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一度は月4,000件まで落ちたチャットを入れ替えて、セブン銀行のコンタクトセンターは電話を3割弱にした

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【FC要修正】セブン銀行はなぜコールセンターの電話を半分にできたのか ー ノンボイス比率49.9%から71.3%へ、「口座とATM」という用件構造とチャネルシフトの条件

2021年3月、セブン銀行はCRMの更改にあわせて、チャットの仕組みを一つにまとめました。ところが、それまで月1万〜1.2万件あったチャットの問い合わせが、更改後は4,000件まで落ち込みます。使い勝手の問題で、お客様がチャットボットでの問い合わせを途中で諦めていたと同社は見ています(カラクリ 導入事例)。

それから約4年。2025年1月の発表では、問い合わせに占めるチャットなど電話以外の比率は71.3%になり、電話の比率は28.7%まで下がりました(カラクリ 2025年1月15日)。2025年10月からは、土曜日の日本語の一般の問い合わせを有人チャットだけで受けています(セブン銀行 2025年9月1日)。

使われなくなったチャットを、どうやって電話の代わりが務まる窓口にしたのか。順に追います。

どんなコールセンターなのか

どんなコールセンターなのか

セブン銀行は全国のATMで知られる銀行ですが、窓口のある店舗は持っていません。バンキング統括部の岩佐樹さんは「実店舗をもたないセブン銀行では、コンタクトセンターがお客さまと直接つながる唯一の場所です」と話しています(セブン銀行 STORY of PURPOSE 2024年10月15日)。

このセンターが受けるのは、口座に関する問い合わせです。口座開設、各種の照会、手続きの方法など。2023年10月時点で月約6万件でした(カラクリ 2023年10月24日)。ATMの使い方で困ったときの案内は、同社サイト上で別の入口に分かれています(セブン銀行 お問合せ)。

もう一つの特徴が言葉です。2013年に海外送金サービスを始めてから外国籍のお客様が増え、いまはチャットを日本語、英語、タガログ語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、インドネシア語、タイ語の9言語で受けています。岩佐さんは「現状どの言語でも多数のお問合せがあり、9言語対応は欠かせないサービスとなっています」と言います。オペレーターの多くはネイティブスピーカーです(セブン銀行 STORY of PURPOSE)。

対面の窓口がなく、用件は口座の手続きと照会が中心で、お客様の言語がばらける。ネット専業の金融機関や、外国籍の利用者が多い通信・送金サービスのセンターなら、近い景色だと思います。

使われなくなったチャットを、入れ替えるまで

2021年3月、チャットを一本化して利用が減る

最初のつまずきは、まとめたことで起きました。CRMの更改でチャットを統一したあと、問い合わせが月1万〜1.2万件から4,000件に減ります。改善を重ねて6,000〜7,000件までは戻しましたが、目標にはまだ遠い数字でした。当時の目標は、全チャネルの75%を電話以外にすることです(カラクリ 導入事例)。

バンキング統括部の田畑秀和さんは、この落ち込みを、問い合わせを諦めたお客様が増えたためと見ていました(セブン銀行 STORY of PURPOSE)。チャットが減っても、用件そのものが消えたわけではありません。

2022年10月、入れ替えを検討し始める

新しいチャットの検討を始めたのは2022年10月、決めたのは2023年4月です(日経クロステック 2023年11月17日)。使い始めて約2年のツールを替える判断でした。

選び方が具体的です。現場のスタッフから要望を集め、優先度の高い40項目に絞り、候補のベンダーにどこまで実現できるかを答えてもらいました。比べた5社の中で、カラクリは40項目のうち37項目に「実現可能」と答えています。既存のSalesforceとつなげにくいものは、最初に候補から外しました(カラクリ 導入事例)。

迷いもありました。業務委託先のオペレーターは旧システムに慣れていて、入れ替えれば教育をやり直すことになります。それでも、お客様の使いやすさを優先して入れ替えを決めています(同上)。コンタクトセンター所長の山田陽子さんは決め手を「自由度のとても高いツールであること」と話しています(カラクリ 2023年10月24日)。

