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「AIアシスタント " Erica " は、11,000人分の仕事をしている」と語る銀行が、レイオフを発表しない理由。Bank of Americaの人員設計

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「AIアシスタントは11,000人分の仕事をしている」と経営が公言しながら、コールセンターのレイオフは一度も発表しない。米Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)のAIアシスタント「Erica」を巡る動きは、AI効果の対外説明と雇用の実務をどう両立させるかという、日本のコンタクトセンター責任者にとっても他人事ではない問いへの、ひとつの回答例になっています。

Ericaは3層構成。顧客対応だけの話ではない

Ericaは2018年に顧客向けバーチャルアシスタントとして始まりましたが、現在は3つの層で構成されています。

1つ目は顧客向けのErica本体です。同行の発表によると、累計の対話件数は30億件を超え、利用者は約5,000万人、月間の対話は5,800万件超。98%超の利用者が必要な情報に到達しているとされています(同行発表による公表値。第三者検証値ではありません)。

2つ目は社内向けの「Erica for Employees」です。行員のITヘルプデスク問い合わせを代替する位置づけで、同行の発表によると、行員の90%超が利用し、ITサービスデスクへの入電を50%削減したとされています。

3つ目がコンタクトセンターのオペレーター支援「EricaAssist」です。2026年7月には生成AIによる強化が発表され、18,000人超のオペレーターが通話中のリアルタイム要約やガイダンスに使い、平均通話時間を約1分短縮したとされています。顧客対応の自動化と、人の対応の高速化を同じ基盤で進めている点が特徴です。

「11,000人分の仕事」という経営説明の扱い方

経営陣は「Ericaは11,000人分の仕事をしている」と説明したとAmerican Bankerが報じています。数字としてはインパクトがありますが、発言の算出根拠や基準年は開示されていません。自社でベンダー提案や他社事例を評価する際は、この種の数字を「経営メッセージ」と「検証可能な実測値」に分けて読む必要があります。

検証可能な側の数字、たとえば対話件数や利用者数は同行の公式発表で確認できます。一方で「何人分か」という換算値は、前提の置き方でいくらでも変わる性質のものです。

レイオフを発表しない人員設計の中身

レイオフを発表しない人員設計の中身

注目すべきは、これだけの効果を公言しながら、同行がコールセンターのレイオフを発表していないことです。The Digital Bankerの報道によると、雇用調整は自然減(退職や異動による欠員)を軸に行われています。退職者が出るたびに補充の要否をその都度判断する運用で、2025年には約17,000人を欠員補充として採用しつつ、全社の人員はほぼ横ばいに保たれています。

ただし長期で見ると、同報道によれば消費者銀行部門の人員は過去15年で大きく減っており、2011年の約101,000人から現在は約55,000人へと半減しています。AIによる急激な削減ではなく、10年以上かけた構造変化の延長線上にEricaがある、という見方が実態に近いでしょう。同行はこの方針を「high tech, high touch」と表現しています。

ここから読み取れる型は次の3点です。

  • AI効果は対外的に大きく語る。ただし人員計画とは直接連動させない

  • 雇用調整はレイオフではなく、採用抑制と自然減の「補充判断」で行う

  • 削減ではなく、支援AI(EricaAssist)への投資で残る人の生産性を上げる

日本のコンタクトセンターへの示唆

日本のCCでAI導入を検討する際、「効果が出たら人をどうするのか」という問いは避けて通れません。Bank of Americaの例が示すのは、効果の公表と雇用の実務を切り離し、雇用側は退職不補充の設計で時間をかけて調整するという現実解です。労使の摩擦を起こさずにAIの成果を経営へ説明したいCC責任者にとって、「レイオフの発表」ではなく「補充判断の運用設計」から着手する順序は参考になるはずです。

あわせて、同行が顧客向け自動化とオペレーター支援を同じEricaブランドの基盤で並行投資している点も見逃せません。入電を減らす施策と、残った複雑な対応を支える施策は、別々のプロジェクトではなく一体の要員設計として考える必要があります。

よくある質問

Ericaはボイスボットですか?

Ericaはモバイルアプリを中心としたテキスト・音声対応のバーチャルアシスタントで、日本で言うボイスボット(電話自動応答)とは形態が異なります。ただし「定型問い合わせの自動化で入電を減らし、残る対応を支援AIで高速化する」という構図は、電話中心の日本のセンターにも当てはまります。

Bank of Americaはオペレーターを解雇したのですか?

コールセンターを対象にしたレイオフは発表されていません。The Digital Bankerの報道によると、雇用調整は退職者が出た際に補充要否を都度判断する自然減方式で行われ、2025年も約17,000人の欠員補充採用が行われています。一方、消費者銀行部門では過去15年で人員が約半減しており、長期の構造変化は進んでいます。

「Ericaは11,000人分の仕事をしている」という数字は信頼できますか?

経営陣の発言として報じられた数字ですが、算出根拠や基準年は開示されていません。対話件数などの公式発表値と異なり、換算値は前提次第で大きく変わるため、そのまま自社の試算に使うのは避けるべきです。ベンダーや他社の「何人分」という表現に出会ったときも、同じ確認が必要です。

日本のセンターがまず参考にできる点はどこですか?

AI効果を人員計画へ直結させず、退職不補充の運用設計から始める点です。また、入電削減(顧客向け自動化)とオペレーター支援AIを別プロジェクトにせず、一体の要員設計として投資している点は、施策が縦割りになりがちな日本のセンターにとって示唆があります。

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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