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Uberは7月にサポート組織を、9月に管理階層を削った ー 「断片化した業務の上にAIは載らない」をコンタクトセンターの間接層で読む

相馬 迅CC AI Lab
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2026年9月2日、日本経済新聞はウーバー・テクノロジーズが管理職などを中心に約3,300人、全世界の従業員の10%を削減すると報じました。CEOのダラ・コスロシャヒ氏が同日、従業員へのメールで伝えたもので、日経は新型コロナウイルス禍の削減に匹敵する規模だとしています。

コスロシャヒ氏のメモの全文はBusiness Insiderが掲載しています。メモは削減の理由を「We are removing layers, simplifying team structures, refining our global location strategy, and focusing our people and investments against the biggest opportunities ahead of us」と書き、具体策として、調整を主務とする役割の削減、管理職の担当範囲を広げることによる管理階層の圧縮、CEOから7階層以上離れた従業員の20%減、部下が1〜2人しかいない「micro-teams」の半減近い削減、在宅勤務者を約1%まで絞る拠点戦略を挙げています。このメモに「AI」という語は一度も出てきません。

ここで時系列を先に押さえます。同じUberは2か月前の7月22日、カスタマーサポート組織である「Community Operations」の約10%を削減し、Business Insiderの報道によれば、そのときは会社としてAIを理由に明言しました。同組織を率いるMegha Yethadka氏はチームへのメモで「We cannot scale frontier technology on top of fragmented processes」と書いています。さらに遡ると、2020年5月のSEC提出書類は、乗車需要の減少と採用凍結を理由に「customer support and recruiting teams」を約3,700人減らすと記しています。Uberがサポート組織を削るのはこれが初めてではなく、理由が「需要の消失」から「AIを載せる前の整理」へ変わった、というのが今回の位置づけです。

立てたい問いは一つです。7月の「AIを理由にしたサポート組織の削減」と、9月の「AIに触れない管理階層の削減」は、コンタクトセンターの側から見たとき同じ話なのか、別の話なのか。私の答えは、同じ話の前半と後半である、です。ただし読むべきは3,300という人数ではなく、順序です。断片化した業務を先に片付け、階層を減らし、その上にAIを載せる。この順序が、当ラボがKlarnaの反転から引き出した教訓と、どこで一致し、どこで食い違うのかを読みます。

この記事の要点

  • ①9月2日のCEOメモが挙げた削減対象は「調整を主務とする役割」「7階層以上離れた従業員」「1〜2人のマイクロチーム」で、メモにAIの語はない。7月のサポート組織削減は会社がAIを理由に明言した。同じ会社が2か月差で、AIを言う削減と言わない削減を並べた

  • ②サポート組織側の説明は「AIが置き換えた」ではなく「断片化した業務の上に最先端技術は載らない」。Gartnerのアナリストはこれを「現時点のAIの成功とは切り離すべき」と読んだ。削減がAIの成果の証拠になっていない点は、Klarnaと同じ型である

  • ③コンタクトセンターの組織は、オペレーターの上にリーダー・SV・マネージャー・センター長が載り、BPO委託ではクライアント側の管理層がさらにその上に載る。Uberが数えた「7階層以上」「マイクロチーム」「調整役」は、センターでは品質管理・研修・WFM・クライアント窓口といった間接機能に集まる。AIを載せる前に整えるべき「断片化」は、この間接層にある

1. 二つの削減を、性質ごとに読み分ける

日経の報道とCEOメモ、7月の報道を並べ、それぞれの記述が「何を数えた数字か」と「読み手が置くべき留保」を分けて整理します。

記述

原文の表記

読み手が置く留保

約3,300人、全世界の従業員の10%

日経「約3300人」「全世界の従業員の10%」。メモは「reducing the size of our team by about 10%」で人数は書いていない

人数はBusiness Insider・TechCrunch等が会社発表として報じた数字。2025年末の従業員数は10-Kで「approximately 34,000」

管理職などが中心

日経「管理職など」。メモは「roles primarily focused on coordination」「cut down the number of management layers by broadening manager scopes」

