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通話録音は法律的にどこまで許されるのか ー 同意・告知・保存期間とカスハラ証拠の実務

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カスタマーハラスメント対策が全事業主の義務になる2026年10月1日まで、あと1ヶ月あまりとなった。現場で対策の実効性を左右するのが通話録音である。カスハラの立証も、オペレーターを守る対応記録も、応対品質の検証も、出発点はすべて録音データにある。ところが「相手の同意なく録音してよいのか」「『録音しています』のアナウンスは何のためか」「何年保存すべきか」という基本の問いに、正確に答えられるセンターは意外に少ない。この記事では、通話録音の法律上の位置づけを一次情報ベースで整理し、カスハラ証拠としての運用と個人情報保護の両立を実務手順に落とす。先に立場を言えば、録音の適法性そのものはほぼ決着済みの論点であり、本丸は「目的の明文化と保存・開示の運用設計」にある。

コールセンターの録音を取り巻く法制度は、この1年半で二段構えになった

まず制度の現在地から確認する。契約ウォッチの解説によると、2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法により、顧客等からの著しい迷惑行為(カスハラ)への対応が事業主の雇用管理上の措置義務として位置づけられ、2026年10月1日に施行される。厚生労働省は2026年2月26日にカスハラ指針を告示し、4月24日には運用通達と解釈Q&A(全41問)を公表済みで、BUSINESS LAWYERSの解説が指摘するとおり、中小企業を含む全事業主に猶予なく適用される。

当て馬として条例を置くと、国に先行したのが東京都カスタマー・ハラスメント防止条例である。2024年10月4日に全国初のカスハラ防止条例として成立し、2025年4月1日に施行された。ただし都条例は罰則のない理念条例で、「何人もカスハラを行ってはならない」と宣言する性格が強い。一方の改正法は事業主への措置義務であり、性質が異なるため単純比較はできない。重要なのは、理念(条例)から義務(法律)へと二段構えで制度が固まった結果、「カスハラだったかどうか」を事後に判定できる記録、すなわち録音の証拠機能に実務の重心が移ったことだ。

「通話録音 法律」の基本 ー 同意は不要、ただし個人情報にはなる

「通話録音 法律」の基本 ー 同意は不要、ただし個人情報にはなる

では録音そのものはどこまで許されるのか。結論から言うと、通話の当事者である企業が自分宛ての通話を録音することに、相手の同意は法律上要求されていない。文の風東京法律事務所の解説によると、会話の当事者による録音(いわゆる秘密録音)を直接禁じる法律はなく、最高裁も2000年(平成12年)7月12日の第二小法廷決定で、詐欺被害を疑った者が後日の証拠とするため相手の同意なく会話を録音しても違法ではなく、録音テープの証拠能力は否定されないと判断している。もっとも、同解説は、著しく不当な方法で取得された録音は民事訴訟で証拠能力が否定されうることも紹介しており、「録音してよい」と「どんな録音でも証拠になる」は別の話である。

次に個人情報保護法との関係である。個人情報保護委員会の公式FAQは、通話内容から特定の個人を識別できる場合、録音は個人情報に該当するとしたうえで、事業者は利用目的の通知または公表の義務を負うが、「録音していること自体を相手に伝える義務まではない」と明言している。逆に識別できない録音は基本的に個人情報に該当しないというFAQもあるが、コールセンターの録音は氏名・会員番号・本人確認情報を含むのが普通であり、実務上は「録音=個人情報」とみなして設計すべきだ。

ここで冒頭アナウンスの意味がはっきりする。「この通話は録音しています」という告知は、法律が求める同意取得の手続ではない。例えるなら、あれは店頭の「防犯カメラ作動中」の貼り紙と同じで、利用目的を相手に見える場所に掲げる看板であり、同時に威圧的な言動への抑止としても働く。法的義務の中身は告知そのものではなく、プライバシーポリシー等での利用目的の特定・公表にある。この区別を理解しておくと、「アナウンスを飛ばした通話は使えないのではないか」という現場の誤解を解ける。

実務手順の型 ー 目的・保存・開示・証拠化の4点セット

実務手順の型 ー 目的・保存・開示・証拠化の4点セット

法律論を運用に落とすと、手順は4つの型に整理できる。

第一に「目的の明文化」。応対品質の向上だけを利用目的に掲げているセンターは多いが、カスハラ対策で録音を使うなら、従業員の就業環境の保護や迷惑行為への対応を利用目的に明記しておくのが筋である。目的の範囲を超えた利用は個人情報保護法上の問題を生むから、義務化施行前のいま、ポリシーの文言を点検する価値がある。

第二に「保存期間の設計」。メディアリンクの解説が整理するとおり、通話録音の保存期間を一律に定めた法律はなく、金融商品取引のように業法側で記録保存が求められる業種が例外的に存在する。個人情報保護法には、利用する必要がなくなった個人データを遅滞なく消去する努力義務があるため、「長く残すほど安全」でもない。カスハラ証拠の観点では、対応方針で定める相談・対応の記録と紐づく期間(たとえば事案終結から一定年数)を自社で決め、根拠とともに文書化しておくことが答えになる。

第三に「開示請求への対応フロー」。IVRyの弁護士監修コラムが解説するとおり、録音データは本人からの開示請求の対象となる保有個人データに該当しうるため、顧客本人から「自分の通話を開示せよ」と求められた場合、原則として応じる必要がある。実務ではオペレーター側の声や他の顧客情報の扱いが論点になるため、開示の受付窓口・判断基準・マスキング手順をあらかじめ決めておかないと、請求が来てから紛糾する。

第四に「カスハラ証拠としての運用」。録音が威力を発揮するのは、単体ではなく対応記録とセットになったときである。日時・担当者・発言内容・自社の対応・警告の有無を記録に残し、該当通話の録音と相互参照できるようにしておくと、悪質事案での取引拒否や法的措置、労災・安全配慮義務をめぐる説明の際に、事実認定の土台になる。逆に録音だけあって記録がないと、「どこからがカスハラか」の判定を毎回ゼロからやり直すことになる。

ここからは私の見立て

ここからは私の見立てとして書く。カスハラ対策義務化は、通話録音の位置づけを「品質管理の道具」から「従業員保護の証拠インフラ」へ変える転換点になる。これまで録音は顧客対応の検証、つまり会社が顧客に向き合うための道具だった。10月以降は、会社が従業員を守る義務を果たした証明としての役割が加わる。AIによる全通話テキスト化やカスハラ兆候の自動検知が国内ベンダー各社から相次いで出ているのも、この転換への供給側の反応だと読んでいる。録音・テキスト化・検知・記録の一気通貫が、次のコールセンターシステム選定の標準要件に入ってくるだろう。

自己反証もしておく。録音と解析の強化は、顧客に対する証拠化であると同時に、オペレーターにとっては自分の全発言が常時記録・評価されうる環境の強化でもある。従業員を守るための仕組みが、使い方を誤れば監視強化として働き、定着を損なう可能性は否定できない。録音データの利用目的に「従業員の保護」を掲げるなら、評価への転用範囲を労使で明確にしておくことが、制度の趣旨と整合する運用だと考える。

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この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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