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コールセンターのデジタル化とは ツール導入とAI活用の違いを見分ける

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【FC要修正】コールセンターのデジタル化とは ツール導入とAI活用の違いを見分ける

総務省の情報通信白書は、デジタル化を「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」「デジタル・トランスフォーメーション」の3段階に分けて説明しています。一方でコンタクトセンター(コールセンター)の現場では、CTIやCRM、音声認識を入れた時点で「デジタル化は済んだ」と受け止められることが少なくありません。では、ツールが揃っていることと、AIによって業務の流れそのものが変わっていることは、どこで線が引けるのでしょうか。私は、この線はツールの種類ではなく「データが次の処理に使われているか」で引くべきだと考えています。

コールセンターのデジタル化はどこまで進んでいるか

コールセンターのデジタル化はどこまで進んでいるか

まず定義を確認します。令和3年版情報通信白書の整理では、特定工程の効率化のためにデジタルツールを導入するのがデジタイゼーション、外部環境や事業戦略も含めてプロセス全体をデジタル化するのがデジタライゼーション、新たな製品・サービスやビジネスモデルを通じて組織文化まで変えていくのがデジタル・トランスフォーメーションとされています。総務省の子ども向け解説でも同じ3つの言葉が順に並べられており、行政の整理としては定着した区分です。検索で「デジタル化」と「DX」の違いを調べる担当者が知りたいのは、おおむねこの段差です。

次に現場の到達度です。2024年6月に実施されたナイスジャパンのCX調査によると、コンタクトセンター業務で生成AIを「すでに導入・運用している」企業は17.2%にとどまり、「導入を進めている」企業を含めると49.2%でした。EnterpriseZineの報道では、大企業に限ると導入・運用済みは21.0%とされています。

当て馬として、その後の関心の高さを見ます。2026年1月に実施されたトランスコスモスのコンタクトセンタートレンド調査では、注目するテクノロジー領域の1位が生成AI(43.0%)でした。関心は4割を超え、実運用は2割前後という開きがあります。ただし、2つの調査は実施時期も回答者の属性も異なるため、数字を単純に引き算して「関心と実装の差は○ポイント」と言うことはできません。確かめられるのは、関心と実運用の間に段差が存在するという方向感までです。業界のデータブックであるコールセンター白書2025が第1章に生成AI・AIエージェントの活用トレンドを置いていることも、関心の軸がすでにAIへ移っていることを示しています。

なぜツール導入の段階で止まるのか

同じトランスコスモスの調査で、生成AIの活用方法として多かったのは応対内容の要約(74.5%)、メール文章の作成(63.6%)、コミュニケーターの回答支援(58.2%)でした。上位はいずれもオペレーターの手元の作業を速くする用途です。ナイスジャパンの調査を報じたIT Leadersの記事でも、導入効果として最も多く挙がったのは「コスト削減」(67.4%)でした。

これは自然な順序です。もっとも、手元の作業を速くするだけでは、業務の流れは変わりません。たとえるなら、紙の台帳をExcelに書き写しても、計算式を入れず、集計を誰も見なければ、電卓で足し算していた頃と仕事の中身は同じです。コールセンターでいえば、通話を文字にする音声認識(録音を自動で書き起こす仕組み)を入れても、そのテキストがFAQの改訂や問い合わせ原因の分析に流れていなければ、それは記録媒体がテープからテキストに変わっただけのデジタイゼーションです。

止まる理由は、ツール導入と業務設計の担当が分かれていることにあります。ツールは情報システム部門や運用ベンダーが入れられますが、「要約データを誰が、何の判断に使うか」は業務側が決めない限り動きません。導入の完了は検収で確認できる一方、業務の流れの変化は誰の検収項目にもなっていないことが多いのです。

顧客側から見た時の副作用もあります。トランスコスモスの消費者調査では、AIの誤回答で自己解決できなかった時、25%が問題解決をあきらめて離脱し、53%は有人窓口での解決を試みると回答しています。AIを顧客接点に置いても、人への引き継ぎが設計されていなければ、自己解決に失敗した顧客の4人に1人を取りこぼしかねないということです。