職種別・管理職の人数は非公表(日経)。メモが数えたのは管理職の人数ではなく「CEOから7階層以上離れた従業員」と「マイクロチーム」

7階層以上を20%減、マイクロチームを半減近く

「reduced the number of employees who sit 7+ layers from the CEO by 20% and the number of micro-teams by nearly 50%」

「7階層以上の従業員」は管理職とは限らない。マイクロチームは「部下1〜2人」のチーム。どちらも組織図上の数で、業務量の数字ではない

在宅勤務を約1%に

「only ~1% of employees will be remote」「three days a week in the office」

削減とは別の拠点戦略。7月のサポート組織でも在宅者にハブ勤務を求めた

7月、サポート組織の約10%を削減

Business Insider「about 10% of its community operations team」。広報「simplify operations, strengthen in-person collaboration, and continue to embrace AI」

人数は非公表。カリフォルニア州のWARN通知で確認できる削減は41人(報道)で、全体像ではない

削減はAIが理由

Yethadka氏「we need an effective organization to layer AI on」「We cannot scale frontier technology on top of fragmented processes」

「AIが置き換えた」とは書いていない。「AIを載せるために組織を整える」という説明

業績は好調

Q2 2026決算(8月5日)で売上高142億ドル(前年同期比12%増)、GAAP純利益24億ドル

純利益には持分投資の再評価による16億ドルの純益が含まれる。削減は業績悪化への対応ではない

コロナ禍の削減に匹敵

2020年5月のSEC提出書類「reducing its customer support and recruiting teams by approximately 3,700 full-time employee roles」

2020年はその後さらに約3,000人が追加された(報道)。当時の理由は乗車需要の減少で、対象は今回と同じサポート組織だった

この表から読めることが二つあります。第一に、9月の削減が数えたのは「人の役割」ではなく「組織図の形」です。7階層以上、1〜2人のチーム、調整役という単位はすべて組織図から読める数で、業務量や自動化率とは結びついていません。第二に、7月と9月は説明の言葉が違います。7月は「AIを載せるために」、9月は「調整に時間を使いすぎている」。理由の書き分けは、削減の対象が違うことの反映でもあり、AIという言葉がどの部門で説明として使えるかの反映でもあります。

2. 同じ会社の6年間を、削減の「理由」で並べる

2. 同じ会社の6年間を、削減の「理由」で並べる

Uberの人員削減は、対象と理由の組み合わせで見ると、2020年から今年にかけて4回の型が出てきます。

時期

対象

会社側の理由

AIへの言及

2020年5月

カスタマーサポートと採用チーム(約3,700人)、その後追加で約3,000人

乗車需要の減少と採用凍結(SEC提出書類)

なし

2026年6月

人事・採用の約4分の1(全社の1%未満)

会社は「AIとは無関係」と説明(Business Insider)

否定

2026年7月22日

Community Operations(カスタマーサポート)の約10%

「simplify operations, strengthen in-person collaboration, and continue to embrace AI」

明言

2026年9月2日

全社の約10%(約3,300人)、調整役・管理階層・マイクロチーム

「removing layers, simplifying team structures」

なし

同じサポート組織が、2020年は需要の消失で、2026年は「AIを載せる前の整理」で削られました。この2回の間で変わったのは技術だけではありません。2020年のメモでコスロシャヒ氏は「our need for CommOps as well as in-person support is down substantially」と、仕事の量が減ったことを理由にしました。2026年のYethadka氏は、仕事の量ではなく組織の形を理由にしています。「too complex and siloed」(Engadgetの報道)、「fragmented processes」。つまり2026年の削減は、業務量に対する人員の余剰ではなく、これから載せる技術に対する組織の不適合を根拠にしています。

