横浜銀行のコールセンターにおけるAI導入と活用の変遷

2025年11月、モビルスは横浜銀行がAIエージェント型ボイスボットを導入したと発表し、モビルスのプレスリリースはこれを「地銀初」とした(モビルス調べ)。横浜銀行のAI関連の発表を2018年からさかのぼると、エーアイスクエア、丸紅情報システムズ、サイバーエージェント、ラック、モビルスと、少なくとも5社の名前が出てくる。名前だけを追えば、ベンダーを次々に替えてきた銀行に見えます。では実際に、ベンダーは交代したのか。それとも別々の持ち場に並んでいるのか。年表を持ち場ごとに分けると、電話の一次受付では同じ部署が同じベンダーで3年かけて用件を足してきた、という別の筋が見えてきます。
1. 公表事実の時系列をコールセンターと事務部門に分けて並べる

[2018年10月][ベンダー発表]エーアイスクエアが、横浜銀行のコールセンターでAI対話要約の実証実験を始めると発表。教師データはヘルプデスク、相続の窓口、営業店の電話受付センターの通話約1,000件。[事実経過]
[2019年6月][ベンダー発表・業界誌報道]エーアイスクエアが通話要約の「Quick Summary」を発売し、第1号として横浜銀行のコンタクトセンターでの本番導入が決まったと発表した。DIGITAL Xの事例記事は、同センターを150席規模・約200人・月5万件の応対と報じ、検証で通話の抜粋は約8割、要約は約7割の正解率だったとした。[業界誌報道、2019年6月時点。正解率は約1,000件を使った検証値]
[2019年6月][ベンダー発表]サイバーエージェントが、横浜銀行のWebサイトの問い合わせ窓口にAIチャットボット「AI Messenger」を7月中に導入予定と発表。対象はマイダイレクト、マイカーローン、教育ローン、カードローンで、答えきれない質問は有人のオペレーターへ引き継ぐ。[計画、2019年6月発表時点]
[2019年6月][ベンダー発表]丸紅情報システムズが、横浜銀行がコールセンターにクラウドAIサービス「MSYS Omnis」を2019年9月から正式導入すると発表。音声認識と文章要約で顧客のニーズをつかむ狙いとされた。[計画、2019年6月発表時点]
[2023年2月][ベンダー発表]事務サービス部 融資・外為グループが、モビルスの「MOBI VOICE」で融資・外国送金の問い合わせの一次対応を始めた。モビルスの事例ページによると、4店舗分の電話を集めた運用で、受電は1日合計40〜60件(無言電話を含む)。モビルスの事例紹介では、対応人数は導入前の10名以上から2〜3名になったとされる。[ベンダー発表]
[2023年8月][ベンダー発表]同じ事務サービス部のカード業務センターへ広げた。銀行が送った不正利用の疑いを知らせる手紙を見て電話してきた会員を、ボイスボットが一次受付する。モビルスの事例ページ(提供者側発行)によると、一次受けで放棄呼0、月約1,000件×1件あたり約4分で月67時間の削減。[ベンダー発表、2024年2月時点]
[2023年][ベンダー発表]行員向けの「行内ChatGPT」を導入。ラックの事例ページによると稟議書やマニュアルの作成など社内事務が対象で、顧客の問い合わせ窓口ではない。[導入事実]
[2024年2月][ベンダー発表]上のカード業務センターの事例ページで、MOBI VOICEは6部署で横断的に運用されているとされた。[ベンダー発表、2024年2月時点]
[2025年6月〜10月][ベンダー発表]融資・外為グループが、生成AIを使うAIエージェント型ボイスボットの実証実験を3カ月行い、2025年10月にローン関連5種類の証明書の発行申請を電話で自動受付する窓口を新設。11月に1種類を足して6種類になった。[導入事実]
[2025年11月][ベンダー発表]モビルスが導入を発表。住宅ローン年末残高証明書などの再発行は年末に集中し、繁忙期には証明書発行申請の電話が月1,600件に上る。[ベンダー発表、2025年11月時点]
[2026年5月][ベンダー発表]モビルスの続報リリースで、一部の証明書では、オペレーターの折り返し確認なしに受付を終えた割合が約9割。削減時間は年間約445時間(電話応対約175時間、発行依頼書の郵送作業約270時間)の見込み。[約9割はベンダー発表、445時間は見込み、2026年5月時点]
持ち場で分けると、次のようになる。
持ち場 | 名前が出るベンダー | 始まった時期 | 担い手として書かれた組織 |
|---|---|---|---|
電話の一次受付 | モビルス | 2023年2月 | 融資・外為グループ、カード業務センターなど6部署(2024年2月時点) |
通話のテキスト化・要約 | エーアイスクエア、丸紅情報システムズ | 2018年10月〜2019年 | コンタクトセンター(コールセンター) |
Webの問い合わせ窓口 | サイバーエージェント | 2019年7月(予定) | Webサイト |
行員の社内業務 | ラック | 2023年 | 全行の行員 |
電話の一次受付の層では、2023年から2026年まで出てくるベンダーは1社だけだ。しかも生成AI版を入れたのは、2023年に最初の窓口を開いた融資・外為グループである。
もう1つ、年表の素材の出どころにも偏りがある。横浜銀行のニュースリリース一覧を2026年10月13日に検索した範囲では、上のAI導入を同行自身のリリースとして出したものは見つからなかった。年表の一次情報はすべてベンダーと業界誌の側にある。
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