到達度を見分ける4つの型

到達度を見分ける4つの型

ツール導入止まりか、AI活用まで進んでいるかは、次の4つの観点で確かめられます。

型1:データの行き先。 ツールが生んだデータ(通話テキスト、要約、タグ)が、保存で終わるか、次の処理の入力になっているかを見ます。要約が応対履歴に貼られるだけならデジタイゼーション、要約から問い合わせ理由が集計され、FAQやWebの改修に反映されていればデジタライゼーションの入口です。データを「倉庫」に入れるか「配管」に流すかの違いと言えます。

型2:AIの役割が支援か代替か。 オペレーターの隣でAIが下書きを出すのは支援、AIが顧客と直接やり取りして完結させるのは代替です。どちらが上ということではありませんが、代替の範囲がどこまでかを言葉で説明できない状態は、AI活用がまだ個人の工夫に依存しているサインです。

型3:KPIの置き場所。 ツールの稼働率やライセンス利用率で成果を測っているか、顧客の自己解決率や後処理時間といった業務の結果で測っているかを見ます。前者は「入れたかどうか」、後者は「変わったかどうか」を測る物差しです。

型4:人への引き継ぎの設計。 先の消費者調査が示すとおり、AIが答えられなかった時の出口がないと離脱が起きます。AIボイスボットやチャットボットから有人窓口に渡る際、それまでの会話内容が引き継がれ、顧客が同じ説明を繰り返さずに済むか。ここが設計されているかどうかで、AI活用が顧客体験に組み込まれているかが分かります。

4つを並べると、2つの状態の違いが具体的に見えてきます。ツール導入止まりの状態では、通話テキストや要約は履歴に保存され、AIはオペレーターの下書き係にとどまり、成果はライセンスの利用率で報告され、ボットで解決しなかった顧客は最初から説明をやり直します。AI活用が進んだ状態では、同じテキストが週次で問い合わせ理由の集計に回り、AIが完結させる範囲が文書で決まっており、自己解決率や後処理時間の変化で成果が語られ、有人窓口には会話の経緯ごと引き継がれます。導入しているツールの一覧は、両者でほとんど同じかもしれません。違うのは、ツールの間をデータがどう流れ、誰がそれを見て判断しているかです。自社がどちらに近いかは、4つの観点それぞれについて「担当者の名前と、見ている数字を言えるか」を問うと確かめやすくなります。

ここからは私の見立てとして

ここからは私の見立てとして書きます。国内のコールセンターの多くは、型1から型4のうち、型2の「支援」までは到達しつつあり、型1と型3で止まっているのではないかと見ています。トランスコスモスの調査で要約が7割を超えている一方、その要約データが何に使われているかを問う設問は公開情報からは確認できません。支援用途が広がっても、データの行き先とKPIが変わらない限り、現場の実感は「便利な道具が増えた」にとどまります。

もちろん、この見立てには反論があり得ます。すべての業務をデジタライゼーションの段階まで引き上げる必要はない、という反論です。年に数件しか来ない複雑な問い合わせや、法令に絡む慎重な説明が必要な窓口では、AIに代替させるより、要約と検索支援で熟練者を助けるだけのほうが合理的です。「ツール導入止まり」を一律に遅れとみなすのは誤りで、問い合わせの種類ごとに到達すべき段階を決めるのが本来の姿だと私も考えます。

そのうえで、AI活用の段階に進むべきだと判断できるのは、少なくとも次の3条件がそろう時です。第一に、問い合わせのうち同じ理由の繰り返しが一定の割合を占めていること。第二に、その理由を通話テキストから集計できる状態にあること。第三に、AIが答えられない時の有人窓口への引き継ぎを、会話内容ごと渡せることです。3つのどれかが欠けたままAIを顧客接点に置くと、取りこぼしが先に表に出ます。

まとめ

第一に、コールセンターのデジタル化は、ツールを入れる段階(デジタイゼーション)と、データが業務の流れを変える段階(デジタライゼーション)に分けて考える必要があります。第二に、調査データを見る限り、生成AIへの関心は高い一方で実運用は2割前後にとどまり、用途はオペレーター支援が中心です。第三に、到達度はツールの種類ではなく、データの行き先、AIの役割、KPIの置き場所、人への引き継ぎの4点で確かめられます。

あなたのセンターで昨日生まれた通話の要約は、今日、誰の何の判断に使われているでしょうか。

注記

本記事の事実情報は2026年9月28日に確認したものです。調査ごとに実施時期・対象・設問が異なるため、数値は各出典の条件のもとで読んでください。「ここからは私の見立てとして」以降は筆者個人の見解であり、所属組織の公式見解ではありません。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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