【AI導入98%、完遂できているのは15%】“答えるAI”から“完遂するAI”へ/8月のコンタクトセンター×AIニュース振り返り/Talkdesk調査・OKI・テックタッチ×ロート製薬・Cresta×BPO提携

※本記事は、CC AI Labの月次ニュース振り返り動画をもとに、内容を書き起こして構成したものです。相原ことはは、CC AI LabのAIアナリスト(AI音声)です。 動画本編はこちらから
会員登録して視聴コンタクトセンター×AIのニュースは、毎日どこかで何かが発表されている。CC AI Labでは日次リサーチと記事でそれを追いかけているが、1か月分をまとめて眺めると、個別のニュースだけでは見えない「流れ」が浮かび上がる。今回から、編集長の千葉とAIアナリストの相原ことはが、その月の主要ニュースを一次出典ベースで振り返る月次シリーズを始めた。
初回となる8月の結論を先に言えば、主役が交代した月だった。「AIをどれだけ賢くするか」ではなく、「どう運用して人に渡すか」。象徴するのが、Talkdeskの調査が示した数字である。組織の98%が顧客対応のどこかにAIを導入している。しかし、部門横断のオーケストレーションまで含めて用件をエンドツーエンドで解決できているのは、15%にとどまる。
8月の総括。「答えるAI」から「完遂するAI」へ
ことは: 8月の流れを、ニュースの出所と一緒に整理してお話ししますね。8月は、AIをどれだけ賢くするかより、どう運用して人に渡すかが主役になった印象です。具体的には、8月21日の編集部ニュースで出たMetrigyの調査で、顧客がAI応対を受け入れる傾向が広がってきた点がポイントでした。同じ日に報道ベースで出たOKIの「CTstage AIコンシェルジュ」は、不満を検知して有人対応に切り替える設計が象徴的で、統合と分担の話に流れが寄ってきています。ざっくり言うと、今は「本番で回る設計」へのシフトですね。
(編集部注)Metrigy「AI Consumer Experience Index」は米国の消費者1,000人を追跡する指数で、2026年第2四半期は第1四半期の基準値100から104.6へ上昇。サブ指数のうちAI応対への満足度は、全指標で最大となる11.8%の改善を示した。
(編集部注)OKI「CTstage AIコンシェルジュ」は2026年8月21日に日本経済新聞が報道。顧客の不満をAIが検知すると有人対応に切り替える設計で、2027年1月の提供が予定されている。
千葉: ありがとうございます。日本国内でも徐々に、回答をするだけではなく、お客様のお問い合わせに対して裏側の処理だったり、必要な対応を実行する事例も出始めていると思いますが、この部分はやはり海外の方が先行事例が多いのかなと思います。具体的に8月に公開された事例、何かありましたかね。
ことは: そうなんですよ。8月は実行に寄った話が増えましたが、出典ベースで見ると、海外はTalkdeskの調査で、導入はかなり進んでいる一方で、エンドツーエンドで解決できているのは15%にとどまるという自己申告の結果が、8月31日の記事で紹介されています。国内は、日次リサーチで8月3日に取り上げたテックタッチの「AI Central Voice」をロート製薬に入れた例のように、会話の後処理、いわゆるACWの効率化から始める支援型が中心です。数値の効果は発表時点では出ていないので、今は実測待ちですね。全体としては、海外の方がユースケースは広いですが、国内は統制と実務に寄せた入り方が目立つ、という構造で見ると理解しやすいと思います。
Talkdesk調査を読む。導入98%、完遂できているのは15%
千葉: 海外のTalkdeskの調査は、実際どういうものなんですか? もうちょっと詳しく教えてもらえますか。
ことは: はい。8月31日の記事で紹介しているのは、Talkdeskの「The State of Agentic Automation in CX」という調査です。同社の自己申告のデータですが、組織の98%がAIを顧客対応のどこかに入れている一方で、部門横断のオーケストレーションまで含めて用件をエンドツーエンドで解決できているのは15%にとどまる、という結果です。
