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カスハラ条例と国のカスハラ対策義務化、二重規制をどう読むか ー 都外にセンターを置く企業はどちらに従うのか

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AIに聞く

2025年4月1日、東京都・北海道・群馬県で全国初のカスタマーハラスメント防止条例が同時に施行された。それから1年半、2026年10月1日には改正労働施策総合推進法によるカスハラ対策の全国一律義務化が控える。この間に愛知・栃木・埼玉が条例を制定し、三重県は全国初の罰則付き条例を準備している。コンタクトセンターの本社は都内にあっても、実際の応対拠点は複数県にまたがり、オペレーターの一部は在宅で全国に散らばっている企業は珍しくない。核の問いはこうなる。条例と国の法律が同時に走るとき、拠点をまたぐ企業はどちらの基準に合わせればいいのか。先に立場を言えば、これは単純な「二重規制」ではなく、対象と適用範囲が異なる二層の規律であり、拠点ごとの精査を怠ると一番厳しい基準を見落とす、というのが私の見立てだ。

1. 条例ラッシュとコールセンターが直面する施行日のばらつき

まず現状を数える。東京都カスタマー・ハラスメント防止条例は2024年10月4日に可決・成立し、2025年4月1日、北海道・群馬県の条例と同日に全国で初めて施行された。3道都県が同じ日にスタートを切った形だ。

北海道・群馬に続いて、愛知県が2025年10月1日に施行し全国4番目の都道府県となった。愛知県の条例は罰則を設けず、施行を急ぐことで「カスハラを許さない」という姿勢を早期に示す道を選んでいる。

その後も条例は増え続ける。栃木県は2026年4月1日に条例を施行し、埼玉県は2025年12月19日に条例を制定、2026年7月1日に施行する。施行日は自治体ごとに半年から1年ずつずれており、拠点が複数県にまたがる企業ほど「いつからどこで適用が始まるか」を個別に追いかける必要がある。

三重県はさらに踏み込む。知事の命令に違反した場合に50万円以下の罰金・拘留・科料を科す、全国初の罰則付き条例案を2026年9月議会に提出し、可決すれば2027年4月の施行を目指す。岩手県も条例制定の検討対象として名前が挙がる自治体の一つだが、栃木・埼玉のように条例本文の制定に至ったという情報は本稿執筆時点で確認できず、検討段階にとどまる。

当て馬として国の制度を並べると対称的だ。改正労働施策総合推進法によるカスハラ対策の義務化は2026年10月1日、全事業主が対象で経過措置はない。条例が自治体ごとにバラバラの施行日で増え続けるのに対し、国の法律は全国どこでも同一日に一斉施行される。ただし単純比較には留保がいる。施行日がそろっていないからといって、条例側の規律が国より弱いとは限らない。次章で見る通り、両者はそもそも狙っている対象が違う。

2. なぜ条例と国の法律は「別々の規律」として併存するのか

2. なぜ条例と国の法律は「別々の規律」として併存するのか

条例と国の法律を並べて読むと、設計思想の違いが見えてくる。国の改正労働施策総合推進法は「事業主の雇用管理上の措置義務」だ。義務を負うのは事業主で、方針の明確化・相談体制・事後対応・プライバシー保護という体制整備を求める。違反への制裁は刑事罰ではなく、報告徴求命令・助言・指導・勧告・企業名公表という行政指導の枠組みにとどまる(指針の4本柱の全体像は当媒体が8月14日に整理した)。

条例側は多くが「カスハラ行為そのものの禁止」と「事業者・就業者・顧客等の責務」を定める枠組みで、罰則を設けない努力義務型が主流だ。東京都の条例は「何人もカスハラを行ってはならない」と一律禁止を明記するが罰則は設けていない。例外が三重県で、悪質な迷惑行為を繰り返す客個人に知事が命令を出し、従わなければ刑事罰に相当する制裁を科す設計になっている。つまり国の法律は「事業主」を名宛人にし、条例(特に三重)は「顧客」を名宛人にすることがある。義務の対象がそもそも違うのだから、二重に罰せられる構造というより、上と下から挟み込む別レイヤーの規律が重なっていると捉えるほうが正確だ。

適用範囲の設計も異なる。国の法律は雇用関係に基づき全国一律に適用されるのに対し、条例は属地主義に近い。東京都条例の「事業者」は、都内に本社がなくても都内に支店・事務所があれば対象になり、「就業者」は都内で働く者に加え、都内事業者に雇われて都外でテレワークする者も、業務との合理的関連性があれば含まれる。都道府県境という物理的な線ではなく、事業者の所在と業務の関連性で対象が広がる設計だ。アナロジーで言えば、国の法律は全国どこでも同じ土台の建築基準法、条例は自治体ごとに上乗せされる景観条例に近い。土台の義務はどこでも共通だが、景観条例のある地域に建てるなら追加の手続きが要る。

