コールセンターの通話分析でできること 音声認識・要約・品質評価

最終更新日: 2026年10月8日(毎月更新します。更新の記録は末尾にあります)
コールセンターの通話分析とは、通話を音声認識で文字にして、通話中のオペレーター支援、通話後の要約、応対品質の評価、感情やカスハラの検知、顧客の声(VOC)の分析に使う仕組みです。書き起こしそのものより、その上に載る要約・評価・検知・分析が価値の中心になっています。
このページは、通話データの使い道をまとめた「まとめ」です。用途ごとに詳しく扱った記事へつないでいます。
先に立場を書きます。導入で最初に決めるのは製品ではなく、誰の時間を返すのかです。オペレーター、SV、企画・CX部門のどの時間かで、選ぶ型が変わります。
音声認識と通話分析で何ができるか

カテゴリのコアは、通話音声をテキストに変換する音声認識(STT)である。それだけなら会議の議事録AIと変わらないが、コールセンターの通話解析は、電話設備(PBX/CTI)との接続と、全通話を常時処理する前提で設計される点で別物になる。
このコアの上に、用途が4層に積み上がっている。
リアルタイム支援: 通話中にテキスト化し、FAQのレコメンドやNGワード検知でオペレーターと管理者(SV)を支える
後処理(ACW)の削減: 通話後の記録作成、いわゆるアフターコールワークを自動要約で短縮する。ACWは小売店のレジ締めのような、顧客と向き合っていないのに必ず発生する時間である
品質評価・感情分析・カスハラ検知: 全通話を自動採点し、顧客の感情や威圧的な言動の兆候を検知する
VOC分析: 顧客の声の分析。従来は一部通話の聞き起こしによるサンプリング調査だったものを、全数で見ることが可能になる
書き起こしテキストは原油に近い。それ自体はほぼ使い道がなく、要約・採点・検知という精製工程を通って初めて価値になる。事業者の競争軸も、原油の質(認識精度)から精製設備(上に載る機能)へ移ってきた。後述するtranspeechのリニューアルが売り物にしたのも、精製工程の側である。
隣接カテゴリとの境界も引いておく。顧客と対話するAIはボイスボットであり、人が話す通話を扱う本カテゴリとは役割が異なる。Amazon ConnectのようなクラウドCC基盤(CCaaS)は書き起こしや要約を基盤機能として取り込みつつあるが、本稿は単体サービスとして提供される事業者に絞る。汎用の議事録AIとは、電話環境への対応・全通話処理・個人情報マスキングといった要件で線が引かれる。
使う人は3種類いる。オペレーター、SV、そして企画・CX部門である。導入検討では「誰の時間を返すのか」が最初の分岐になる。
用途ごとに詳しく読む
通話中の支援と後処理(ACW)
- 通話要約AIで後処理時間が減らない理由(修正・転記まで測る)
- エージェント支援の効果はどう数値化するのか
- 音声認識辞書を改善する(品番・氏名・住所のテスト手順)
- 音声認識精度の「95%」は何を意味するのか
応対品質の評価
- 応対品質の評価をAIで全件化すると何が変わるのか
- 品質評価で人とAIの点数がずれるとき(キャリブレーション)
- 応対品質評価表、総合点に埋もれる重大ミスを分ける
- 録音ファイルから品質評価を始める(バッチ運用)
感情分析とカスハラ検知
顧客の声(VOC)
- コールセンターのVOCを他部門の判断に変えるセンター長のメモ【テンプレート付き】
- VOC分析を外注するとき何を依頼すればよいのか
- 顧客努力指標(CES)を測る
- JR西日本カスタマーリレーションズはなぜ通話要約で止まらなかったのか
研修
主な10サービス(2026年10月8日時点・五十音順)

掲載するのは、2026年10月8日時点でベンダーの一次情報(製品ページ・公式リリース)の存在と主要事実を確認できたサービスのみである。掲載順は五十音順(外資は日本法人名の読み仮名)で、並び順に意味はない。数値はすべて各社の公表値であり、第三者検証を経ていない。
サービス名 | 提供企業 | 確認できた主な機能 | 公表されている実績(数値の性質) |
|---|---|---|---|
AmiVoice Communication Suite | アドバンスト・メディア | 全通話リアルタイムテキスト化・応対品質自動採点・感情解析・要約生成 | 導入600社・90,000ライセンス以上(同社公表) |
AI Dig | エス・アンド・アイ | リアルタイム音声認識・ナレッジ検索・自動要約・自動マスキング・FAQ下書き生成 | 実績数値の記載は確認できず |
ForeSight Voice Mining | NTTテクノクロス | テキスト化・FAQレコメンド・感情認識・自動評価・VoC分析・カスハラ検知 | 累計9.7万席・500拠点以上(同社公表) |
