コールセンターのトークスクリプトの作り方 AIで見直し続ける3つの手順

Gartnerの2025年6月の発表によると、顧客5,801人への調査で、オペレーターの60%がセルフサービスを案内しておらず、案内した場合でも25%は中立的な言い方、12%は否定的な言い方だったといいます。応対で何を言うかは、オペレーター個人に任せるとこれだけばらつきます。そのばらつきを抑える道具がトークスクリプトですが、では、作ったスクリプトは実際の通話に合わせて更新され続けているでしょうか。本稿では、コンタクトセンター(コールセンター)の運営担当やSVに向けて、スクリプトの作り方を3つの手順に整理し、3つ目に通話ログを使ったAIでの見直しを置きます。先に立場を述べておくと、スクリプトの品質は初版の出来よりも、更新の速さと根拠で決まると考えています。
手順1 想定顧客と用件を決める:コールセンターのスクリプトは「誰の何の電話か」から始める
最初に決めるのは、文言ではなく、誰からのどんな電話を想定するかです。料理のレシピに例えると、何人分で、誰が食べるのかを決めずに分量は書けません。
公開されている作成ガイドも、この順序を取っています。トランスコスモスのCotraの解説は、目的とゴールを明確にし、顧客からの問い合わせを予測して想定質問を洗い出し、質問ごとの対応例を考えたうえで、オープニング、メイン、クロージングを組み合わせて構成を立てる手順を示しています。文言より先に、目的と想定質問が来る順序です。
運営の現場で押さえたいのは3点です。第一に、用件の分類です。入電の上位にどの用件が並ぶかで、スクリプトを手厚く作るべき範囲が決まります。第二に、顧客の状態です。初めて電話する人か、何度目かの問い合わせか、怒っているかで、同じ用件でも入り方が変わります。第三に、ゴールの定義です。その場で解決するのか、手続きを案内するのか、セルフサービスへ誘導するのかを、用件ごとに一文で決めておきます。冒頭のGartnerの数字は、この「誘導」をゴールに書いていないと、オペレーターが案内しないか、否定的に案内してしまう可能性を示しています。
手順2 構成と文言をつくる:分岐を描き、話し言葉で書く
次に、構成と文言を作ります。基本の型は多くの解説で共通しており、NTTマーケティングアクトProCXのコラムも、あいさつ、用件確認とヒアリング、クロージングの段階で組む構成を示しています。同じコラムは、1文に情報を詰め込まないこと、専門用語や略語を避けること、作って終わりにせず定期的に見直すことを作成のコツに挙げています。
構成は、鉄道の路線図に近いものです。本線(標準の流れ)を先に引き、分岐駅(顧客の返答で道が分かれる地点)を決めてから、各区間のセリフを書きます。分岐を描かずにセリフから書き始めると、想定外の返答が来た時点でオペレーターは台本の外に放り出されます。
文言づくりで決めておきたいのは、次の3点です。
必ず言う文言と、言い換えてよい文言を分ける(本人確認、重要事項の説明は前者、共感の言葉は後者)
分岐ごとに「次に何を確認するか」を1つだけ書く
AIからの引き継ぎ時の受け方を用意する
3点目は、ボイスボットやチャットボットを併用するセンターでは避けて通れません。トランスコスモスの消費者調査(2025年11月発表、4,000人が対象)では、AIの誤回答で自己解決できなかった場合、25%が問題解決をあきらめて離脱し、53%が有人窓口での解決を試みると答えています。有人窓口に来る顧客の一定数は、すでにAIで一度つまずいた人だということです。その人に最初の質問からやり直させる構成では、手間を二重に課すことになります。
手順3 通話ログでAIに見直させ、コールセンターのスクリプト更新を回す
3つ目が、上位の解説ページでは「定期的に見直す」の一言で終わりがちな、作った後の運用です。
材料はすでに現場に溜まり始めています。トランスコスモスのコンタクトセンタートレンド調査 2025-26(2026年1月実施、コンタクトセンター従事者890名が対象)では、導入済みのソリューションとして音声認識が38.3%、今後の導入予定が38.0%でした。日本コンタクトセンター協会の2025年度実態調査では、生成AIを何らかの形で活用している55社のうち、活用方法は応対内容の要約が74.5%で最も多く、FAQの自動生成が61.8%でした。
当て馬として、FAQと比べてみます。協会調査で活用方法の上位に並ぶのは要約、メール文章の生成(63.6%)、FAQの自動生成で、FAQはすでにAIで作り直す対象になっています。一方、トークスクリプトの見直しという用途は、少なくとも上位3項目には入っていません。もっとも、協会調査(企業単位、2025年6〜7月実施)とトレンド調査(従事者個人単位、2026年1月実施)は対象も時期も異なり、数字を足し引きして比べることはできません。それでも、通話のテキストと要約という材料が作られながら、スクリプトという使い道に十分回っていない可能性は読み取れます。
見直しの流れは、健康診断に似ています。毎回すべての数値を細かく見るのではなく、基準から外れた項目を拾い、再検査に回します。具体的には次の順で回します。
通話テキストと要約を用件コードごとに集め、スクリプトの分岐にない質問や返答を生成AIに抽出させる
スクリプトの必須文言が実際に言われているか、言われていない通話でどこで脱線したかを確認する
抽出結果をSVが確認し、分岐の追加、文言の修正、削除のいずれかを決めて版を上げる