3. 複数拠点・在宅混在のコールセンターが取るべき4つの型

国の法律の指針を全社共通のベースラインに据えたうえで、条例側の上乗せをどう扱うかで、実務対応は大きく4つの型に分かれる。

型1: 本社所在地一本化型。 本社のある都道府県の条例だけを見て、他拠点は国の法律のみ順守すればよいと考える型。もっとも危うい型でもある。東京都条例のように、就業者の定義が本社所在地に縛られず都外テレワーカーまで及ぶ条例がある以上、「うちの拠点は都外だから対象外」という判断は裏取りなしにはできない。

型2: 拠点別条例棚卸し型。 全拠点(直営・BPO委託先・在宅オペレーターの居住地)の所在都道府県について、条例の有無・施行日・罰則の有無・適用範囲の要件を一覧化する。国の指針をベースに、条例のある拠点にだけ追加要件(相談窓口の周知文言、指針への言及など)を上乗せする二層構成にする。

型3: 最も厳しい基準への統一型。 拠点ごとに運用を変える管理コストを避け、条例のうち最も具体的・厳格な水準(罰則を準備する三重県、または適用範囲の解釈が広い東京都)に全社の運用マニュアルを合わせる型。拠点数が多い企業ほど個別対応のコストが跳ね上がるため、規模が大きい企業ほど選びやすい。

型4: 継続監視型。 栃木・埼玉のように施行前の条例が続けて動いており、三重が可決されれば罰則付きの前例が生まれる。拠点新設・BPO委託先の変更・在宅オペレーターの採用地域拡大のたびに、条例マップを更新するプロセスをコンプライアンス業務にあらかじめ組み込んでおく型だ。

4. ここからは私の見立てとして

ここからは私の見立てとして書く。複数拠点企業は「国の法律さえ守れば安全」と考えがちだが、実務上は条例のある拠点のほうが具体的な要求(相談窓口の周知方法、指針への言及)を課してくることが多く、条例準拠が事実上のデフォルトの最低基準に格上げされていくと見ている。国の法律の制裁が行政指導どまりであるのに対し、三重県の条例は可決されれば顧客個人に刑事罰相当の制裁を科す。強制力の実感値としては、条例側が先に重くなる可能性がある。

自己反証もしておく。とはいえ、現時点で罰則付き条例は三重県が可決した場合に限られ、他の条例はいずれも努力義務・罰則なしにとどまる。企業側への実務的な圧力という意味では、社名公表という社会的制裁を伴う国の法律のほうが今なお強く働く場面もある。条例を過大評価し、国の指針対応を後回しにするのは本末転倒だ。

条件を付けるなら、この見立てが成立するのは拠点が3道県以上にまたがり、かつ在宅オペレーターを一定数抱える企業に限られる。単一拠点で条例のある都道府県内に完結している企業は、条例と国の法律の重複をそれほど恐れる必要はなく、両方の要求を一枚のマニュアルに落とし込めば足りる。

まとめ

第一に、カスハラを規律する条例は2025年4月の東京都・北海道・群馬県を皮切りに増え続け、三重県は全国初の罰則付き条例を準備している一方、国の改正労働施策総合推進法は2026年10月1日に全事業主を対象に一律施行される。第二に、両者は同じ現象を別の名宛人(条例は主に顧客個人、国の法律は事業主)・別の適用範囲(条例は属地寄り、国の法律は雇用関係ベースで全国一律)で規律しており、単純な二重規制ではなく重ね合わせの規律と読むのが正確だ。第三に、複数拠点・在宅混在の企業は、国の指針をベースラインに据えたうえで拠点ごとの条例を棚卸しし、最も厳しい基準に運用を合わせる型が現実的な出発点になる。あなたのセンターは、拠点ごとの条例の有無と施行日を、いま一覧で説明できる状態にあるだろうか。

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注記: 本記事の制度情報・施行日・罰則の有無は2026年8月21日時点で各出典URLにて確認した。条例の適用範囲・在宅勤務者への適用解釈は今後のガイドライン改定・Q&Aで変わりうる可能性がある。三重県の罰則付き条例は本稿執筆時点で県議会提出前の方針段階であり、可決時期・条文の確定内容は変わりうる。岩手県の条例検討状況は報道による整理に基づくもので、公式の条例案は本稿執筆時点で確認できていない。見解にわたる部分は筆者個人のものであり、個別の法的判断は社会保険労務士・弁護士等の専門家に確認されたい。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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