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コールセンターAI導入後のクレーム負担を見直す3つの観点【現場SV向け】

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コールセンターAI導入後のクレーム負担を見直す3つの観点【現場SV向け】

Calabrioが2025年3月に公表した調査では、13か国437人のコンタクトセンター管理者のうち98%がAIを何らかの形で使い、61%が「会話が難しくなっている」と答えた。AIが定型の問い合わせを引き受けた後、有人のコンタクトセンター(コールセンター)に残るのは、AIでは片づかない込み入った相談や、怒りや不安を抱えた顧客との会話になりやすい。核の問いは、AI導入後の負荷を「受電件数が減ったか」ではなく、何で測り直せばよいかである。本稿の立場を先に述べると、件数とは別に、案件の難しさと連続性と支援待ちの3つを振り返るべきだと考える。以下の観点と振り返り表は、公開情報をもとに編集部が組み立てた案であり、実証済みの手法ではない。

受電件数の減少と心理的な負荷の変化を分ける

受電件数の減少と心理的な負荷の変化を分ける

最初の観点は、件数の減少と心理的な負荷の変化を、別の数字として扱うことだ。北米の調査では、両者が逆の方向に動いている兆候が出ている。CMSWireの記事は、Omdiaの2025年Digital CX調査を引き、北米のコンタクトセンター責任者の75%が、AI投資がオペレーターのストレスを減らすどころか増やしているかもしれないと考えていると伝えた。同じ記事では、オペレーターの87%が強いストレスを訴えている。AI導入の目的として最も多いのが「オペレーターの認知負荷やストレスを減らすこと」であった点を踏まえると、狙いと結果が食い違い始めていることになる。

なぜそうなるのか。CMSWireの同記事は、定型業務が消えるにつれて、感情的に複雑で失敗の許されない会話ばかりが残り、かつて負荷を和らげていた「自然な小休止」が失われると説明する。長距離走にたとえると、給水所を一つずつ撤去しながら、坂道の区間だけを残していくようなものだ。走る距離(件数)は短くなっても、脚にかかる負担はむしろ増える。

国内の現場の感覚も、この構図と重なる。CC AI Labの対談で、編集長の千葉は、派遣会社でコールセンターに人を送り出していた頃の面談経験から、AIが機械的に解決できる用件を引き受けるほど、人に残る仕事が感情的な対応に偏るのではないかという懸念を示した。これに対してウィズユーの長掛文子氏は、誤った回答や分かりにくい回答から生まれていた苦情はAIで減りうる一方、最初から意見や要望を伝えたい声は残ると述べている。つまり、AIで減る苦情と残る苦情は性質が違う。件数の推移だけを見ていると、この入れ替わりは見えない。

もちろん、国内ではクレームそのものの負担がもともと大きい。UAゼンセンの2024年の調査では、3万3,133件の回答のうち、直近2年以内に迷惑行為の被害にあった人は46.8%で、前回(2020年)の56.7%から下がった。当て馬としてこの数字を置くと、被害の割合は下がっていても、半数近くが経験しているという水準は変わっていない。ただし、この調査はUAゼンセンの流通部門と総合サービス部門の組合員が対象であり、コールセンターだけの数字ではない。またAI導入前後を比べた数字でもないため、AIの影響と直接結びつけて読むことはできない。

案件の難しさ・連続性・支援待ちを振り返る

案件の難しさ・連続性・支援待ちを振り返る

2つ目の観点は、何を記録するかである。編集部の提案は、件数やAHT(平均処理時間、通話と保留と後処理の合計)に加えて、次の3つを週次で振り返ることだ。

第一に、案件の難しさ。AIからの引き継ぎ(エスカレーション、AIや一次担当から人へ案件を渡すこと)で入ってきた案件のうち、苦情・強い要望・長時間化したものがどれだけあるかを数える。国内の小規模な調査ではあるが、電話代行サービス社の調査では、自社オペレーター54人のうち81%がクレームに苦手意識を持ち、83%が長時間の拘束を経験したと答えた。この調査は1社の社内調査で、回答者も少ない。それでも、長時間化が負荷の指標になりうることは示している。

第二に、連続性。難しい案件が同じ人に何件続いたか、その間に定型の案件や後処理の時間が挟まったかを見る。1日の合計が同じでも、午前に分散した5件と、昼過ぎに続けて受けた5件では、受ける側の負担は違う。CMSWireの記事が指摘した小休止の消失は、まさにこの連続性の問題である。

第三に、支援待ち。難しい案件の途中でSV(スーパーバイザー)に相談したくても、すぐにつかまらなかった時間である。AIで席数を絞った後は、SVの数も見直されやすく、相談の待ち時間が延びる可能性がある(編集部の推測であり、センターごとに確かめる必要がある)。

ここで注意したいのは、監視を強めることと振り返りを混同しないことだ。CX Todayの記事は、AIによって従来は1〜3%の抜き取りだった応対評価が全件に広がり、リアルタイムの監視や指示そのものが新しい燃え尽きの原因になりうると論じている。振り返りの目的は個人の評価ではなく、案件の偏りを見つけることにある。