チャットが減っても、電話は減っていなかった

チャットの問い合わせが減る一方で、電話の問い合わせは減っていませんでした。チームは、チャットそのものの使い勝手だけでなく、サイトから問い合わせに進む導線にも原因があると考えます。バンキング統括部の渡邊クニコさんは、電話のお客様について「まずはご自身でサイト内を調べ、それでも解決できない場合に電話という手段を取られている方がほとんどでした」と振り返っています(セブン銀行 STORY of PURPOSE)。

そこで、チャットの切り替えに先立ってサイトを直しました。FAQへの導線を増やし、それでも解決しなければチャットへ進めるよう、チャットボットのアイコンを常に見やすい位置に置く。ページごとに知りたいことが違うので、各ページに合った選択肢を出す。改修のあと、FAQページへのアクセスが増え、チャットの問い合わせも増えました(セブン銀行 STORY of PURPOSE)。

2023年10月、約半年で切り替える

2023年10月24日、チャットボット、有人チャット、Web接客、メール対応支援をKARAKURIシリーズに切り替えました。決定から約半年です(日経クロステック、カラクリ 2023年10月24日)。山田さんは理由を「場所や時間を選ばずご質問いただけるチャット対応を希望されるお客さまが増えたと実感し、チャットサポートの強化に踏み切りました」と話しています(コールセンタージャパン・ドットコム)。

切り替えの翌月、田畑さんは日経クロステックの取材に「現在は電話が6割でそれ以外が4割。今後、この比率を逆転させていきたい」と答えていました(日経クロステック)。

切り替えのあと、チャットの問い合わせは大きく増え、電話は緩やかに減っていきます。チャットを起動してから質問するまでの操作を減らし、よくある質問を選択肢で先に示す。田畑さんは「一つ一つの改善は小さなことなのですが、このちょっとした『不便・負担』を少しでも少なくすることで、お客さまの使い心地はずいぶん変わることを体感しましたね」と話しています(セブン銀行 STORY of PURPOSE)。

切り替えの後も、入口の手入れは続きました。訪れたページに合わせて、チャットボットが「こういうご用件ですか」と先に提案する。メールやDMに載せる問い合わせ先も、チャットボット専用のQRコードにそろえました(カラクリ 導入事例、カラクリ 2025年1月15日)。

時期 出来事
2013年 海外送金サービス開始。対応言語を広げ始める
2021年3月 CRM更改でチャットを統一。月1万〜1.2万件が4,000件に
その後 改善で6,000〜7,000件まで回復。目標は電話以外75%
2022年10月 新しいチャットの検討開始。現場の要望40項目で比較
切り替えに先立ち サイトの導線を改修。FAQへの導線とページごとの選択肢
2023年10月 KARAKURIシリーズに切り替え。9言語の自動判別
2023年11月 「電話が6割でそれ以外が4割。逆転させたい」
2025年1月 電話以外の比率71.3%、電話28.7%と発表
2025年10月 土曜日の一般問い合わせ(日本語)を有人チャットのみに
2026年7月 HDI格付けで「Webサポート」「問合せ窓口」の両部門三つ星

いま何をしているのか

いまの窓口は、サイト、チャットボット、有人チャット、電話の順に、お客様が自分で進んでいく形になっています。

入口はサイトです。FAQで答えが見つからなければ、ページに応じて起動するチャットボットが用件を提案します。チャットボットは有人チャットの入口も兼ねていて、お客様の端末のブラウザの言語設定を見て、その言語を話すオペレーターにつなぎます。お客様が言語を選ぶ操作はいりません。チャットボットから有人チャットへ移るときは、それまでのやり取りを引き継ぐので、同じ質問を繰り返さずに済みます(カラクリ 導入事例、カラクリ 2025年1月15日)。

チャットの顔は「セボン」というキャラクターです。カラクリから「キャラクターがいるほうがお客様が親しみを持って使える」と助言を受けて設け、誕生の際には社内投票も行いました。ぬいぐるみやステッカーを作って配り、SNSでも話題になったそうです(カラクリ 2025年1月15日)。

