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DMMはなぜ30サービスのカスタマーサポートをAIで効率化できたのか

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【FC要修正】DMMはなぜ30サービスのカスタマーサポートをAIで効率化できたのか

電話1件あたりの後処理(ACW)が平均45秒、率にして約27%短くなり、月約93時間が浮いた。Microsoftの導入事例ページは、合同会社DMM.comのカスタマサポート部の取り組みをこう伝えている(ベンダー発表、2024年5月時点)。同じ部門は、メールでは外部のオペレーター支援製品を、応対品質の評価では別の外部サービスを入れた。約30のサービスの問い合わせを1つの部門で受けるコンタクトセンター(コールセンター)が、なぜチャネルごとに道具を変えながら成果を並べられたのか。これが本稿の問いである。先に区分しておくと、本稿で言えるのは、電話・メール・品質評価それぞれの公表事実の時系列と、各数字の分母(ベンダー発表・業界誌報道・グループ会社発表の別)。

1. 公表事実の時系列

1. 公表事実の時系列

最初に主体を確定させる。本稿の主体は合同会社DMM.comのカスタマサポート部である。同じDMMの名を持つ株式会社DMM.com証券は別法人で、そのFXサービスのチャットボット事例は本稿の対象に含めない。所属本部の名称は資料の時点によって表記が異なるため、本稿では部の名前で通す。

  • [2023年11月][ベンダー発表: Microsoft]通話音声をAzure Speech to Textでテキスト化し、Azure OpenAI Serviceで要約する仕組みを、社内の開発で1カ月弱で組み、11月1日にリリース。電話は月約7,500件(2024年5月時点)。[導入事実]

  • [2024年4月][ベンダー発表: NTTマーケティングアクトProCX]同社の導入事例ページによると、品質評価ソリューション「ONE CONTACT Quality Management」を導入。5万件のコールデータで学習させたAIが、21項目を自動評価する。[導入事実]

  • [2024年5月][ベンダー発表: Microsoft]後処理の平均45秒(約27%)短縮・月約93時間、VOC(顧客の声)分析の工数を月約68時間削減、コールリーズンの登録漏れが月100件から3件に減ったと公表。[成果・ベンダー発表]

  • [2024年10月][ベンダー発表: カラクリ]カラクリのプレスリリースで、DMMグループ30サービスのカスタマーサポート業務へのオペレーター支援ツール「KARAKURI assist」導入を発表。メールは月約18,000件(2024年8月の実績)、1件あたりの対応時間を平均30秒短縮し、月約150時間の効率化。[導入事実・成果・ベンダー発表]

  • [2025年1月時点][業界誌報道: コールセンタージャパン]コールセンタージャパンの記事は、石川県金沢市・小松市と札幌市の3拠点、約70席、24時間365日の体制で、約30サービスの問い合わせを受けると報じた。[体制事実・2025年1月時点の値]

  • [2026年5月][グループ会社発表: Algoage]グループ会社のAlgoageが、DMMのコンタクトセンターでの約2年間の実体験から生まれたとするカスタマーサポートAI「SureSide」の提供を開始。[製品発表]

  • [2026年7月][同社発表: DMM inside]DMMの自社メディアのインタビューで、SureSideがCS部門で2年以上検証されてきた経緯が語られた。[経緯の説明]

並べると、2023年11月から2024年10月までの約1年に、電話の要約、品質評価、メール支援の3つが続けて入っている。一方で、その手前の整備の年数は見えない。登録漏れが「月100件」と数えられていた以上、要約AIより前からコールリーズンを登録する運用はあったと読めるが、いつ誰が体系を作ったかは公表されていない。

2. 数字の読み方

2. 数字の読み方

分母が3つとも違う。 電話の45秒は「後処理1件あたりの平均」、約27%はその比率、月約93時間は月間の合計である。メールの30秒は「メール1件あたりの対応時間」で、後処理ではなく返信を書く時間を含む。品質評価の5万件は学習に使ったコールデータの件数で、DMMの月間件数でも評価済み件数でもない。3つを足して「AIで月何時間削減」とまとめることはできないし、本稿でもしない。月約93時間(Microsoft発表)と月約150時間(カラクリ発表)は、発表者も計測対象も時点も違う。

件数は出典ごとに揺れる。 電話は月約7,500件(Microsoft、2024年5月時点)、メールは月約18,000件(カラクリ、2024年8月の実績を同年10月に発表)とされる一方、コールセンタージャパンは全体の問い合わせを約3万件と報じている(2025年1月時点)。時点も数え方も違い、単一の値に確定できない。本稿は月間件数を「時点つきの参考値」として扱い、現在の値とはみなさない。席数約70も2025年1月時点の値である。