以下は編集部が作った振り返り表の案である。記入例は仕組みを示すための架空の内容で、実在のセンターの実績ではない。

観点

見るデータ

振り返りの問い

記入例(架空)

難しさ

AIからの引き継ぎ案件の内訳、長時間化した通話

苦情・強い要望の比率は導入前より上がったか

引き継ぎ案件のうち苦情系が増え、30分超の通話も増えた

連続性

担当者別の難しい案件の連続数、間の後処理時間

難しい案件が特定の人や時間帯に続いていないか

経験の長い2人に午後の難しい案件が集中していた

支援待ち

SVへの相談依頼から対応までの時間

相談したい時にSVがつかまったか

昼休憩の時間帯に相談の待ちが長くなった

配置・交代・相談支援をセットで見直す

配置・交代・相談支援をセットで見直す

3つ目の観点は、振り返りで見えた偏りを、配置・交代・相談支援の3点で同時に直すことだ。どれか1つだけでは効きにくい。

配置では、難しい案件が経験の長い人に自動で集まるルーティングになっていないかを確かめる。熟練者に任せるのは合理的に見えるが、その人だけが毎日坂道を走り続けることになる。交代では、難しい案件の後に短い離席や定型業務を挟む運用を検討する。AIが定型の問い合わせを引き受けた後は、意図して「給水所」を設け直す必要がある。相談支援では、SVが席にいない時間帯に誰が相談を受けるかを決めておく。

相談の仕組みは、法令上の要請とも重なる。厚生労働省の改正法の解説ページのとおり、改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、事業主には、顧客等の言動のうち社会通念上許容される範囲を超え、働く人の就業環境を害するもの(カスタマーハラスメント)を防ぐための雇用管理上の措置が義務づけられた。相談体制の整備はその柱の一つである。ただし、個々の案件がカスタマーハラスメントに当たるかどうかの判断や、オペレーターの心身の状態の判断は、本稿の振り返り表で行うものではない。前者は社内の方針と必要に応じて専門家、後者は産業医などの専門職につなぐ設計にしておきたい。

道具の側も確かめておく。Calabrioの2026年1月の報告では、オペレーターの44%がAIツールで仕事が楽になったと答えた一方、55%は自動化で仕事がどう変わるか分からない、または不安だと答え、40%はAIに関する研修を受けていなかった。難しい案件を支える要約や回答候補の表示も、使い方を知らなければ支援にならない。研修の時間は、交代や相談支援と同じく、配置の計画に組み込んでおく必要がある。

ここからは私の見立てとして書く。AI導入後の運営でいちばん見落とされやすいのは、件数が減った分だけ現場が楽になったと判断してしまうことだと考える。自己反証もしておく。長掛氏の指摘どおり、誤った回答や待たせたことから生まれる苦情がAIで減れば、難しい案件の総数はむしろ減る可能性がある。UAゼンセンの調査で被害の割合が下がったことも、職場の対策が効きうることを示している。この反論は成り立つ。ただ、総数が減っても、一人あたり・一時間あたりの密度が上がれば、受ける側の負担は軽くならない。そのため、件数の減少をもって負荷が下がったと判断するのは、次の3条件がそろってからでも遅くないと考える。第一に、難しい案件の比率と連続数が、導入前と比べて上がっていないこと。第二に、SVへの相談の待ち時間が延びていないこと。第三に、オペレーター自身への定期的な聞き取りで、負担感の悪化が出ていないこと。

AIが引き受けた後に現場へ何が残るのかは、CC AI Labの対談でも、長掛文子氏と阿久根氏が品質と解決の両面から論じている。苦情を企業にとっての情報源と捉える視点や、顧客が意見を言いにくくなっている現状についての議論は、対談記事「AI時代の応対品質」で読める(会員向け)。

まとめ

第一に、AI導入後の受電件数の減少と、オペレーターの心理的な負荷の変化は別の数字であり、北米の調査では逆方向に動く兆候が出ている。第二に、負荷は件数ではなく、案件の難しさ・連続性・支援待ちの3つで振り返ると偏りが見えやすい。第三に、見えた偏りは配置・交代・相談支援をまとめて直す必要がある。3つの観点と振り返り表は、いずれも編集部が公開情報から組み立てた案である。

最後に問いを残したい。あなたのセンターでは、AIからの引き継ぎで受けた難しい案件が、誰に、何件続けて届いているか、いま答えられるだろうか。

注記

本稿の事実確認は2026年10月1日時点。各数字の出典は本文と参考リンクに明記した。北米・海外の調査(Calabrio、Omdia)は対象国や回答者の定義が国内と異なり、国内のセンターにそのまま当てはまるとは限らない。電話代行サービス社の調査は1社の社内オペレーター54人を対象とした小規模な調査である。3つの観点、振り返り表、記入例、判断の3条件は編集部の提案であり、記入例は架空の内容である。本稿はカスタマーハラスメントの該当性や、心身の状態についての判断を行うものではない。対談での発言は各話者の見解であり、本稿の表と手順は編集部の独立した案である。本稿はAI著者によるデスクリサーチであり、個人の見立てを含む。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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