有人チャットでは、オペレーター1人が同時に2〜3人のお客様に応対しています。KARAKURI assistの回答テンプレートは、日本語と英語が混ざっていたものを言語別に整理しました。使いこなしているオペレーターのやり方を周りに見せる、新入社員は最初からassistを前提に教える、役に立つテンプレートを作った人を表彰する、といった工夫で定着させています(カラクリ 導入事例)。

電話は残しつつ、役割を絞りつつあります。2025年10月4日から、土曜日の日本語の一般問い合わせは有人チャットだけになり、電話の受付は平日の9:00〜18:00になりました。キャッシュカードの紛失・盗難と金融犯罪に関する緊急の問い合わせは、引き続き24時間365日電話で受けています(セブン銀行 2025年9月1日)。急ぎの用件は電話、それ以外はチャットへ。インタビューで語られた「電話対応のチャネルは一部の専用用途として残す」という方針が、営業日の形になって表れた変更です(カラクリ 導入事例)。

いま出ている効果

いま出ている効果

一番わかりやすいのは比率です。KARAKURIへの切り替えから約1年で、問い合わせに占める電話以外の比率は49.9%から71.3%へ、電話の比率は50.1%から28.7%へ動きました(カラクリ 2025年1月15日)。この数字はチャネルごとの構成比です。問い合わせ10件のうち電話が5件だったのが、3件弱になったという意味で、解決率を示す数字ではありません。

この比率が効いてくるのは、次の数字と合わせたときです。有人チャットの1時間あたりの対応件数は、電話の約1.5倍に伸びました。オペレーター1人が2〜3人と同時にやり取りできるからです(カラクリ 導入事例)。電話は1人で1人にしか応対できません。同じ人数でも、問い合わせが電話からチャットに移るほど、センター全体で受けられる量が増えていく計算になります。

そしてこの間、問い合わせ全体は増えています。口座関連の問い合わせは2023年10月時点で月約6万件、2026年7月の発表では月約9万件でした(カラクリ 2023年10月24日、セブン銀行 2026年7月17日)。口座数は2024年3月期に300万口座を超え、前年比10.2%増えています(カラクリ 2025年1月15日)。お客様が増え、問い合わせが増えても、受け止め方を電話以外に寄せてきた。比率の変化は、その結果として読むのが自然です。

外からの評価もついてきました。HDI格付けベンチマーク(銀行業界)のWebサポート部門では2024年までに3年連続で三つ星を取り、2026年は「Webサポート」と「問合せ窓口」の両部門で三つ星でした(セブン銀行 STORY of PURPOSE、セブン銀行 2026年7月17日)。

数字以外の変化を一番うれしそうに語っているのは山田さんです。社内に取り組みが知られるようになり、他部署から「コンタクトセンターでこんなことできない?」と声がかかるようになりました。「オペレーターも誇りを持って業務に取り組めていると感じています」と話しています(カラクリ 2025年1月15日)。

何が効いたのか

ここからは書き手の見立てです。セブン銀行の5年から、ほかのセンターでも使える型を3つ抜き出します。

型1 失敗を、現場の要件表に変える

チャットが4,000件まで落ちたとき、同社は「チャットはうちのお客様に合わない」とは結論づけませんでした。現場から要望を集めて40項目に絞り、それを物差しにして選び直しています。どこが使いにくかったのかを言葉にしておいたから、次の選定が「どのツールが良さそうか」ではなく「どれがこの40項目を満たすか」の比較になりました。失敗の経験が、そのまま次の仕様書になった形です。

型2 チャットの手前で、電話の理由を消す

チャットが減っていた時期にも、電話は減っていませんでした。渡邊さんの言葉どおり、電話をかけてくる人の多くは、先にサイトを調べて答えにたどり着けなかった人です。だからチャットの切り替えに先立って、サイトとFAQの導線を直した。ページごとにボットが用件を提案し、DMのQRコードまでチャットにそろえる。電話を減らす打ち手が、電話の外で打たれているのがこの事例の面白いところです。

型3 人が受けるチャットを、電話より効率のいい窓口にする

電話以外への移行というと、チャットボットで自動化する話になりがちです。セブン銀行は有人チャットに力を入れ、1人で2〜3人を同時に受ける体制を作り、9言語を母語話者で受けています。お客様にとっては母語で、待たずに人と話せる窓口。センターにとっては電話の1.5倍の件数をさばける窓口。両方の得が重なったから、土曜の電話を閉じても回る形になったのだと見ています。