Talkdesk「The State of Agentic Automation in CX」 | 数値 |
|---|---|
AIを顧客対応のどこかに導入している組織 | 98% |
部門横断のオーケストレーションまで含めて用件をエンドツーエンドで解決できている組織 | 15% |
ことは: ここが面白いポイントで、技術が賢いかどうかよりも、権限の設計や巻き戻し、監査ログといった「統制の設計」が実行の範囲を決めている、という示唆なんですね。業界全体が「答える」だけでなく「完遂する」方向に進めながら、どこまで任せるかの線引きが課題になっている、という整理です。
どこまで任せるか。線引きの「3つの型」
千葉: この「どこまで任せるか」については、企業の考え方や、カスタマーサポートの窓口の特性・種別によって変わってくる部分なのかなと思いますが、今世の中に出ているユースケースとしては、どこまでをAIに任せて、どこからを任せないのかという線引きは、どのような形で皆さん決めているんでしょうか。
ことは: 線引きは、まず「実行した結果を人が取り戻せるか」で決める企業が多いです。Talkdeskの調査で出ていた、オーケストレーションが効いているかという話がまさにそれで、権限の範囲や巻き戻し、監査ログの設計が先に来ます。次に、感情やリスクが高い窓口は人を前提に、AIは支援にとどめるパターンです。例えばOKIのCTstage AIコンシェルジュは、不満を検知したら有人に切り替える設計が象徴的です。最後に、国内では後処理や記録、タグ付けのような、地味だけど重い作業から任せるケースが多いです。完遂系の自動化は、統制の設計が固まってから段階的に広げるのが今の主流ですね。
線引きの型 | 内容 |
|---|---|
①統制で決める | 実行した結果を人が取り戻せるか。権限の範囲・巻き戻し・監査ログの設計が先に来る |
②窓口の特性で決める | 感情やリスクが高い窓口は人を前提に、AIは支援にとどめる(例:OKIの不満検知→有人切替) |
③作業の重さで決める | 後処理・記録・タグ付けのような、地味だが負荷の高い作業から任せる |
千葉: やはり顧客対応のリスクが低いところ、つまり後処理の自動化や効率化もそうですし、通話の要約記録もそうですし、あとはVOC(顧客の声)の分析であるとか。直接的なお客様応対にAIをそもそも使うということが、まだまだ広がっていない、十分ではないなという印象ですし、その先になる、お問い合わせから裏側の処理までを自動化するのは、さらにもう一歩二歩先だなという印象がありますね。
国内の入り方。テックタッチ×ロート製薬、ACWから
ことは: 今の国内の主流は、テックタッチがロート製薬でやっているようなACW、つまり後処理や記録の自動化から入って、リスクの低いところで確実に効果を出す、という形ですよね。
千葉: テックタッチさんの事例、私あまり詳細を把握できていないんですが、具体的にどういう事例なんでしょうか。どういう発表内容ですか。
ことは: これは編集部の日次リサーチで8月3日に取り上げた内容で、発表ベースの概要になります。テックタッチの「AI Central Voice」をロート製薬のお客様相談室に導入して、通話内容をAIが自動で要約してタグ付けすることで、後処理、いわゆるACWを効率化する狙いです。完全自動で全部任せるのではなく、あくまでオペレーターを支援する形でコールログを構造化して、VOC、つまり顧客の声を分析しやすくするデータ基盤を整えるのがポイントです。効果の数値はその時点では出ていないので、そこは今後の実測待ちという前提で見ておくのが安全です。
(編集部注)テックタッチ「AI Central Voice」のロート製薬「お客様相談室」への導入は、PR TIMESのプレスリリースで発表された。
千葉: テックタッチさんはこれまで、カスタマーサクセス分野でのツールというイメージがありましたけれども、今回このコールセンター向けのソリューション、プロダクトを出していらっしゃるのは、どういう背景からなるものなんでしょうか。公式の発表でその辺は触れられていますかね。
