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クレディセゾンの「2028年春AIコールセンター」は何を先に片づけたのか ー オペレーター着信10万件から3万件を削減した順序と、累計300万時間という目標の分母

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【FC要修正】クレディセゾンの「2028年春AIコールセンター」は何を先に片づけたのか ー オペレーター着信10万件から3万件を削減した順序と、累計300万時間という目標の分母

「月に10万件あったオペレーターへの着信件数を3万件も削減することができています」。LINE WORKSの導入事例で、株式会社クレディセゾンのカスタマーサービス部の担当者はこう語っている(ベンダー事例ページ上の同社担当者発言、2025年1月取材時点)。同社は2025年9月、CSAX戦略のプレスリリースで「2028年春までに本格的なAIコールセンターのサービス開始を目指す」と発表した。核の問いはこうだ。クレディセゾンは、AIコールセンターの前に何を片づけてきたのか。先に言えることと言えないことを区分しておく。言えるのは、AIによる振り分けで着信を減らした実績(ベンダー事例上の同社発言)と、同社が公表した目標・計画の中身と順序。言えないのは、AIコールセンターの効果と、累計300万時間のうちコールセンターが占める割合。前者はまだ実現しておらず、後者は公表されていない。

1. 公表事実の時系列 ー 振り分けが先、音声基盤が次、AI応答はその後

1. 公表事実の時系列 ー 振り分けが先、音声基盤が次、AI応答はその後
  • [2019年3月][同社発表]DXの取り組みを開始。内製開発チームは「プログラマー1名」から始まった(CSAX戦略説明会の書き起こし資料)。[事実経過]

  • [2020年11月][ベンダー事例: PKSHA]東京インフォメーションセンターにデジタルコンタクトチームを新設。同チームはWebのチャットボット(PKSHA ChatAgent)の導入当初、電話で多い質問を拾って約400のFAQを一気に作成した(PKSHAの導入事例、チャットボットの導入年月は同事例に記載なし)。[前提整備]

  • [2021年][業界誌掲載のベンダー提供記事]LINE WORKS AiCallを使った振り分けの仕組み「AIナビ」の本格運用を開始(コールセンタージャパンの導入事例記事、PR表記のある記事)。オペレーター20人程度のデスクから始め、対象デスク・拠点を段階的に広げた(ベンダー事例)。[導入事実]

  • [2024年12月][ベンダー事例上の同社発言]繁忙期の12月、オペレーター着信件数が前年比約30%減少。[実績]

  • [2025年6月末〜8月初め][同社発表]ChatGPT Enterpriseのパイロットを315名で1カ月強実施(説明会の書き起こし資料)。[検証]

  • [2025年9月][同社発表]CSAX戦略を発表し、全社員を対象にChatGPT Enterpriseを導入。AIコールセンターの計画を公表。[計画]

  • [2026年9月][同社発表]音声基盤の更改を予定。更改後にOpenAIのRealtime APIなどの音声認識を使い、AIによる応答や処理を段階的に拡大するとしている。[目標・計画。2026年9月18日時点で、更改完了の公表は確認できていない]

  • [2027年度末][同社発表]累計300万時間の業務削減を目指す。[目標・計画]

  • [2028年春][同社発表]本格的なAIコールセンターのサービス開始を目指す。[目標・計画]

デジタルコンタクトチームの新設(2020年11月)から数えると、AIが自分で答えるコールセンターの目標時期まで約7年半ある。ここまでで実績と呼べるのは2024年12月の行までで、それより後の行はすべて目標・計画である。

2. 数字の読み方 ー 実績は「振り分け」、目標は「全社の時間」

実績の分母。 LINE WORKSの事例によると、インフォメーションセンターへの電話は月約20万件あり、うち約10万件は音声ガイダンスだけでは対応しきれずオペレーターにつながっていた。減ったのはこの10万件のほうで、削減幅が3万件、つまり約30%減だ。「10万件が3万件になった」のではない。AIナビの役割は、聞き取った用件を35項目に分けて、SMSでのWeb手続き案内、既存IVR、オペレーターの3経路に振り分けることにある。AIが回答して用件を終わらせた件数ではない。