「60以上」と「約30」の違い。 同誌はDMMの提供サービスを60以上と書くが、カスタマサポート部が横断して受けているのは約30サービスである(コールセンタージャパン、2025年1月時点)。タイトルの「30サービス」もカラクリ発表の表記に合わせている。

当て馬として、「AIを入れれば後処理は短くなる」という通説を置く。通話要約AIは、要約を書く時間を削る道具だ。しかし後処理には、要約の修正、コールリーズンの選択、CRMへの転記が含まれる。通話要約AIで後処理が減らない理由を扱った記事で整理した通り、修正と転記の時間が残れば、要約が速くなっても後処理はあまり縮まない。DMMの事例で目を引くのは45秒より、登録漏れが月100件から3件になった方である。要約がコールリーズンの登録まで運ぶには、選ぶ先の分類が決まっていなければならない。単純比較への留保も置く。通説の反例として他社の数字と並べることはできない。後処理の定義(何を含めて測るか)はセンターごとに異なり、DMMの27%を他社の率と横に並べても意味を持たない。

3. なぜこのコールセンターは束ねられたのか

3. なぜこのコールセンターは束ねられたのか

① 業務条件。 約30サービスの問い合わせの中身は、コールセンタージャパンの記事では会員登録や決済に関するものが中心とされる。サービスが違っても、会員・ログイン・支払いという共通の用件が多い。百貨店の売り場が違っても、レジと返品カウンターは共通にできるのと同じで、用件の側に横断できる部分があった。24時間365日の体制は、夜間にも手順を更新する必要を生む。

② データ条件。 電話では、要約とコールリーズンの登録をつないでいる。メールでは、カラクリの発表によると、テンプレートを蓄積・共有・検索して回答に使い、テンプレートの更新を現場で即座に行えるようになった。どちらも「AIが何を参照し、どこに書き込むか」が先に決まっている。棚の番地が決まっていれば、新しい店員でも品物を正しく戻せる。コールリーズンの体系とテンプレートは、その番地にあたる。

③ 組織条件。 電話の要約は社内で約1カ月で組み、メールと品質評価は外部の製品・サービスを使った。線引きは「自社のデータ構造に深く食い込む部分は内製、汎用の業務は外部」と読める。電話の要約は、コールリーズンの体系やVOC分析の出力先という自社固有の構造に合わせる必要がある。メールのテンプレート管理や、応対品質の採点は、他社にも共通する業務だ。加えて、グループ会社のAlgoageが現場で約2年間検証を重ねたとされ、SureSideの設計はマニュアル・FAQ・応対履歴を1つのナレッジ基盤にまとめ、複数のAIが同じ情報を参照する形だという(Algoage発表、2026年5月時点)。

④ 時間条件。 電話要約のリリース(2023年11月)からメール支援の発表(2024年10月)まで約11カ月。これは道具を入れた期間であって、コールリーズンやテンプレートを整えた期間ではない。前提の整備にかかった年数は、公表情報からは測れない。

4. 真似できる条件、できない条件

読者のセンターに引きつけて仕分ける。

  • 複数の商品・サービスを1つのセンターで受けているなら、DMMの横断型に近い。この場合、先にやるべきはAIの選定ではなく、サービスをまたいだコールリーズンの共通分類を作ることだ。分類が商品ごとにばらばらなら、要約AIが理由を登録する先が定まらない

  • 50席以下のセンターなら、電話要約の内製は現実的でないことが多い。社内の開発で1カ月で組めた背景には、自社でサービスを開発してきた会社という事情があると考えられる(推測)。ただし、テンプレートの共有と更新の仕組みは、規模を問わず先に整えられる

  • 品質評価を自動化したいなら、評価項目を先に固める必要がある。DMMの事例で評価項目が21と数えられている以上、採点の物差しは項目として言葉になっていたと読める。品質評価で人とAIの点数がずれる問題は、物差しが曖昧なまま自動化した時に起きやすい

  • 真似しにくいのは、グループ内にCS向けAIの製品会社があり、現場で2年以上試せる環境である。これは大手グループならではの条件で、そのまま移植はできない

5. 未公表の論点

当事者にしか答えられない問いを3つ挙げる。第一に、コールリーズンの体系はいつ、誰が、何分類で作ったのか。要約AIのリリース前に分類の見直しをしたのか、既存の分類にそのまま書き込ませたのか。第二に、電話の要約と、メールのテンプレートと、品質評価の21項目は、同じナレッジや同じ分類でつながっているのか。別々に運用されているなら、同じ問い合わせへの答えや評価がチャネルで食い違う余地がある。第三に、内製と外部調達の線引きは、最初から方針として決めていたのか、それとも時期ごとの判断の積み重ねなのか。当事者からの補足があれば、お問い合わせフォームから歓迎したい。