ことは: 発表ベースで見える範囲だと、テックタッチさんが「なぜコールセンターなのか」という戦略を長く語っているわけではなくて、ロート製薬のお客様相談室のような重要な接点で、後処理の効率化と品質の標準化に役立つという、ユースケースのフィット感が大きいです。通話内容を自動で要約してタグ付けし、VOCを構造化して分析できるようにするというのが中心ですね。背景としては、海外のObserve.AIやCrestaのように、会話後の分析やQA(品質評価)を自動化する流れと同じ方向性にあります。ただ国内では、まず後処理の記録やタグ付けといった、地味だけど負荷の高い作業から入るのが実務的、という整理がされています。
海外プレイヤーの発展形。Cresta×Firstsource、AIとBPOが一体で回す
千葉: 海外のObserve.AIやCrestaのことを、私もあまりよくわかっていないので掘り下げたいんですけど、それぞれどういったサービスで、今どれぐらいの市場、企業規模、売り上げがあるのか。こういったところから日本国内での市場性や成長性が予測できるのかなと思いますが、Observe.AI、Cresta、この辺り詳しく教えてもらえますか。
ことは: いい問いです。ただ、売り上げや企業規模の具体的な数字は、私の手元の8月の発表ベースの情報には出ていません。なので、そこは推測で埋めない方が安全です。わかる範囲だと、Observe.AIとCrestaは、どちらも通話の内容を分析したり、QA、つまり品質評価の自動化や改善提案などを行う、コンタクトセンター向けのAIプラットフォームとして語られることが多いです。Crestaについては、8月11日にBPOのFirstsourceと戦略提携を発表していて、エンタープライズ向けに導入から運用、成果測定まで一体で提供すると訴求しているのがポイントです。AIを入れるだけでは成果が出ないので、実装と運用を抱えに行く動きですね。
(編集部注)CrestaとBPO大手Firstsourceの戦略提携は、2026年8月11日にPR Newswireで発表された。
千葉: これ、ソリューションとしては、会話データを分析してタグ付けをして、データを整えて示唆を出すというところなので、分析と可視化のソリューションかなと思います。ただ、おそらくここだけではコンタクトセンターの何かを変えることは難しいので、多分次のステップとして、直接応対を行う、もしくは処理を自動化していくようなソリューションや機能を出していく。もしくはCrestaのようにBPOサービスと連携をしていく。要は、自前でやるのか外部と連携するのか、という発展性なのかなと思いますが、理解は合ってますでしょうか。
ことは: 理解はかなり合ってます。分析と可視化だけだと現場の行動は変わりにくいので、その先に応対や手続きの自動化、あるいはBPOのような運用とセットで提供する形に伸ばしていく、というのが筋です。CrestaがFirstsourceとやっているように、実装から運用、成果測定までを一体で回す形は、まさにその発展の典型ですね。自前で作るか外部と組むかは企業次第ですが、価値が「入れる」から「回しきる」へ移っている、という構造は共通していると思います。
まず人のチームで完遂できること。AI化はその後
千葉: 基本的には、全てAIで完結できる、完遂できるというのが理想ではありつつも、今の流れを見ると、やはりまずは人のチームでその業務自体を完遂できると。業務プロセスを理解するというところにおそらく着手されていて、業務プロセスやフローをきちんと理解した上で、徐々にAI化していったり、システム化・自動化していくステップなのかなと思っていますが、そんな流れに今後もなりそうですかね。
ことは: 今は、人のチームが業務プロセスや例外処理をきちんと理解していることが、AIを広げる前提になっています。そこが整うほど、自動化の範囲を広げやすくなるんですね。
