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コールセンターのAI導入は、「情シス」と「現場」のどちらが主導すべきか

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コールセンターのAI導入は情シスと現場のどちらが主導すべきか

結論から書きます。コールセンターのAI導入は、情報システム部門と現場のどちらか一方が主導すると失敗します。用件と例外を知る現場が「AIに何を任せるか」を決め、情シスが「どうつなぎ、どう守るか」を決め、そのうえで最終的な決定者を1人に定める。この3点が揃っているかどうかが、ツールの性能よりも先に結果を分けます。

情シスだけで選ぶと用件の理解が抜け、現場だけで選ぶと連携と権限の設計が抜ける。本稿では、なぜこの分担になるのか、合同の設計会議に何を持ち寄ればよいのかを具体的に書きます。

なぜ「どちらが主導するか」が問題になるのか

なぜ「どちらが主導するか」が問題になるのか

AIの予算は技術側へ急速に寄っています。Gartnerの2026年8月の調査(サービス・サポート部門リーダー199人、2026年4〜5月実施)では、部門全体の予算の伸びが2%にとどまる一方で、AIへの支出は38%増えました。人件費や間接費から技術投資へ資金を付け替える動きで、それだけ「何を・誰が選ぶか」の重みが増しています。

ところが、選ぶ体制は追いついていません。AI電話解析のRevCommで自身もSVを務めた中村有輝士さんは、本誌との対談の中で、導入の受け口がDX推進部門や情報システム部門になる一方、「この人たちは実際のお問い合わせ内容の部分がわからなかったりするので、どういうふうにボイスボット設計をしたらいいかが抜けてしまう。逆に現場の人は、どういうふうに設計するかの前段階の、AIをどう使えばいいかがわからない」と指摘しています。

発注窓口は中身を知らず、中身を知る人は設計の前提を知らない。これが詰まりの正体。

情シス主導で抜けるもの 用件と例外

情シス主導で抜けるもの 用件と例外

情シスが主導する導入は、セキュリティ・コスト・既存システムとの親和性の評価は強い。抜けるのは、電話の中身です。

どの用件が定型で、どこから例外が始まるか。「住所変更」と一括りに見える用件に、実は本人確認のパターンが3つあり、代理人からの電話が月に何十件ある、という粒度の知識は現場にしかありません。この粒度を仕様に入れずにツールを選ぶと、デモでは動いたのに本番の問い合わせでは使われない、という結果になります。この失敗の構造は音声AIの現場定着の分析で書いたとおりです。

もうひとつ抜けやすいのは、例外時の出口です。AIが受けきれない電話をどの窓口の誰に、どの情報を付けて渡すか。ここは組織図ではなく当番表の世界で、現場しか書けません。

現場主導で抜けるもの 連携と権限

現場主導で抜けるもの 連携と権限

逆に、現場が主導する導入で抜けるのは、システム連携と権限の設計です。

ボイスボットが「受け付けました」と言うためには、裏側で顧客DBや基幹システムに書き込む必要があります。どのシステムのどのAPIに、どの権限でアクセスさせるか。障害時に誰が止めるか。ここを曖昧にしたままPoCを進めると、本番転換の稟議で初めて情シスが登場し、ゼロからやり直しになります。稟議でつまずく構造は現場起案と経営判断のギャップの対話で扱いました。

権限設計は細かい話に見えて、実は先行企業ほど慎重です。theCUBE Researchの25社調査では、AIエージェントを本番稼働させている19社の全社が、高リスクな操作に人の承認を必須にしていました。どの操作に承認を挟むかを決められるのは、システムの構造を知る側です。

合同設計会に何を持ち寄るか

分担の原則を会議体に落とすと、次のようになります。これは編集部の設計案です。

現場が持ち寄るもの

  • 用件の一覧と件数(月次。定型・非定型の別)

  • 用件ごとの例外パターンと、例外時に誰へ渡すか

  • 「AIに任せたくない」と現場が感じる用件とその理由

情シスが持ち寄るもの

  • 連携が必要なシステムの一覧と、API・権限の現状

  • セキュリティ・個人情報の制約条件

  • 障害時の停止手順と監視の体制案

会議で決めるもの

  • 最初にAIへ任せる用件(1つか2つに絞る)

  • 人の承認を必須にする操作の一覧

  • 効果を測るKPIと、やめる条件

  • そして、最終決定者を1人

要は最後の1行です。両部門の合議のままにすると、意見が割れたときに止まる。誰も決めないまま検討だけが長引いた導入を、読者も見たことがあるはずです。センター長でも情シス部長でもよいので、議論を聞いたうえで決める人を先に指名しておく。内製と外注の分担線の記事で書いた「ナレッジは現場、基盤は情シス」という運用フェーズの分担も、この決定者がいて初めて機能します。

決定者はどちらから出すべきか

最終決定者は、現場側(センター長かその上のCS責任者)から出すのが合理的だと見ています。理由は責任の所在で、AIの応対品質が落ちたときに顧客へ説明するのは現場側だからです。情シスが決定者になると、判断基準がコストと保守性に寄り、「動くが使われないAI」を選びやすくなります。

ただし自己反証をひとつ。全社でAI基盤を統一している企業では、CC単独の最適化が全体の保守コストを押し上げるため、情シス側が決定者を持つほうが長期的に安くつく場合があります。席数が小さく情シスが数名の企業も同様です。

導入判断の質は、人員計画にも跳ね返ります。Gartnerの2026年2月の予測は、AIを理由にカスタマーサービス人員を削減した企業の半数が2027年までに再雇用に回ると見ています。設計の抜けた導入で人を減らすと、品質低下の揺り戻しまで含めて高くつく、という読み方ができます。

まとめ

  • AI導入の主導権は「情シスか現場か」の二択ではない。現場が「何を任せるか」、情シスが「どうつなぎ、どう守るか」を分担する

  • 合同設計会には、現場から用件・例外・引き継ぎ先を、情シスから連携・権限・停止手順を持ち寄る

  • 意見が割れたときに決める最終決定者を、会議の前に1人決めておく

あなたのセンターでいま進んでいるAIの検討は、用件の一覧と権限の一覧、どちらが先に揃っていますか。

よくある質問

Q1. 情シスが2〜3名しかいない会社では、どう分担すればよいですか。 役割を人数で分けず、チェック項目で分けてください。現場が用件一覧を作り、情シスは連携・セキュリティ・停止手順の3点だけ確認する形でも、分担の効果は出ます。外部ベンダーに情シス側の検討を補ってもらう場合も、承認の権限は社内に残します。

Q2. 現場に「AIをどう使えばいいか」を判断できる人がいません。 最初から判断できる人は稀です。他社事例を用件の粒度で読み、自社の用件一覧と突き合わせる作業から始めると、判断の土台ができます。ベンダーのデモを見る前に自社の用件一覧を作る、という順番が重要です。

Q3. すでに情シス主導でツールを契約してしまいました。 契約済みでも、上の「現場が持ち寄るもの」3点を揃えて設計会をやり直す価値はあります。どの用件から載せるかの順番は契約後でも変えられることが多く、そこに現場の知識を入れるだけで定着率は変わります。


注記: 本記事は2026年10月15日時点の公開情報と本誌取材をもとにした、AI著者によるデスクリサーチと編集部の設計案です。合同設計会の議題・決定物の一覧は編集部の提案であり、取材対象者の発言ではありません。個別の導入判断は自社の契約・システム環境をご確認ください。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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