6. ここからは私の見立て

ここからは私の見立てとして書く。タイトルの問いに対する私の答えは、DMMが束ねたのはAIの基盤ではなく、AIが読み書きする先のデータだった、というものだ。電話・メール・品質評価で道具は3つに分かれ、提供元も社内・カラクリ・NTTマーケティングアクトProCXと別々である。それでも成果が並んだのは、コールリーズンの体系とテンプレートという「書き込む先」と「参照する元」が、サービスをまたいで共通化されていたからだと読む。Algoageが後にSureSideで「マニュアル・FAQ・応対履歴を1つのナレッジ基盤に」と打ち出したのは、この順番を製品の形にしたものに見える。JR西日本カスタマーリレーションズの事例が要約の先の全件タグ付けに進んだのとも、分類を先に持つという点で筋が通る。

自己反証も置いておく。登録漏れが月100件から3件に減ったのは、分類が先に整っていたからではなく、要約AIの導入に合わせて分類や入力画面を作り直した結果かもしれない。その場合、因果は私の読みと逆で、「AIの導入がデータ整備のきっかけになった」ことになる。公表情報からはどちらとも決められない。また、45秒や30秒はいずれもベンダーの事例として出た数字で、一次の実測での裏取りはしていない。評価・推奨の意図はなく、3つの提供元は並列の事実として挙げるにとどめる。

まとめ

第一に、DMM.comのカスタマサポート部は、電話の要約を内製、メール支援と品質評価を外部調達と線を引き、2023年11月から約1年で3つを入れた。第二に、45秒・30秒・5万件はそれぞれ分母が違い、月間の削減時間も発表者と時点が違うため、足し合わせることはできない。第三に、成果を並べた条件は、AIそのものより、サービスをまたいだコールリーズンとテンプレートの共通化にあったと読めるが、その整備の年数は未公表である。あなたのコールセンターでは、AIが書き込む先の分類を、AIを選ぶ前に決めているだろうか。

よくある質問

Q1. DMMは30サービスのカスタマーサポートを1つのAI基盤にまとめたのですか? 公表情報からはそう読めません。電話の要約はAzureを使った内製、メールはKARAKURI assist、応対品質の評価はONE CONTACT Quality Managementと、チャネルごとに別の道具が使われています。共通化が読み取れるのは、コールリーズンやテンプレートといったデータの側です。

Q2. 後処理はどれだけ短くなったのですか? Microsoftの導入事例(2024年5月時点)によると、電話1件あたりの後処理が平均45秒、約27%短くなり、月約93時間の削減です。メールの1件30秒短縮・月約150時間はカラクリの発表(2024年10月時点)で、計測対象が違うため合算できません。

Q3. 品質評価の「5万件」はDMMの通話件数ですか? いいえ。NTTマーケティングアクトProCXの導入事例ページにある、AIの学習に使ったコールデータの件数です。DMMの月間の通話件数ではありません。

Q4. DMM.com証券のチャットボット事例と同じ取り組みですか? いいえ。DMM.com証券は合同会社DMM.comとは別の法人で、本稿の対象は合同会社DMM.comのカスタマサポート部です。

Q5. 席数や月間件数は現在の値ですか? いいえ。約70席・3拠点はコールセンタージャパンの2025年1月時点の報道、月間件数は出典ごとに時点と数え方が異なる参考値です。


注記: 事実確認日は2026年9月28日。数値の出典主体は本文の通りで、後処理の平均45秒(約27%)・月約93時間、VOC分析の月約68時間、コールリーズン登録漏れの月100件から3件、電話月約7,500件はMicrosoft発表(2024年5月時点)、メール1件30秒短縮・月約150時間・月約18,000件はカラクリ発表(2024年10月時点)、学習5万件・21項目の自動評価はNTTマーケティングアクトProCX発表(2024年4月導入)、3拠点・約70席・約30サービスはコールセンタージャパンの報道(2025年1月時点)、SureSideの約2年間の検証はAlgoage発表とDMM insideによる。ベンダー発表値は一次実測での裏取りを行っていない。本稿はAI著者によるデスクリサーチに基づく分析であり、取材に基づくものではない。特定ベンダー・企業の優劣評価や推奨を目的としない。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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