本文へスキップ
tech公開更新約10分で読めます

コールセンターのモニタリング指導を改善する ー 次の通話で変える行動を一つ決める

シェア
コールセンターのモニタリング指導を改善する ー 次の通話で変える行動を一つ決める

モニタリングして点数をつけ、面談でフィードバックする。この流れ自体は、多くのコンタクトセンター(コールセンター)ですでに回っている。Amazonの自動評価機能は、会話分析の結果で評価フォームを自動的に埋めて提出し、最大100%の応対を評価できるところまで来たと説明している。評価の「量」は、人手でサンプル抽出していた時代とは比べものにならない。

それでも応対品質の数字が動かないセンターは多い。理由の一つは、評価の後に本人が次の通話で何を変えるかが決まっていないことにある。点数は記録に残り、面談は終わり、翌日また同じ応対が続く。本稿は、評価を記録で終わらせず次の1本に効かせるための手順を、SVと品質担当の視点で整理する。結論を先に置くと、鍵は一度に直す行動を一つに絞ることだ。ここは事実の整理が中心で、最後の章だけを見立てとして分けて書く。

評価と本人の振り返りを分ける(コールセンターのモニタリングを指導につなぐ起点)

評価と本人の振り返りを分ける(コールセンターのモニタリングを指導につなぐ起点)

まず、SVがつける評点と、本人が自分の通話をどう聞くかは、別の作業として扱いたい。評点は基準に沿った第三者の判定であり、本人の振り返りは「自分はどこで詰まったか」という当事者の観察だ。この二つを面談の場で同時に走らせると、本人は点数の弁明に気を取られ、自分の通話を落ち着いて聞けなくなる。

評価を本人に開くこと自体は、ツール側でも支えられるようになった。Amazon Connectの評価検索は、評点や評価者、日付で対象の通話を絞り込み、録音や書き起こしと評価を並べて見られると案内している。加えて本人が評価を確認した記録を残す機能も加わり、オペレーターさんが評価を読んだうえで自分の注記を添えられる。ここで大事なのは、これを監視の強化ではなく共有の手段として運用することだ。本人が同じ通話を同じ画面で聞ける状態を作り、何を評価しているのか、なぜその項目なのかを先に説明しておく。

当て馬として、全項目のスコアシートを一度に返す従来型のフィードバックを置いてみる。網羅的で公平に見えるが、返された側は十数項目の指摘を前に、どれから手をつけるか判断できない。もっとも、全項目の記録そのものは監査や処遇の公平性のために必要で、記録を減らせという話ではない。記録は残し、指導で扱う対象を絞る。この切り分けが起点になる。

一つの具体行動に絞る

指導で扱う行動は、一度に一つに絞る。Salesforceのコーチング解説は、10〜15分の短いコーチングで一度に一つのスキルや行動を扱うやり方を勧めている。十個の改善点を並べるのではなく、一つか二つの要になる行動に寄せるという考え方だ。Invocaの品質保証の整理は、品質上の課題の8割はおよそ2割の主要因から生まれるとし、影響の大きいところから先に手をつけて効果を集めるよう促す。全部を一度に直そうとすると、たいてい何も変わらない。

スポーツのフォーム指導に例えるとわかりやすい。一度に全身の動きを直そうとすると、どれも中途半端に終わって定着しない。一つの関節の使い方だけを意識する週を作る方が、身体は覚える。応対も同じで、「次の一週間は開口一番の名乗りだけ」と決める方が、本人の注意が一点に集まる。

ここで気をつけたいのは、絞る対象を観測できる行動に限ることだ。「声が暗い」「やる気が感じられない」は性格や態度の評価に滑りやすく、本人も直しようがない。そうではなく、「保留に入る前に見込み時間を伝えているか」「復唱で相手の言葉をそのまま返しているか」のように、通話を聞けば有無を判断できる行動に落とす。行動に限定すれば、指導は人格の否定にならず、本人の振り返りとも噛み合う。

次の通話で試す機会を決める

次の通話で試す機会を決める

行動を一つ決めたら、それを「いつの通話で試すか」まで一緒に決める。ここが抜けると、良い気づきも面談室に置いてきてしまう。行動変容の研究でも、目標は具体的で、達成が容易すぎず、他者と共有されているほど効果が出やすいと報告されている。目標設定の効果を検証したメタ分析(Epton らによる系統的レビュー)は、目標設定が行動全般に対して小さいながら独立した効果を持ち、目標が難しく、公に置かれ、集団で共有されたときに特に効きやすいとまとめている。「次の通話で名乗りを一段ゆっくり」と口に出し、SVも同じ言葉を控えておく。この共有が、目標を面談限りにしないための仕掛けになる。

現場運用としては、次のシフトの最初の数本を「試す枠」と決め、その通話だけは本人が自己申告で振り返る形にすると回りやすい。KCS(ナレッジ中心型サポート)の実践ガイドも参考になる。KCS v6の実践ガイドは、業務プロセスの適合を確認するレビューを、罰するためではなく学びと成長のためのコーチングの機会を見つける道具として位置づけている。評価を減点の通知ではなく、次に試す一手を一緒に決める場に変えるという発想は、コンタクトセンターの指導にもそのまま移せる。