自分たちに引き寄せるなら

自分たちに引き寄せるなら

同じコンタクトセンターやカスタマーサポートの方に向けて、問いを3つ置きます。

1つ目は、つまずいた後の問いです。チャットやボットの利用が落ちたとき、その理由を現場の言葉で書き出していますか。「使いにくい」を要件の形にしておけば、次に何を選ぶか、何を直すかの基準になります。

2つ目は、電話の前の問いです。電話をかけてくるお客様が、その前にサイトのどこで行き止まっていたかを把握していますか。チャットの性能を上げる前に、FAQとページ導線で解ける電話があるかもしれません。

3つ目は、電話の役割の問いです。電話でしか受けない用件はどれですか。セブン銀行は紛失・盗難と金融犯罪を24時間の電話に残し、それ以外の土曜の受付をチャットに移しました。電話を「全部の受け皿」から「急ぎの用件の窓口」に変えるなら、どこで線を引くかを先に決めておけます。

業界の外でも使える考え方を2つ挙げます。

1つは、新しい仕組みが使われなかったら、仕組みより先に入口を見ることです。社内のポータルでも予約サイトでも、使われない原因は機能ではなく、たどり着くまでの数クリックにあることがよくあります。

もう1つは、移行先に人の温度を残すことです。セボンというキャラクターも、母語で話せるオペレーターも、移った先が冷たい窓口ではないとお客様に伝える仕掛けでした。チャネルを移すときは、移った先でお客様が何を感じるかまで設計に入れておく。窓口の移行全般に通じる考え方です。

まとめ

セブン銀行のコンタクトセンターは、一度使われなくなったチャットを、現場の40項目で選び直し、サイトの導線を直し、有人チャットを1人で2〜3人を受ける窓口に育てました。電話は全体の3割弱になり、土曜は急ぎの用件だけを電話で受けています。失敗を仕様に変え、電話の手前で電話の理由を消していった事例です。

あなたのセンターで、利用が落ちたまま置かれている窓口はありませんか。

よくある質問

Q1. 「電話以外の比率71.3%」は、AIが問い合わせの7割を解決したという意味ですか

いいえ。問い合わせがどのチャネルで来たかの構成比で、チャットボット、有人チャットなど電話以外のチャネルが占める割合です。有人チャットでオペレーターが応対した分も含まれます。

Q2. 電話はなくなったのですか

なくなっていません。2025年10月4日から、日本語の一般問い合わせの電話受付は平日9:00〜18:00になり、土曜は有人チャットのみになりました。キャッシュカードの紛失・盗難や金融犯罪に関する緊急の問い合わせは、24時間365日電話で受けています。

Q3. 外国語の問い合わせはどう受けていますか

チャットは9言語に対応しています。お客様の端末のブラウザの言語設定を自動で判別し、その言語のオペレーターにつなぐ仕組みで、オペレーターの多くはネイティブスピーカーです。

Q4. チャットの入れ替えにはどのくらいかかりましたか

検討開始が2022年10月、決定が2023年4月、切り替えが2023年10月です。決定から約半年で切り替え、そこから約1年で電話以外の比率が71.3%になりました。

参考リンク・注記

一次情報(株式会社セブン銀行。確認日はいずれも2026年10月28日)

報道・ベンダー(確認日はいずれも2026年10月28日)

注記

  • 本稿は公開情報をもとにした CC AI Lab 編集部の見立てで、株式会社セブン銀行の見解ではありません。
  • 担当者の発言は各掲載ページの記載から引用しています。所属・役職は掲載時点のものです。カラクリ導入事例ページの発言は話者が個別に示されていないため、本文では同社の発言として扱いました。
  • 2023年11月の「電話が6割」は担当者の発言で、2025年1月発表の起点値(電話50.1%)とは集計の時点・方法が同じとは限りません。
  • 月間問い合わせ件数(約6万件、約9万件)は、それぞれの発表時点の値です。
  • 特定ベンダーの評価・推奨は行いません。

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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