Enour CallAssistant | オプテージ | 音声テキスト化・FAQレコメンド・自動要約・VoC分析・要注意ワードアラート | 実績数値の記載は確認できず |
SoftVoice | ソフトバンク | 怒鳴り声をリアルタイムで穏やかな声に変換(声質変換) | 怒りの感情を30%以上抑制(同社発表) |
transpeech | トランスコスモス | 音声認識・対話要約・VOC抽出・FAQ生成・カスハラアラート・必須案内チェック | 150社以上が利用(2025年2月時点・同社発表) |
YOMEL | PKSHA Infinity | 音声認識によるACW改善・応対品質管理・VOC・コンプライアンスチェック | 効果数値の記載は確認できず |
Recware/SA | 日立情報通信エンジニアリング | リアルタイム/バッチのテキスト化・OK/NGワード判定・同時モニタリング | 最大80名同時モニタリング(仕様値) |
Verint Speech Analytics | ベリントシステムズジャパン | 全音声インタラクションの分析・転写・感情分析・PIIマスキング | 転写精度90%は「一部顧客の報告」(ベンダー発表) |
MSYS Omnis | 丸紅情報システムズ | テキスト化・要約・FAQ生成・感情値の可視化・NGワード検知 | 導入70社以上・事例でACW約50%削減(同社公表) |
アドバンスト・メディアはAmiVoice Communication Suiteをコンタクトセンター向け音声認識ソリューションとして提供する。全通話のリアルタイムテキスト化から応対品質の自動採点・感情解析・要約生成までを一体で扱い、導入実績600社・90,000ライセンス以上(同社公表)。クラウド・オンプレ両対応で、機能を絞った「AmiVoice MediaScriber Cloud」は最短5営業日での導入をうたう。
エス・アンド・アイのAI Digは、コンタクトセンター向け応対支援サービス。リアルタイム音声認識(不適切表現のハイライト付き)、ナレッジ検索の回答候補提案、自動要約、個人情報の自動マスキング、FAQ下書きの自動生成までを一連のフローとして設計している。導入実績の数値はサイト上では確認できなかった。
NTTテクノクロスのForeSight Voice Miningは、テキスト化・FAQレコメンド・リアルタイム感情認識・自動評価に加え、生成AIを活用したカスハラ検知機能を搭載する。導入実績は累計9.7万席・500拠点以上(同社公表)。クラウド版も提供し、Amazon Connect連携にも対応する。
オプテージのEnourシリーズは、オペレーター支援のEnour CallAssistantを軸に、音声テキスト化・FAQレコメンド・自動要約・VoC分析・要注意ワードアラート・リアルタイムモニタリングを提供する。実績数値の公表はサイト上では確認できなかった。
ソフトバンクのSoftVoiceはこの地図の中で毛色が異なる。書き起こしではなく、顧客の怒鳴り声をリアルタイムで穏やかな声に変換し、会話内容は保ったまま威圧的なトーンだけを取り除く声質変換である。東京大学大学院の高道慎之介特任准教授との共同研究に基づき、怒りの感情を30%以上抑制する(同社発表)。ソフトフォン限定のインストール型という提供条件が明記されている。
トランスコスモスのtranspeechは、コンタクトセンターBPO大手が自社運用から外販に展開した型である。音声認識をコアに、従来からの対話要約に加えて、VOC抽出・FAQ生成・カスタマーハラスメントアラート・必須案内チェックを追加した(同社の2025年2月発表)。150社以上が利用する(2025年2月時点・同社発表)。
PKSHA InfinityのYOMELは「コールセンターAI音声認識」を掲げ、ACWの改善・効率化と応対品質管理・VOC・コンプライアンスチェックを訴求する。具体的な削減率などの効果数値はサイト上では確認できなかった。
日立情報通信エンジニアリングのRecware/SAは、通話音声の実時間テキスト化と蓄積データの一括テキスト化の2タイプを提供する。通話中のキーワード検索やOK/NGワード判定、最大80名のオペレーターの同時モニタリングに対応する。導入実績の数値は確認できなかった。
ベリントシステムズジャパンは米Verintの日本法人で、Verint Speech Analyticsは全音声インタラクションの100%を分析・転写し、洞察を抽出するとうたう。転写・要約・感情分析・個人情報マスキングを個別の「ボット」群として提供する構成が特徴で、転写精度90%という数字には「一部顧客の報告」という但し書きが付く(ベンダー発表・英語ページ)。なお、米Verintは2025年11月にThoma Bravoによる買収で非上場となり、Calabrioと統合された。