もう一つ見ておきたいのは、AIという言葉の使われ方が7月と9月で反転していることです。7月は会社がAIを理由に挙げ、9月のメモはAIに触れませんでした。Gizmodoは、Bloombergが6月に報じた「Uberが年間のAI予算を数か月で使い切り、一部のAIツールに支出上限を設けた」という話と、コスロシャヒ氏が今年「コードの約10%をAIエージェントが書いている」「AIの効果が大きくなっているので採用を減速する」と述べていたことを並べ、AIが背景にある可能性を指摘しています。ただしそれは推測であり、9月のメモが書いているのは「too much work requires coordination across teams, debates take too long, and decision-making rights are unclear」という社内調査の声です。

3. 海外の先例と並べる。「AIを理由にした削減」は、その後どうなったか

7月のUberは、AIを理由にサポート人員を減らした企業の列に加わりました。その列の先頭にいる企業が、その後どうなったかを、各社の説明と結果の位置づけで並べます。

事案

会社側の説明(原文)

その後の位置づけ

Salesforce(2025年9月)

CEO Marc Benioff氏がポッドキャストで「I've reduced it from 9,000 heads to about 5,000, because I need less heads」。サポート応対の半分をAIエージェントが処理していると説明(Fortune)

撤回していない。数字は本人の発言であり、独立の検証を経ていない

Klarna(2024年〜2025年5月)

AIアシスタントが「700人分」の仕事をこなすと公表(業務量の換算値で、解雇者数ではない)。2025年5月、CEO Sebastian Siemiatkowski氏がコストを優先した結果「lower quality」になったと認め、人間のエージェントの採用を再開(Bloomberg、CX Dive)

部分的な反転。同社はチャットボット自体は成功だったという立場を維持している

Commonwealth Bank of Australia(2025年7月〜8月)

音声ボット導入で「Customer Service Direct」部門の45職を余剰と判断。8月21日に撤回し、声明で「We did not adequately consider all relevant business considerations」「we should have been more thorough in our assessment of the roles required」(ABC News)

撤回。ABC Newsによれば、ボット導入後にコール量はむしろ増え、管理側は残業を募り、チームリーダーまで電話対応に入っていた

Uber(2026年7月)

「simplify operations, strengthen in-person collaboration, and continue to embrace AI」。Yethadka氏「We cannot scale frontier technology on top of fragmented processes」

進行中。AIがサポートの何割を処理しているかの数字は公表されていない

この4件を同列に「撤回した企業」として並べると不正確になります。撤回したのはCBAだけで、Klarnaは配分の再調整、Salesforceは方針を変えていません。CBAの経緯は当ラボが本日、「AIで入電が週2,000件減った」が現場と食い違った経緯として別に整理しました。ただし説明の型は読み分けられます。SalesforceとKlarnaは「AIが仕事を置き換えた」と業務量の換算で語り、CBAはその換算が外れて戻しました。Uberの7月の説明は、この3社とは型が違います。「AIが置き換えた」ではなく「AIを載せるために組織を整える」であり、Yethadka氏のメモは「We've made some strides, but to unlock this potential, we need an effective organization to layer AI on」と、まだスケールしていないことを自ら認める書き方をしています。

この違いを、外部のアナリストは早い段階で指摘していました。CX Diveによると、GartnerのKathy Ross氏は「It's important to decouple Uber's headcount reduction and current AI success: This seems more like a business restructuring decision to set themselves up for future AI success」と述べ、ForresterのKate Leggett氏は「Every AI project that I have visibility into starts with cleanup of technical debt, knowledge, data and process rework」と、AI導入の前段には必ず整理の工程があると説明しています。Leggett氏は、整理ができない企業は削った人を採り直すことになるとして「The poster child for this is Klarna」と付け加えました。

Ross氏は、Gartnerが2025年6月に出した予測の担当アナリストでもあります。The Registerによると、Gartnerはカスタマーサービス・サポート責任者163名への調査をもとに、カスタマーサービス人員の大幅削減を計画していた組織の半数が2027年までにその計画を放棄すると予測し、2026年2月には「AIを理由に人員を削減した企業の半数が2027年までに再雇用する」という予測を重ねています。一方でForresterは、CX Diveの報道によれば、2030年までにカスタマーサービス職が半減すると予測しています。半減と再雇用は矛盾しているようで、実は同じことを言っています。定型の用件は減る、しかし整理を飛ばして人を削った組織は戻すことになる、という二つの予測が同時に成り立ちます。

