【デモコン大阪2026レポート】展示会で見えたAI導入のフェーズ移行

2026年5月、大阪のデモコンでわかったこと
2026年5月27〜28日、大阪でコールセンター・CRMコンファレンス(通称:デモコン)が開催された。東京・池袋での開催が毎年11月、大阪は5月に実施される、コンタクトセンター業界最大規模の展示会だ。
今回、大阪会場に初めて足を運んだ。半日ほどの滞在で会場をひと通り巡り、複数のベンダーと直接話をした。
今年の出展社数は76社。新顔の企業も混じりながら、ここ数年の常連企業も揃った顔ぶれだった。
9割のセッションが「AI」を語っていた
セッションプログラムを見渡せば、明らかなことがひとつあった。ほぼすべてのセッションがAIをテーマとして掲げていた。 例外は、吉本興業の芸人が登壇した「笑いの力を生かす」というセッションくらいだ。
内容の質は3年前とは明らかに変わっていた。
2023〜2024年頃の展示会では、「生成AIとは何か」「RAG(検索拡張生成)という技術がある」といった技術の解説や、とにかく導入してみた第一歩的な話が目立っていた。今回目立ったのは、そういった技術紹介ではない。
導入後に結果が出なかった原因と解決策
PoC(概念実証)で止まってしまった案件を本番に進める方法
実際に成果を出したユーザー企業が登壇する導入事例
テーマが「技術の説明」から「運用・成果・設計」に移っている。AI導入はもはや「やるかやらないか」の問いではなく、「どう成果に結びつけるか」の問いになったというのが、会場全体から伝わってくるメッセージだった。
昨年の池袋展示会では「音声AI」というキーワードが目立ったが、今回の大阪ではアフターコール業務の削減、オペレーター支援、通話データの分析活用といったテーマも増えた。AI活用の対象が、顧客対応の自動化から、業務プロセス全体への最適化へと広がっている。
注目企業①:IVRy / IVRからコールセンターへの本格参入
今回の展示会で存在感を放っていた企業の一つがIVRy(アイブリー)だ。
もともとIVRyは、クリニックや店舗向けにIVR(自動音声応答)を提供してきた企業だ。「IVRの民主化」と言える形で、これまでコールセンター専用とされていた技術を中小規模の店舗に持ち込んだ先駆者的存在だ。
その同社が近年、コールセンター向けのプロモーションを強化している。今回の大阪でもセミナー登壇や目立つブース展示を行い、業界内での存在感を示していた。
さらに展示会の直前には、メガバンク3行を引受先とした45億円の資金調達を発表。累計調達額は151.1億円に達した。この規模の資金調達は、コンタクトセンター向けの音声AI領域における本格参入の意思表示だと受け取ってよいだろう。今後、コールセンター業界でIVRyの名前を目にする機会はさらに増えていくはずだ。
注目企業②:Algoage / 「まず内側で使う」という設計思想
もう一つ注目したのが、DMMグループのAI企業Algoageだ。展示会の約1週間前に新プロダクト「手話サイト」をリリースしたばかりで、今回が実質的なお披露目の場となっていた。
ブースで代表の奥山氏から聞いた話で印象に残ったのは、プロダクトの展開思想だ。
まず、オペレーターが使う支援ツールとしてAIを現場に入れる。そこでナレッジとデータを蓄積する。その積み上げを土台に、次のステップとして顧客対応の自動化に展開していくという段階的な設計だ。
この「まず内側で使う」という考え方は、会場全体でも共通するトーンだった。リスクを抑えながらデータを育て、確かな成果を出してから自動化に踏み出す。無謀な一足飛びではなく、地に足のついた積み上げを重視する方向性が、業界全体に浸透してきている。
カラクリのデモが示した次のステージ
カラクリ株式会社のブースでは、ボイスエージェントに関するデモンストレーションが行われていた。
もともとチャットボットベンダーとして知られてきた同社が、今回満を持してボイス領域での展開を発表。しかし注目すべきはそこではない。
デモで見せていたのは、音声対話と基幹システムの連携だ。顧客から「返品したい」という電話が入ると、音声AIが会話を通じてリクエストを受け取り、裏側で発注管理システムを操作して実際に返品処理を完了させるというフローだ。
AIが「聞く」だけでなく、「処理する」ところまで自律的に実行している。これはコンタクトセンターにとって、AI活用の本質的な変化を示している。
フロントの会話処理(音声認識・応答生成)と、バックエンドの業務システム操作を組み合わせることで、問い合わせに対するエンドツーエンドの自動対応が実現する。人間が「電話を受けて、システムを操作する」という一連の業務を、AIが代替する絵が現実に近づいている。
コンタクトセンターAIはフェーズ2へ
会場を一巡して感じたことを一言で表すなら、「フェーズ2への移行」だ。
AIというものを知り、試し、使ってみる。技術を理解し、とにかくPoC(概念実証)を走らせてきたのがフェーズ1だった。
AIを使うことは前提として、どのプロセスに使えば効果が最大化されるか。どう設計すれば現場に定着するか。失敗した案件を立て直すにはどうするか。これらの問いに答えを出していくのがフェーズ2だ。
コンタクトセンター業界の展示会が、技術説明ではなく「成果」を軸に動き始めたことは、その移行を象徴している。
音声AI領域では、まだ決定的なプレイヤーが現れていない。従来型IVRには王者がいるが、AIボイスエージェントの領域はまだ混戦だ。技術が実務レベルに到達しつつある今、各ベンダーが切磋琢磨しながらプロダクトを磨き、業界のスタンダードが形成されていく段階に入っている。
次の池袋展示会は2026年11月。今回の大阪で感じたトレンドが、どう進化しているかを確認するのが楽しみだ。
まとめ
デモコン大阪2026に76社が出展。セッションの9割がAIテーマ
内容の重心が「技術説明」から「成果・運用・設計」へ移行。業界全体がフェーズ2に入った
IVRyが45億円調達しコールセンター向けを本格強化。音声AI領域の競争が激化
Algoageの「まず内側で使う」設計思想が、業界のリスク管理型AI展開の潮流を象徴
カラクリのデモが示したのは、音声対話×基幹システム連携による業務の完全自動化の現実
AIボイスエージェント領域はまだ覇者不在。今後1〜2年で標準化が進むフェーズへ
本記事は、CC AI Lab編集長・千葉によるPodcastの内容をもとに、オウンドメディア掲載用に再構成・加筆したものです。


