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厚労省指針の4本柱はコンタクトセンターで何に化けるのか ー 方針・相談体制・事後対応・抑止措置の実装

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2026年2月26日、厚生労働省はカスタマーハラスメント対策を事業主の義務とする指針を令和8年厚生労働省告示第51号として告示した。改正労働施策総合推進法に基づく雇用管理上の措置義務であり、施行は2026年10月1日、従業員が1人でもいれば対象になる。指針の正式名称は「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」で、パワハラ・セクハラと同じ措置義務の枠組みに、カスハラ固有の抑止措置を重ねた構造になっている。

ここで立てたい問いはひとつだ。方針の明確化・相談体制の整備・事後の迅速な対応・抑止措置という抽象的な4本柱は、電話の最前線であるコンタクトセンター(コールセンター)で具体的に何に化けるのか。私の立場を先に言えば、既存のハラスメント体制は土台として流用できるが、「行為者が社外の顧客である」という一点が、流用できる部分とできない部分をはっきり分ける、である。

第1章 半数が被害、それでもコールセンターの体制は追いついていない

まず規模を確認する。UAゼンセンの2024年調査では、直近2年以内に迷惑行為の被害にあった人が46.8%にのぼった。前回調査より9.9ポイント低下したとはいえ、なお対面・非対面を問わずサービス従事者の半数近くが被害を受けている計算になる。当て馬として流通・サービス全体を見ると、流通系従業員の約5割が被害という別の切り口の数字もあり、業種によって濃淡はあるが「例外的な事件」ではなく「日常の一部」であることは動かない。

コンタクトセンターはこの構造の中でも逃げ場が少ない。相手の顔が見えず、電話口では応対を途中で切りにくく、暴言がそのまま耳に流れ込む。結果として離職圧力が高く、離職率3割以上と答えたセンターが約3割にのぼるとの調査(コールセンター白書2020)もある。カスハラは労務リスクであると同時に、採用難のこの時代に人が辞める直接の引き金でもある。措置義務化は、この現実に法律が追いついたと読むのが素直だろう。

第2章 なぜ既存のハラスメント体制がそのまま使えないのか

指針がパワハラ・セクハラと共通の枠組みを採るなら、既存の規程を流用すればいいように見える。だが、ここに落とし穴がある。社内ハラスメントとカスハラでは、行為者との関係が根本的に違うからだ。

アナロジーで言えば、社内ハラスメント対策は「同じ屋根の下の統制」である。行為者は自社の従業員だから、人事権・懲戒・配置転換という手段が使える。対してカスハラは「門の外からの攻撃」だ。行為者は顧客であり、人事権は及ばず、こちらが取れるのは応対の打ち切り・取引の停止・警察への通報といった外向きの手段に限られる。カスハラの中心が暴言・怒声による精神的攻撃である点も、証拠が残りにくい電話ではとりわけ扱いにくい。だからこそ、相談体制や事後対応は既存の器を流用できても、抑止措置の中身はカスハラ用に作り直す必要がある。

第3章 4本柱をトークスクリプト・エスカレーション・記録・面談に翻訳する

では、事業主が講ずべき措置を、センター現場の道具に翻訳してみる。指針は方針明確化・相談体制・事後対応・抑止措置の4本柱に、併せて講ずべき措置としてプライバシー保護・不利益取扱い禁止を加える構成だ。

方針の明確化・周知 → トークスクリプトの線引き。「どこからがカスハラか」を組織として定義し、オペレーターが判断に迷わないよう、通話の線引き基準をスクリプトに落とす。「大声・暴言が続く場合はこの定型文で通話を終える」といった一文が、現場にとっての方針の実体になる。

相談体制の整備 → エスカレーション基準。相談窓口の設置は義務だが、電話現場では「後から相談する窓口」だけでは足りない。通話中にSVへ即時エスカレーションできる基準(暴言・脅迫・長時間の拘束など)を明文化し、オペレーターが自分の判断で線を引ける状態にすることが実装になる。

事後の迅速・適切な対応 → 記録の残し方とオペレーター面談。指針は事実確認と被害者への配慮を求める。センターでは通話録音と応対メモが証拠になるため、カスハラ事案を後から追跡できる記録項目(発生時刻・内容・対応者・エスカレーション有無)を決めておく。加えて、被害を受けたオペレーターへの面談やメンタルケアを、任意ではなく手順として組み込む。

抑止のための措置 → 対応停止と外部連携。悪質な相手には、応対の打ち切り、以後の取引謝絶、必要に応じた警察・弁護士への連携を、現場の裁量ではなく会社の判断として発動できる経路を用意する。ここが社内ハラスメントから最も流用しにくい部分だ。電話では行為の証拠が残りにくいため、抑止を実際に発動できるかは事後対応で作った記録の質に依存する。つまり4本柱は独立して並んでいるのではなく、記録が抑止を支え、方針の線引きが相談と事後対応の判断基準になる、という形で連動している。

そして併せて講ずべき措置として、相談したオペレーターのプライバシー保護と、相談を理由とする不利益取扱いの禁止を就業規則等に明記する。この2点はパワハラ・セクハラ規程からほぼそのまま持ってこられる、数少ない流用可能な柱である。

第4章 ここからは私の見立てとして

ここからは私の見立てとして書く。この4本柱の翻訳作業に、AIは補助線を引ける余地がある。通話のリアルタイム解析で暴言・脅迫の兆候を検知してSVにアラートを上げる、通話後に自動で応対記録を構造化して事後対応の抜けを減らす、といった使い方だ。記録と検知という、人手だと抜けやすい部分こそAIが得意な領域と重なる。

ただし自己反証もしておく。AIによる暴言検知を「抑止措置を講じた証拠」と勘違いすると危うい。検知はあくまで入口であり、指針が求めるのは検知の後の人間の対応、すなわち通話を打ち切る権限、被害者を守る面談、悪質な相手を謝絶する会社の意思決定である。ツールを入れただけでは措置義務を果たしたことにならない。

この見立てが成立する条件は2つある。第一に、AIの役割を「検知と記録の自動化」に限定し、判断と対応の責任を人間の側に残すこと。第二に、検知基準を第1章で作った方針の線引きと一致させ、現場のスクリプトと同じ定義で回すことだ。定義がツールと運用でずれると、アラートは鳴るのに誰も動かない状態が生まれる。

まとめ

第一に、カスハラ対策は2026年10月1日から事業主の措置義務になり、コンタクトセンターは被害の密度も離職リスクも高い最前線として、待ったなしの対象である。第二に、4本柱のうち相談体制・事後対応・プライバシー保護は既存のハラスメント体制を流用できるが、抑止措置だけは「行為者が社外の顧客」という違いゆえに作り直しが要る。第三に、AIは検知と記録で補助できても、打ち切り・面談・謝絶という人間の判断を代替はしない。あなたのセンターの4本柱は、いま抽象的な文言のままか、それともスクリプトとエスカレーション基準にまで落ちているだろうか。

注記

本記事は2026年8月14日時点の公開情報に基づく。指針の正式名称・告示番号・日付は一次情報で照合したが、施行に向けた運用細則は今後の通達等で変わりうる。法的な判断は社会保険労務士・弁護士等の専門家に確認されたい。見立ての部分は筆者個人の見解である。

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出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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