階層の圧縮という9月側の型にも先例があります。Amazonは2024年9月、CEO Andy Jassy氏のメッセージで「increase the ratio of individual contributors to managers by at least 15% by the end of Q1 2025」と各組織に求め、階層が増えたことで「pre-meetings for the pre-meetings for the decision meetings」のような副産物が生まれていると書きました。同時に週5日出社を打ち出しています。Uberの9月のメモが、7階層以上の従業員の削減と在宅勤務の縮小を一つのパッケージにした構成は、Amazonと同じ型です。指標の置き方が違うだけで、階層を減らし、調整に使う時間を減らし、対面で決める、という三点は共通しています。

4. ラボの見立て。Uberが数えた「階層」は、コンタクトセンターではどこにあるのか

4. ラボの見立て。Uberが数えた「階層」は、コンタクトセンターではどこにあるのか

第一に、Uberの二つの削減は、当ラボがKlarnaの反転から引き出した順序を、逆から読んだものです。当ラボは8月、Klarnaの事例を「コスト削減を単一KPIに据えた運用設計の限界」と整理し、AIで空いた人時の受け皿を先に設計した組織が2年後に落ち着いた、と書きました。Klarnaは削ってから整えました。Uberの7月の説明は、整えるために削る、です。Yethadka氏の「effective organization to layer AI on」は、AIの成果を根拠にした削減ではなく、AIを載せる土台としての組織を先に作るという宣言で、9月のメモが同じ言葉遣いで「fragmented ownership」「roles primarily focused on coordination」を挙げたことと一本の線でつながります。順序としては、当ラボが7月にオペレーターの役割変化で挙げた「変わるが成立する3条件」、すなわち再教育の仕組み、AIと人の切り分け設計、ナレッジ整備の担い手、のうち後ろ二つを組織の形から先に手当てしようとしている、と読めます。

第二に、Uberが数えた単位をコンタクトセンターに置き換えると、削減の対象は席ではなく間接層になります。センターの組織は、オペレーターの上にリーダー、SV、マネージャー、センター長が載り、その横に品質管理、研修、WFM(人員配置計画)、レポーティング、そしてBPO委託ならクライアント窓口が並びます。カリフォルニア州のWARN通知でUberの7月の削減対象として挙がった職種は、TheStreetの報道によれば「Service Team Analyst」「Centers of Excellence specialists」「team leads」「program managers」で、電話を取る人ではなく、応対を分析し、標準を作り、プログラムを回す人たちです。Uberの「micro-teams」「coordination roles」に相当するのは、センターではこの間接層であり、「fragmented processes」はナレッジが個人のメモと老朽化したFAQに散っている状態、品質評価の基準が言語化されていない状態、クライアント側とBPO側で手順書が二重になっている状態として現れます。当ラボが取材したCOCOコンサルティングの診断で、ナレッジが個人のメモと老朽化したFAQに散っているITヘルプデスクの相談ケースに対して最初に出た処方が「まずはナレッジの整備」だったのは、同じ断片化を別の規模で見ているからです。

第三に、AIを言わない9月の削減のほうが、センターにとっては先に来る話かもしれません。当ラボが取材してきた国内のカスタマーサポート責任者の間でも、判断と知識をAIに持たせ、オペレーターに権限を渡してしまえば、手を挙げたオペレーターに答えるという今のSVの仕事の多くは要らなくなる、統制のための管理者は一人いればよい、という見立てが出始めています。当ラボが7月にメルカリ・Sansanの組織変革から引き出したのも、センターの現場管理者に「AIを管理する視点」が標準要件になる、という方向でした。Uberの9月のメモが「7階層以上」「1〜2人のチーム」を数えたのと、国内の現場が「SVは要るのか」と問い始めたのは、同じ場所を見ています。AIが直接置き換えるのは応対の一部でも、組織図で先に動くのは、その応対を管理する層です。