丸紅情報システムズのMSYS Omnisは、生成AIと音声認識でテキスト化・要約・FAQ生成までをワンストップで提供する。Google Cloud基盤で複数の音声認識エンジンから選択でき、感情値の可視化やNGワード検知、SalesforceやFastHelpなどCRMとの連携を掲げる。導入実績70社以上、事例における効果としてACW時間約50%削減(いずれも同社公表)。
なお、候補として調べた中には、現行の製品ページがコールセンター向けの訴求を確認できない形に変わっていた事業者もある。本稿は確認できたものだけを載せており、この10サービスがカテゴリの全てではない。
製品ごとの比較表は会員向けに
通話要約・後処理の自動化と、応対品質の自動評価(自動QA)については、調査日付きの「ツールまとめ」で、機能・料金の公開状況・連携先を同じ項目で並べた比較表を会員向けに公開します(2026年12月から順に)。
数字の読み方。席数・社数・ライセンス・削減率は足せない
この地図に並んだ数字を見ると、単位がバラバラなことに気づく。累計9.7万席(席数)、600社・150社・70社(社数)、90,000ライセンス(ライセンス数)。分母の定義が違うため、これらは足すことも並べて比べることもできない。席数は大規模センター1社で数千席になるし、社数は小規模導入も1社と数える。規模感の演出に使われやすい数字ほど、単位の確認が要る。
「シェアNo.1」も読み方が要る。アドバンスト・メディアはシェアNo.1の表記に合同会社ecarlate「音声認識市場動向2026」という調査主体を添えている。調査主体と年版が添えられた標榜は検証可能だが、出所のないNo.1は読み飛ばしてよい。
認識精度は、このカテゴリで最も比較に使えない数字である。精度は音源の品質・業種の専門用語・チューニングの有無で大きく変わるが、各社の公表値は測定条件が非公開のため、例えば、ある製品が86%、別の製品が94%とうたっていても、その2つを並べて優劣は言えない。Verintの90%ですら「一部顧客の報告」という但し書き付きである。本稿が精度の横並び表を作らないのはこのためだ。
削減率も同様である。ACW約50%削減という数字は「事例における効果」、つまり特定顧客の特定条件での値だ。会議議事録AIが「月◯時間削減」を掲げるのと同じ構図で、自社の通話構成・記録要件に置き直して初めて意味を持つ。もっとも、数値の大半がベンダー公表値で構成されているのはコールセンターAI全般の現状であり、それ自体がこの市場の成熟度を示している。
要件からの選び方

要件からの逆引きを整理する。特定の製品を推す意図はない。
ACW削減が主目的: 要約と記録の自動化に強みを置く型で足りる。全機能スイートをACWのためだけに入れると過剰投資になりやすい
リアルタイム支援まで欲しい: テキスト化・FAQレコメンド・モニタリングを一体で提供するスイート型が候補。オペレーター画面への組み込みと現場の運用設計が成否を分ける
オペレーター保護が主目的: カスハラの兆候を検知してSVに知らせる型と、声そのものを変換して負担を下げる型の2系統が確認できた。検知は運用(誰が・何分以内に介入するか)とセットで初めて機能する
品質評価・VOCが主目的: 全通話のバッチ処理で足りる場合が多い。リアルタイム性は不要な分、分析の設計力が問われる
リアルタイムかバッチかは、生放送の字幕と録画番組の字幕の違いに近い。前者は速度と現場統合、後者は精度と分析深度に軸足がある。既存のPBX/CTI・CC基盤・CRMと接続できるかは、機能比較の前に来る事実上の第一関門である。
この逆引き自体への反論もありうる。CC基盤への同梱が進めば、単体サービスの選定という行為そのものが不要になるという見方だ。ただし、同梱機能の日本語精度や業務適合はまだ個別検証の領域であり、「付いてくるから使う」だけで成果が出るのであれば、この地図に並んだ専業がこれだけ残る理由は小さくなるはずで、少なくとも今は個別に確かめる価値があると見ている。通話量が多くACWが常態的な負荷になっている、品質評価がサンプリングに留まっている、VOCを他部門へ渡す仕組みがない。この3条件のうち2つ以上に当てはまるセンターなら、単体サービスの検討に時間を使う価値がある。
聞き取るから、変えるへ

このカテゴリの動きは「聞き取る(認識)」から「読み解く(分析)」へ、そして「変える(介入)」へと段階を進めている。SoftVoiceの声質変換は、通話を解析して報告するのではなく、通話そのものに介入する初期の例である。カスハラ検知機能がForeSight Voice Miningとtranspeechの双方に搭載されたことも、解析の目的が事後の品質管理からオペレーターの就業環境の保護へ広がっていることを示す。
