、そのリソースを遠隔接客などの高付加価値業務へ再配置したと発表している。SBI生命は通話後の後処理(ACW)をほぼゼロにし、年間約5,000時間を削減したうえで、空いた時間をAI前提の業務モデルへ再設計したとしている。いずれも削減が目的ではなく、人の時間の置き場所を変えている。数値は各社の自己申告である点は前提として置く。

3. 役割はどこへ移るのか ー 再現できる4つの型

ここまでの事例から、オペレーターの役割の移り先を「型」として抜き出すと、おおむね4つに整理できる。

第一に、AIを設計・運用する側への移動。AIエージェントの応答フローを組み、ナレッジを更新し、間違えたら直す役割だ。Forresterが言う「AIを管理する」中心業務がこれにあたる。なぜ効くかというと、AIは入れて終わりではなく、ナレッジの陳腐化とともに精度が落ちるため、現場で回し続ける人が要るからだ。

第二に、ナレッジマネジメントの専門職。問い合わせ履歴やFAQを、AIが使える形に整え続ける役割で、58%の企業が向かうと答えた先でもある。定型がAIに移るほど、AIの回答の元になるナレッジの質が成果を直接左右する。

第三に、非定型・高感情対応のスペシャリスト。クレーム、カスタマーハラスメント、感情や事情が絡む相談など、AIに渡しきれない領域を担う。IKEAのデザインアドバイザー化のように、ここは「人にしかできない価値」として有料のリッチなサービスへ育つ余地がある。

第四に、AIと人の切り分けを設計する役割。どの業務をAIに任せ、どこから人へ取り次ぐか、その境界を引き、エスカレーションの動線を設計する仕事だ。本日別途取り上げたはなさく生命の保全AIコール(Micoとアグレックス)も、AI架電から必要に応じて有人転送へつなぐ設計が肝になっている。切り分けの巧拙が体験と成果を決めるため、ここは今後もっとも人の判断が要る領域になる。

4. 示唆 ー 「変わる」が成立する条件

ここからは私の見立てとして書く。役割は消えるのではなく変わる、と述べてきたが、これは放っておいて実現する話ではない。再教育の仕組みがなければ、「変わる」は絵に描いた餅で終わり、実際には「消える」だけが残る。

自己反証をひとつ入れておく。「役割は高度化する」という話は、実は都合よく聞こえる。だが現実には、CX Todayが指摘するように、自動化技術と協働するための体系的な研修カリキュラムを持つ企業は50%にとどまる。つまり半分の企業には、オペレーターを「AIを管理する側」へ引き上げる仕組みがない。仕組みがないまま定型業務だけがAIに移れば、残るのは「難しい仕事を、準備なしで担わされる少人数」になりかねない。Klarnaがサポートを大幅にAI化した後、品質低下を受けて人を採り直した経緯は、この揺り戻しが実在することを示している。

だから「変わる」が成立する条件は、少なくとも次の3つがそろったときだと考える。ひとつ、再教育の仕組みがあること。ふたつ、AIに任せる業務と人が残す業務の切り分けが設計されていること。みっつ、AIを回し続けるナレッジ整備の担い手が現場にいること。この3つが欠けたまま人員計画だけを先に決めると、削減は進むが役割の移動は起きない。

まとめ

第一に、「49%消滅」は入り口では採用の抑制として、次いで人員削減として現れており、まず影響を受けるのは定型を担うジュニア・中堅層である。第二に、定型がAIに移るほど人に残る仕事は非定型に寄り、一件あたりの難度が上がるため、役割は消えるのではなく高度化する方向に動く。第三に、その高度化は自動的には起きず、再教育・切り分け設計・ナレッジ整備という組織側の準備があって初めて成立する。

最後に問いを置きたい。あなたのコールセンターは、オペレーターの人数を減らす計画は持っていても、残る人を「AIを管理する側」へ引き上げる計画を持っているだろうか。減らす計画だけが先に進んでいるとしたら、それは「変わる」ではなく「消える」に向かっている。

注記: 本記事は2026年7月14日時点で確認できた公開情報にもとづく。各社の削減率・解決率・工数削減などの数値は、企業・ベンダー・調査主体の公表値(自己申告を含む)であり、一次情報での裏取りは記事作成時点で未了。役割の移り先に関する見立ては筆者(相原ことは)の個人的見解であり、特定企業の人員計画を推奨するものではない。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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