自己反証を二つ置きます。一つ目は、削減の理由付けは事後的に選ばれる、という可能性です。Gizmodoの見出しが「AI or Overhiring?」と問うたように、5年で売上が3倍近くになった過程で増えた階層を、AIと無関係に整理しただけとも読めます。7月にAIを言い、9月に言わなかった差は、対象部門の違いだけでなく、AIという言葉が説明として通りやすい部門かどうかの差でもありえます。Ross氏の「decouple」という助言は、この事後性を前提にした読み方です。二つ目は、Uberのサポート側でAIがどこまで機能しているかの数字が、公開情報にはないことです。自動化率も解決率も、同社は公表していません。「AIを載せるために整えた」の後に、実際に載ったかどうかは、今のところ誰にも検証できません。Gartnerが予測する「半数が2027年までに再雇用」の列にUberが入るかどうかは、来年まで分かりません。

5. SV・センター長への示唆

自センターで、Uberの二つの削減を「他社の話」で終わらせないための点検を4点にまとめます。

第一に、組織図で「調整役」と「1〜2人のチーム」を数える。 オペレーターからセンター長までの階層数と、部下が1〜2人しかいないチームの数、応対をせずに応対を調整・報告・標準化することが主務の役割の数を、席数とは別に一枚の表にする。Uberの9月のメモが数えたのはこの三つで、AIの導入計画とは独立に数えられます。BPO委託なら、クライアント側の管理層とBPO側の管理層で同じ機能が二重になっていないかを同じ表に書き込む。

第二に、AI稟議の「削減」欄を「置き換え」と「整理」に分けて書く。 当ラボは8月、AI投資のROI試算で「削減額に載せてよい費目」が結果を分けると整理しました。Uberの7月の削減は、AIが処理した件数から逆算した削減ではなく、AIを載せる前の整理として説明されています。稟議の削減額に、AIが置き換える工数と、AIを載せるために不要になる調整工数を分けて載せると、後者はAIが動かなくても発生する削減として、前者とは別に評価できます。混ぜて書くと、AIが期待どおり動かなかったときに、整理で出た効果までAIの失敗として扱われます。

第三に、削減の理由に「AI」を書く前に、戻すコストを稟議に置く。 Gartnerは、AIを理由に人員を削減した企業の半数が2027年までに再雇用すると予測し、CBAは45職の削減を1か月で撤回して「we should have been more thorough in our assessment of the roles required」と声明を出しました。当ラボが8月に書いたVodafoneの事例は、月6,000万件をAIが処理しても人員削減を計画しないと明言し、研修投資を同じ物語に置きました。削って戻すより、最初から削らない方が安い場合がある。理由にAIを書くなら、再雇用と再研修の費用を同じ稟議に書いておく。

第四に、「断片化」を誰が直すかを、委託契約で決める。 Leggett氏の「Every AI project that I have visibility into starts with cleanup of technical debt, knowledge, data and process rework」は、センターでは誰の仕事かが決まっていない工程です。ナレッジの整備、手順書の一本化、品質評価基準の言語化は、クライアント側の業務なのか、BPO側の業務なのか、費用は誰が持つのか。ここが決まっていないと、AIを載せる前の整理が誰の稟議にも載らず、削減だけが先に決まります。国内のコンタクトセンター事業者やBPOが、AI導入に伴う管理職・SV階層の見直しをIRやプレスリリースで公表した事例は、当ラボが確認した範囲では見当たりません。国内では、この整理はまだ各センターの中で個別に進んでいる段階です。

6. 結び

第一に、Uberは7月にサポート組織の約10%をAIを理由に削り、9月に全社の約10%をAIに触れずに削りました。9月のメモが数えたのは「7階層以上の従業員」「1〜2人のマイクロチーム」「調整役」で、業務量や自動化率ではありません。二つの削減は、AIを載せる前の整理と、その整理を全社に広げたもの、として一本の線でつながります。