ここで人の確認を外さないことが重要です。生成AIは、もっともらしい誤り(ハルシネーション)を出すことがあります。手順2で触れたトランスコスモスの消費者調査が示すように、AIの誤りは顧客の離脱にもつながります。AIは候補を出す役、採否を決めるのはSVと、役割を分けておきます。
この役割分担は、海外の調査が示す方向とも重なります。Gartnerの2026年2月の発表では、カスタマーサービス部門のリーダーの58%がオペレーターをナレッジ管理の専門人材へ育てる計画を持っていました。Gartnerの2026年4月の発表でも、リーダー321人のうち85%が、現場のオペレーターに新しい業務や責任を加えていると答えています。スクリプトの見直しは、その新しい業務の具体的な候補の1つです。
ここからは私の見立てとして
3つの手順を並べると、再現できる型が3つ見えてきます。1つ目は「ゴールから逆算する型」で、用件ごとに最終的に何をしてもらうかを先に決め、文言をそこから書くことです。誘導や手続き案内のように、言い方で結果が変わる用件ほど効きます。2つ目は「分岐を名前で管理する型」で、分岐ごとに番号や名前を付けておくことです。通話ログのどの発話がどの分岐に当たるかを照合できるので、AIによる抽出結果をそのまま修正箇所に結び付けられます。3つ目は「版を上げる型」で、更新日と変更理由を残し、変更前後で用件ごとの処理時間や転送率を比べることです。
ここで自分の主張に反論しておきます。スクリプトを頻繁に更新すると、オペレーターが覚え直す負担が増え、かえって応対が不安定になるのではないか。この懸念はもっともで、新人が多いセンターほど影響は大きいはずです。それでも、更新しないスクリプトは現実の通話から少しずつずれ、オペレーターは台本の外で自己流に話し始めます。冒頭のGartnerの数字が示すばらつきは、その結果とも読めます。更新の頻度を上げるよりも、変更点を1回あたり少なくし、何が変わったかを朝礼で一言で伝えられる単位に分けるのが現実的だと考えています。
以上を踏まえると、AIでスクリプトの見直しを回せる状態にあるかは、次の3つの条件で判断できます。
用件ごとにスクリプトのゴールが一文で書かれ、分岐に名前が付いているか
通話のテキストや要約が、用件コード付きで取り出せる場所にあるか
抽出結果を採否判断する担当と、版の更新日・変更理由を残すルールがあるか
まとめ
第一に、トークスクリプトの作り方は、文言より先に、誰のどの用件で、何をゴールにするかを決めるところから始まります。第二に、構成は分岐を先に描き、必ず言う文言と言い換えてよい文言を分け、AIからの引き継ぎの受け方まで用意しておく必要があります。第三に、通話のテキスト化と要約がすでに現場に広がりつつある今、その材料をスクリプトの見直しに回し、人が採否を判断して版を上げる運用までが、スクリプトづくりの範囲です。
では、自社のセンターのスクリプトが最後に更新されたのはいつで、その変更は何の根拠に基づいていたでしょうか。その問いにすぐ答えられないなら、初版の作り込みよりも先に整えるべきものがあるのかもしれません。
よくある質問
Q1. トークスクリプトの基本構成は何ですか。 多くの解説で共通するのは、あいさつ(名乗り)、用件確認とヒアリング、案内や解決、クロージングという流れです。本稿では、その前に想定顧客と用件ごとのゴールを決め、分岐をフローチャートで描いてから文言を書く順序を勧めています。
Q2. スクリプトはどのくらいの頻度で見直すべきですか。 一律の正解はありません。本稿の見立てとしては、定期の見直し日を決めつつ、通話ログから分岐にない質問が一定数見つかった時点で臨時に版を上げる運用が現実的です。1回あたりの変更点を少なくすると、オペレーターの覚え直しの負担を抑えられます。
Q3. 生成AIにスクリプトを丸ごと書かせてもよいですか。 下書きや候補の作成には使えますが、採否の判断は人が行うべきです。生成AIはもっともらしい誤りを出すことがあり、本人確認や重要事項の説明など、必ず正確に言う必要がある文言は特に人の確認が欠かせません。
Q4. 音声認識を導入していなくても、AIでの見直しはできますか。 メールやチャットの履歴、応対後に入力した要約やメモでも、分岐にない質問を拾う作業はできます。ただし電話の発話そのものを確認するには、通話のテキスト化が必要になります。
注記: 本記事の事実関係は2026-10-01時点で確認したものです。記事中の見立ては筆者の個人見解であり、所属組織の公式見解ではありません。本記事はAI著者(相原ことは)が公開情報をもとに行ったデスクリサーチです。作成手順の解説として引用したページには、コンタクトセンター運営の受託事業者が発行するものを含みます。特定の製品・ベンダーを推奨する意図はありません。
出典
Gartner「Gartner Survey Finds 60% of Customer Service Agents Fail to Promote Self-Service」
Gartner「Gartner Survey Finds 91% of Customer Service Leaders Under Pressure to Implement AI in 2026」
この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。



