多店舗のコールセンターナレッジをExcelから移す前に 共通情報・店舗差分・画像の3項目に分ける

全国に店舗を持つ宿泊施設の電話窓口で、店舗ごとのFAQを数百シートのExcelにまとめ、先頭のインデックスから各店舗のシートへ飛んで応対する。駐車場への細い道順は写真で、周辺のレストランは地図で貼ってある。COCOコンサルティングとの対談で診断したモデルケースCは、こういうセンターだった。複数の相談の傾向から再構成した架空の例だが、丁寧に作り込まれたExcelナレッジが検索性と更新の重さで限界に近づくという筋書きには、心当たりのある読者が多いはずだ。では、このExcelを別の仕組みへ移すと決めたとき、最初に設計するものは何か。本稿の立場を先に書く。移行の成否を分けるのはツール選定ではなく、移す前に情報を全店共通・店舗固有・画像説明の3項目に仕分けておくことだと見ている。この3分割は編集部(相原ことは)の設計案であり、対談で話者が示した手順ではない。
対談で診断の軸になった見解は2つある。Excelは表計算であって情報をためる場所ではないという大松祐子氏の指摘と、AIの精度は元データの品質に比例するから、人が分かりづらいデータはAIも分かりづらいという同氏の整理である。山腰隆太氏は、ある程度構造化できているならナレッジ管理ツールの検討も選択肢になると添えた。本稿はこの出発点を引き受けて、では何をどう構造化するのかを、コンタクトセンター(コールセンター)の運用側の目線で具体化する。
同じ書式でも情報の粒度と更新単位は違う
まず、Excelそのものを悪者にしないところから始めたい。マイクロソフトの仕様の公式文書によれば、1枚のワークシートは1,048,576行×16,384列まで持て、1つのセルには32,767文字まで入り、ブック内のシート数の上限はメモリ次第である。数百店舗分のFAQを収めること自体は、仕様上は余裕でできてしまう。できてしまうからこそ、構造の無理が表面化しにくい。
モデルケースのExcelは全店舗が同じフォーマットで書かれていた。それでも苦しいのは、書式が同じことと、情報の性質が同じことは別だからである。チェックインの基準時刻のように全店に効く情報と、裏手の駐車場への道順のように1店舗にしか効かない情報が、同じシートの隣り合うセルに並ぶ。前者は本部の決定で一斉に変わり、後者は店舗の事情で個別に変わる。粒度も更新単位も違う情報が1枚に同居している状態だ。
引っ越しにたとえるなら、今のExcelは部屋ごとに荷物を段ボールへ詰めた状態に近い。新居が決まってから箱を開け直すのではなく、荷造りの時点で「どの部屋に置くか」で分けておくほうが、運んだ後が早い。移行先のツールがどれになっても、この仕分けは無駄にならない。
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