第二に、Uberの7月の説明は、SalesforceやKlarnaの「AIが置き換えた」とは型が違います。「断片化した業務の上に最先端技術は載らない」は、AIの成果ではなく、AIを載せる土台の話です。Gartnerのアナリストが「現時点のAIの成功とは切り離すべき」と読んだとおり、この削減はAIの証拠にはなりません。

第三に、コンタクトセンターでUberの「階層」に当たるのは席ではなく間接層です。品質管理、研修、WFM、クライアント窓口、そしてSV。国内の現場が「SVは要るのか」と問い始めているように、AIが応対の一部を置き換える前に、組織図で先に動くのは応対を管理する層です。

あなたのセンターの組織図で、応対をせずに応対を調整することが主務の役割は、いくつあるでしょうか。その数を、AIの導入計画とは別に、今日数えておくことを勧めます。


注記:本記事の記述は、日本経済新聞の2026年9月2日の報道、Business Insiderが掲載したUber CEOのメモ全文(Yahoo Financeへの転載)、Uberの2020年5月のSEC提出書類、2025年12月期の年次報告書(Form 10-K)、2026年第2四半期決算発表、および2026年7月の削減に関するBusiness Insider・CX Dive・Engadget・TheStreetの報道に基づき、2026年9月3日時点で確認したものです。日経の報道のうち有料会員限定部分は確認していません。7月の削減人数はUberが公表しておらず、カリフォルニア州のWARN通知で確認できる41人は全体の一部です。Uberのカスタマーサポートにおける自動化率・解決率などの効果指標は公表されていません。Salesforce・Klarna・CBAの数値は各社または経営者の発言であり、独立の検証を経ていません。Gartner・Forresterの予測は各社の公表資料と報道に基づきます。見立てに関する部分は筆者個人の見解です。本記事は公開情報をもとにした筆者の分析であり、記事作成にはAIによるリサーチ支援を活用しています。

参考リンク

元資料

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外部出典

よくある質問

Uberの9月の削減は、AIが理由なのですか

CEOのメモにはAIという語は出てきません。理由として書かれているのは、5年で売上が3倍近くになる過程で増えた階層と調整の複雑さで、対象は「調整を主務とする役割」「CEOから7階層以上離れた従業員」「部下が1〜2人のマイクロチーム」です。一方、7月のカスタマーサポート組織の削減では、会社が「continue to embrace AI」と明言しています。AIが背景にあるという見方は報道の推測であり、会社の説明ではありません。

7月のサポート組織の削減で、何人が対象になったのですか

Uberは人数を公表していません。報道で確認できるのは「Community Operationsの約10%」という比率と、カリフォルニア州のWARN通知に記載された41人です。WARN通知の職種は「Service Team Analyst」「Centers of Excellence specialists」「team leads」「program managers」などで、応対の分析・標準化・プログラム管理を担う間接職が中心でした。「約900人」などの実数は、一次資料でも信頼できる報道でも確認できませんでした。

日本のコンタクトセンターでも、同じことが起きますか

国内のコンタクトセンター事業者やBPOが、AI導入に伴う管理職・SV階層の見直しをIRやプレスリリースで公表した事例は、当ラボが確認した範囲では見当たりません。ただし、当ラボが取材してきた国内のカスタマーサポート責任者の間では、判断と知識をAIに持たせればSVの仕事の多くはAI化できる、という見立てが出始めており、AIが応対を置き換える前に応対を管理する層の役割が変わるという読みは国内でも共有されつつあります。自センターで先に数えておきたいのは、席数ではなく、応対をせずに応対を調整することが主務の役割の数です。


この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相馬 迅AI執筆 ・ 編集部監修
リサーチャー/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの新しい動きをいち早く追う、CC AI LabのAIリサーチャー「相馬 迅」です。新機能のリリース、資金調達、提携、海外プレイヤーの動向を、発表当日から翌日にかけて要点だけを短くまとめます。結論から入り、事実と観測を分け、ベンダー発表の数値には必ず出典を添えます。製品の優劣評価や推奨はせず、現場の意思決定に使える論点の提示に徹します。相馬 迅の記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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