海外に目を向けると、Verintは転写を製品の中心ではなく、複数のボットの1部品として扱う構成をとる。書き起こしそのものは部品化し、その上のワークフローで差がつくという設計思想であり、国内各社が要約・FAQ生成・検知を競って追加している方向とも一致する。私の見立てでは、この先の差別化の主戦場は認識精度ではなく、検知した事象を誰にどう届けて業務を動かすかというワークフロー統合に移る。
同じ業界の導入例を確かめる
国内のコンタクトセンターのAI導入の公表事例1,390件を、業種・領域・年で分けた会員向けレポートがあります。通話分析の導入例が、どの業種で発表されているかを確かめられます。
よくある質問
コールセンターの通話分析とは何ですか
通話を音声認識で文字にして、要約・品質評価・感情やカスハラの検知・VOC分析などに使う仕組みです。人と人の通話を対象にする点で、顧客と話すボイスボットとは役割が違います。
認識精度が90%台といった数値でサービスを選んでよいですか
横並びの比較には使えません。精度は音源の品質、業種の専門用語、調整の有無で大きく変わり、各社の公表値は測定条件が公開されていません。自社の実際の通話で試して確かめるのが確実です。
CCaaSに付いている書き起こし機能があれば、専業サービスは要りませんか
要件しだいです。基盤側で足りるかを先に試し、足りない部分がはっきりしてから専業サービスを検討する順序が合理的です。
カスハラ検知AIは何をしてくれるのですか
確認できた範囲では、威圧的な言動の兆候を検知して管理者に知らせる型と、声のトーンを穏やかに変換してオペレーターの負担を下げる型があります。どちらも、検知の後に誰がどう介入するかは人が決めます。
注記と更新の記録
本記事は2026年9月2日に公開した「コールセンターの音声認識・通話解析ツール主要10サービス一覧」を、通話分析のまとめページとして2026年10月8日に作り直したものです。10サービスの記載は2026年10月8日時点で各社の一次情報を確かめ直したもので、数値は各社の公表値です。一覧は公開情報で確認できた範囲で、全数調査ではありません。本記事はAI著者(相原ことは)によるデスクリサーチで、見立ての部分は筆者の見解です。
更新の記録
- 2026年10月8日: 通話分析のまとめページとして作り直し(題・冒頭・用途ごとの記事一覧・会員向けの導線・FAQを追加)。10サービスの記載を確かめ直し、Verint の買収、transpeech の時点を追記。古い数字の入った図解を1枚外した
- 2026年9月2日: 公開
参考リンク
ベンダー公式
トランスコスモス「音声認識ソリューション『transpeech』をAIアシストソリューションにフルリニューアル」 https://www.trans-cosmos.co.jp/company/news/250227.html
アドバンスト・メディア「AmiVoice Communication Suite」 https://www.advanced-media.co.jp/products/service/amivoice-communication-suite
アドバンスト・メディア「公式サイト」 https://www.advanced-media.co.jp/
エス・アンド・アイ「AI Dig」 https://sandi.jp/sandiai/solution/aidig
NTTテクノクロス「ForeSight Voice Mining」 https://www.ntt-tx.co.jp/products/foresight_vm/
オプテージ「Enour コンタクトセンターソリューション」 https://optage.co.jp/business/service/application/contactsolution/
ソフトバンク「SoftVoice」 https://www.softbank.jp/biz/services/ai/softvoice/
日立情報通信エンジニアリング「Recware/SA」 https://www.hitachi-ite.co.jp/products/recware_sa/
PKSHA Infinity「コールセンターAI音声認識 YOMEL」 https://ai.yomel.co/
Verint「Speech Analytics」 https://www.verint.com/speech-analytics/
丸紅情報システムズ「MSYS Omnis」 https://www.marubeni-idigio.com/product/msys_omnis/
この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。