「IVR完了率は40%増加」という数字も同じ事例にあるが、元の完了率も、40%が相対増なのかポイント差なのかも書かれていない。本稿ではこの数字から水準を推定しない(完了率の定義の揺れは指標定義のチェックリストで整理した)。チャット側のPKSHA事例も同じ注意が要る。題名は「自己解決率を12%向上」だが、本文にある推移は導入直後の45〜50%から57%までで、自己解決率の定義は対話後のアンケートで「はい」と答えた率である(ベンダー事例)。

目標の分母。 累計300万時間は2019年比の全社目標で、2019〜2024年に計上済みの161万時間を含む。同社は社員1人の年間労働時間を約2,000時間と置き、161万時間を約800人分、300万時間を約1,500人分と換算している(同社説明会資料)。自社分析として割り算すると、残りは約139万時間。これまでの6年で年平均約27万時間だったのに対し、2027年度末までの約3年では年平均約46万時間が要る。この時間は全社の業務が対象で、コールセンターの寄与は公表されていない。

1人あたり年間170時間とROI 954%は、315名・1カ月強のパイロットから出た見込み値だ(同社説明会資料)。小野和俊CDO兼CTOは説明会の質疑で、全社員3,700名に広げたときの効果は「証明されたものはまだありません」と答えている。

当て馬。 同じクレジットカード大手の楽天カードは、電話以外のチャネルへ問い合わせを分散させ、電話への問い合わせ数を半分以下に抑えたと発表している(同社グループ発表、2025年9月時点)。楽天カードは電話を他チャネルへ移した数字で、クレディセゾンは電話の中でオペレーターに回る件数を減らした数字だ。どちらも「電話が減った」話だが、分母が違う。楽天カードは基準時点も期間も公表していないため、両社の削減幅を並べて比べることはできない。

3. なぜこの会社は振り分けから始められたのか ー 条件の分解

3. なぜこの会社は振り分けから始められたのか ー 条件の分解

① 業務条件。 月約20万件、12月には約30万件という呼量があり、IVRは6階層で途中離脱が多かった(ベンダー事例)。以前は用件が「諸変更」と「それ以外」の2区分しかなく、新人が何でも受ける構造だった。振り分けを細かくするだけで、オペレーターの負荷と待ち時間の両方に効く余地が大きかった。

② データ条件。 AIナビの分類モデルは、Webのチャットボットに蓄積された対話データを教師データとして使っている(ベンダー事例)。デジタルコンタクトチームが運用してきたチャットのログが、電話の振り分けの材料になった。コールセンタージャパンの記事によると、分類はルールベースと識別系AIが担い、生成AIは「今後導入予定」とされていた(2025年11月時点)。最初の成果は生成AIによるものではない。

③ 組織条件。 AIナビのプロジェクトを統括したのは、PBX・IVR・通話録音装置の運用保守を担う担当者だった(ベンダー事例)。オペレーター出身の担当者が現場への定着を受け持ち、オペレーターが振り分けの正誤を画面から返す仕組みも入れた。全社側では、内製開発チームが約200名規模になっている(同社説明会資料)。

④ 時間条件。 デジタルコンタクトチームの新設(2020年11月)、振り分けの本格運用(2021年)、音声基盤の更改予定(2026年9月)、AI応答の本格開始目標(2028年春)。1段ずつ積む順序になっている。

料理にたとえれば、いきなり自動調理機を入れたのではない。まず注文を35種類に仕分ける受付係を置き、次に厨房の配管を自前で引き直し、自動調理はその後という順序だ。

4. 真似できる条件、できない条件

4. 真似できる条件、できない条件

振り分けの段は再現しやすい。IVRの階層が深い、用件の区分が粗い、どちらかに当てはまるなら、自由発話で用件を聞いてから既存のSMS・IVR・有人に振り分ける設計は、規模を問わず検討できる。ただし教師データになる問い合わせログがなければ、分類の精度を上げるのに時間がかかる。50席以下のセンターなら、まず最多用件の上位数項目をSMSのWeb案内に逃がすだけでも、同じ方向の効果を狙える。

一方、2028年春の段をそのまま真似るのは難しい。説明会で小野氏は、オペレーター向け業務システムと音声基盤のPBXを内製チームが使いこなし、そこへAIの部品をつなぐことを競争優位に挙げた。音声基盤とオペレーター端末をベンダーに任せている会社では、AI応答をどこに差し込むかの設計自体を外部に頼ることになる。音声基盤を外部に任せている会社にとって、真似できるのは順序のほうで、体制はそのままでは写せない。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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