後日の観察結果で支援を変える

決めた行動が次の通話でどう出たかは、後日もう一度観察して確かめる。ここで支援の中身を切り替える。試して定着したなら、次の一つに進む。試したが崩れるなら、行動の粒度が大きすぎるか、そもそも本人の技能ではなく手順やツールの問題である可能性を疑う。フィードバックの現場課題として、応対品質の指導では、人的余裕のなさ、効果的な方法がわからないこと、評価水準が曖昧になることが挙げられている。後日の観察を挟むと、この曖昧さのうち「効いたか効かなかったか」だけは事実で判断できるようになる。

国内では、こうした流れを研修として型にする動きもある。モニタリングフィードバック研修のように、聞き取りと伝え方をセットで学ぶ講座が用意されている。ただし研修で型を教わっても、日々の運用で「一つに絞り、試す機会を決め、後日確かめる」というループを回さなければ、型は使われないまま眠る。支援を変える判断を、SVの勘ではなく観察の結果に紐づけることが、指導を属人的でなくする。

評価後の行動改善をAI時代にどう設計するかは、現場の取材でも繰り返し論点になっている。関連して、AI時代の応対品質を考える取材記事を無料会員登録で読める。

評価制度との距離をどう詰めるか(見立て)

ここからは私の見立てとして書く。評価後の行動改善がうまく回らないセンターは、指導のための評価と、処遇を決める人事評価が同じ点数で混ざっていることが多いのではないか。点数が処遇に直結していると、本人は振り返りより弁明に向かい、SVも減点の説明に時間を使う。指導の評価は「次に何を試すか」を決めるための材料、処遇の評価は別の目的、と割り切って場を分けた方が、行動改善のループは回りやすいと考えている。

もっとも、この見立てには反証がある。一つに絞る運用は、改善が遅く見えるという弱点を抱える。十項目を一度に指摘する方が、少なくとも面談の場では「たくさん指導した」感触が残る。さらに、コンプライアンス違反や重大な聞き間違いのような待てない問題は、一つに絞る対象の外に置き、即時に是正する必要がある。だから「一つに絞る」は万能の方針ではなく、緊急でない技能の底上げに効く方針だと限定して使うのが正しい。

導入の可否は、次の三つの条件で判断できる。第一に、観測できる行動の言葉で評価項目を書き直せているか。第二に、指導の評価と処遇の評価を、場として分けられるか。第三に、後日の観察を運用に組み込む時間を、SVの一日の中に確保できるか。この三つが揃わないうちに「一つに絞る」だけを導入しても、絞った一つが宙に浮く。

まとめ

第一に、評価と本人の振り返りは別の作業として分ける。第三者の判定と当事者の観察を同時に走らせない。第二に、指導で扱う行動は一度に一つ、それも観測できる行動に絞る。第三に、その一つを次のいつの通話で試すかまで決め、後日の観察で効いたかどうかを事実で確かめて支援を変える。

評価の量は、AIの自動採点でこれから増える一方だろう。増えた評価を、点数の記録で終わらせるか、次の一本の通話を変える一手に変えるか。その分かれ目は、採点の精度ではなく、評価の後に何を一つ決めるかにあるのではないか。あなたのセンターでは、今週、一人のオペレーターさんと何の行動を一つ決めるだろうか。

よくある質問

Q. 一度に一つの行動だけでは、改善が遅すぎませんか。 緊急でない技能の底上げには、一つに絞る方が定着しやすいと考えられます。一方で、コンプライアンス違反や重大な聞き間違いは「一つに絞る」対象の外に置き、即時に是正します。絞るのは、待てる改善についてです。

Q. 評価を本人に開くと、監視されていると感じさせませんか。 評価を減点の通知として渡すと監視色が出ます。本人が同じ通話を同じ画面で聞け、何を評価しているかを先に説明し、本人が注記を添えられる状態にすると、共有の手段として運用しやすくなります。目的は行動の共有であって、態度や性格の判定ではありません。

Q. 指導のための評価と、人事評価は分けるべきですか。 本稿の見立てとしては、場を分けることを勧めます。点数が処遇に直結していると、本人は振り返りより弁明に向かいがちです。指導の評価は「次に試す一手」を決める材料として使うのが、行動改善には向くと考えています。

Q. 「観測できる行動」とは、具体的にどう書けばよいですか。 通話を聞けば有無を判断できる粒度に落とします。「声が暗い」ではなく「保留前に見込み時間を伝えているか」「復唱で相手の言葉をそのまま返しているか」のように、行動の有無で言い切れる形にします。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

確定版の速報を、会員に先行配布します。

無料の会員登録で、ベンチマーク速報レポートと隔週ニュースレターを受け取れます。

無料で会員登録する
この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

この著者の記事一覧
シェア