千葉: やはり、いきなりAIベンダーがコンタクトセンター、コールセンターに入っていって、自分たちのソリューションでこういうことができます、じゃあ自動化やっていきましょう、始めました、100%自動化できました、ということはなかなか描きづらいと思うので。ベンダー自身が業務を請け負うBPO的な役割を担って業務理解を高め、FDE的に現場に合わせてソリューションを一部カスタマイズしながら、運用を回していくというのはあり得るのかなと思いました。それが中のリソースでは難しい、そういったノウハウがないというベンダーさんに関しては、先ほどのCrestaの事例のようにBPOベンダーと連携・提携をするという動きは、今後も増えそうだなと思いました。国内もコンタクトセンターのBPO事業をされている企業さんがたくさんいらっしゃると思いますが、統合や合併、連携といった動きは注目していきたいなと思いましたね。
(編集部注)FDE=フォワードデプロイドエンジニア。顧客の現場に入り込み、業務に合わせて実装と運用を伴走するエンジニアの役割を指す。
ことは: そうですね、その読みはかなり現実的です。8月のCrestaとFirstsourceの提携みたいに、AIとBPOが一緒に回す体制を作る動きは、今後の型になりやすいです。国内でもBPOやSIerとの連携、場合によっては統合が増える可能性は高いと思います。FDE的な伴走ができるかどうかが、選定や成功の分かれ目になりやすいですね。
まとめ。8月の結論と、9月の注目ポイント
千葉: ありがとうございます。ということで、8月1か月間のニュースから、「応対をする」というところから「業務自体を完遂する」という動きに、引き続き話題が集中していることがわかったかなと思っております。CC AI BENCHMARKもそうですけれども、定期的にベンダーさんの動きをチェックしながら、ユーザー企業様の動きも確認しつつ、CC AI Labでは引き続きトレンドのチェックとこのようなまとめをさせてもらえたらなと思っています。興味のある方は、毎日コンテンツを更新していますので、CC AI Labにご登録いただければと思います。毎週月曜日にはニュースレターという形でメール配信も行っていますので、注目のニュースはそこからキャッチアップできます。では、8月の振り返りはこれで以上とさせていただきます。また9月末もしくは10月の頭ぐらいに、同じようなお話ができればと思っていますので、よろしくお願いいたします。相原さんもありがとうございました。
ことは: こちらこそありがとうございました。8月は、応対から、実行して完遂する方向へのシフトがはっきり見えた月でした。9月も、統制や運用の伴走、それからBPOとの組み合わせがどう進むかに注目ですね。それでは、次の回も楽しみにしています。
今回の振り返りを貫いていたのは、「実行の範囲を決めるのは技術の賢さではなく、統制の設計だ」という一点だった。Talkdeskの98%と15%のギャップは、モデルの性能差では説明がつかない。権限の範囲、巻き戻し、監査ログ。実行した結果を人が取り戻せる設計があるかどうかが、AIに任せられる範囲を決めている。どこまで任せるかの線引きが「統制」「窓口の特性」「作業の重さ」の3つの型で語られたのは、この構造の裏返しでもある。
国内の現在地は、その線引きのいちばん手前にある。テックタッチ×ロート製薬のように、後処理・記録・タグ付けという地味だが負荷の高い作業から入り、リスクの低いところで確実に効果を出す。応対そのものへのAIはこれから、というのが千葉の実感だった。一方で海外は、分析・可視化の次のステップとして「運用ごと抱えに行く」動きが出ている。Cresta×Firstsourceの提携が示したのは、AIを「入れる」ことではなく「回しきる」ことに価値が移った、という構造である。
そうなると、次に効いてくるのは業務理解だ。人のチームが業務プロセスと例外処理を理解していることがAIを広げる前提であり、ベンダー側にはBPO的に業務を抱え、FDE的に現場へ伴走する能力が問われる。国内のBPO事業者の連携・統合の動きも含めて、9月は「統制」と「運用の伴走」がどう進むかを見ていきたい。
動画本編はこちらから
会員登録して視聴CC AI Labの編集チームです。コンタクトセンターとカスタマーサクセスのAI活用について、特定ベンダーに依存しない立場で一次情報・検証記事・ベンチマークを制作します。AI著者(相馬 迅・相原 ことは)が執筆した記事の監修も担当し、公開前に事実と中立性を確認します。
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