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コールセンターの自動化はどこまでできるか 業務ごとの向き不向き

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【FC要修正】コールセンターの自動化はどこまでできるか 業務ごとの向き不向き

Gartnerの2029年予測は、自律的に動くAI(エージェント型AI)が2029年までに一般的な顧客サービスの問題の80%を人の介在なしに解決し、運用コストを30%下げると見込んでいる。一方で、Gartnerが2024年8月に公表した顧客調査(2023年12月実施)とそれを伝えたCX Todayの報道では、セルフサービスだけで完全に解決した問い合わせは14%にとどまっていた。80%と14%のあいだにあるのは、技術の進歩を待てば埋まる距離なのか。「コールセンター 自動化」で調べる読者が知りたいのは、自社のどの業務がその距離のどちら側にあるかだろう。本稿の立場は、自動化の可否はツールの性能より業務の性質で先に決まる、というものである。以下は業務単位の整理であり、特定製品の推奨ではない。

1. コールセンター自動化の期待と実測のあいだ

1. コールセンター自動化の期待と実測のあいだ

期待の側から見る。Gartnerの予測は「一般的な問題」に対象を絞ったうえでの80%であり、すべての問い合わせを指してはいない。この限定を外して読むと、数字はたちまち過大になる。

実測の側では、利用者の受け止めが壁になっている。Gartnerの顧客調査(2023年12月、顧客5,728人。先の14%と同じ調査で、2024年7月に公表)では、64%が顧客サービスにAIを使わないでほしいと答え、53%はAIを使うと知ったら競合への乗り換えを検討すると答えた。最大の懸念は「人につながりにくくなること」だった。同じ発表で、顧客サービス部門の責任者の60%がAI導入の圧力を受けているとされる。経営からは「入れろ」、顧客からは「使うな」と言われる板挟みである。

当て馬として、オペレーターの側を置く。McKinseyの生成AIの経済効果の分析(2023年6月)は、5,000人のカスタマーサービス担当者を抱える企業で、生成AIの支援により1時間あたりの問題解決数が14%増え、1件の処理時間が9%減ったと紹介している。同じ分析は、顧客対応業務に生成AIを適用した場合の生産性向上を、現在の機能コストの30〜45%に相当すると試算した。顧客が直接AIと話す領域では14%と64%という慎重な数字が並び、オペレーターの裏側を支える領域では着実な改善が報告されている。

もっとも、単純比較には留保が要る。これらは調査対象も時期も異なり、McKinseyの事例は1社の実績である。言えるのは、同じ「コールセンターの自動化」という言葉の中に、進み方の違う複数の仕事が混ざっている、というところまでだ。

2. なぜ業務によって自動化の進み方が違うのか

駅の改札にたとえると分かりやすい。自動改札は、切符が有効かどうかという判定の幅が狭く、誤りがあってもその場で係員に回せるから普及した。一方、乗り越し精算の相談や遺失物の問い合わせは、いまも窓口の駅員が受けている。技術的に機械化できないからではなく、判定の幅が広く、誤ったときに困るのが乗客本人だからである。

コールセンターも同じ構造をしている。顧客と直接話す「前線」の業務は、誤りがそのまま顧客に届く。AIが誤った回答をすれば、それは会社の言葉として受け取られ、先の調査にあるように「人につながらない」不満を生む。これに対して、通話後の要約、応対品質の評価、呼量の予測といった「後方」の業務は、AIの出力をいったん人が見てから使える。誤りは社内で止まる。

後方業務の例として品質評価を見ると、McKinseyの品質保証に関する論考は、ほぼ自動化した評価なら90%を超える精度が見込め、手作業の採点(70〜80%)を上回り、評価コストを50%以上削減できると試算している。これはコンサルティング会社の見解であり、条件は各社の環境で確かめる必要がある。それでも、前線の自己解決率14%と比べると、後方業務のほうが自動化の成果を出しやすいという傾向は読み取れる。

3. コールセンターの業務を切り分ける4つの軸

では自社の業務をどう仕分けるか。ここでは編集部の整理として、4つの軸を提案する。各業務をこの4軸に当てはめ、条件のそろった業務から自動化の対象に入れていく。

軸1 誤りが顧客に届くか

AIの出力が人の確認を経ずに顧客へ出る業務は、誤りの損害が大きい。通話要約や品質評価のように社内で止まる業務は、試行錯誤しやすい。ただし社内で止まる業務でも、確認の手間を測らないと効果を見誤る。通話要約とACWの測り方で扱ったとおり、通話後の後処理時間(ACW)は、要約の生成時間だけでなく、確認・修正・転記まで含めて比べる必要がある。

軸2 判断の幅が決まっているか

営業時間や配送状況の案内、住所変更の受付のように、答えや手順が決まっている業務は向く。解約の引き止め、クレームの一次対応、例外的な返金判断のように、状況ごとに裁量が要る業務は向かない。後者を無理に自動化すると、AIが権限外の約束をする危険が生まれる。

軸3 答えの元データがシステムにあるか

FAQに書かれた一般論で答えられる業務と、顧客ごとの契約や注文の状況を見なければ答えられない業務は別物である。後者は、AIを基幹システムにつながない限り「確認して折り返します」で終わり、自己解決にならない。電話の入口を置き換える場合は、IVRをAIに置き換える順番で整理したように、元データにつながる窓口から段階的に移すのが現実的だ。

軸4 結果を検証できるか

自動化した結果が正しかったかを、後から数字で確かめられる業務は改善を回せる。手続きの完了件数や再入電の有無で成否が分かる業務は向く。逆に、顧客の納得のように結果が見えにくい業務は、自動化しても良し悪しを判定できない。品質評価の全件化もこの軸で効き方が変わる点は、応対品質評価の全件化で論じた。

代表的な業務を4軸に当てはめると、おおよそ次のように分かれる。いずれも編集部の目安であり、各社の業務設計によって位置は動く。

  • 向く(4軸がそろいやすい): 営業時間・手続き方法などの定型照会、配送状況や残高の照会(元データにつながっている場合)、住所変更などの定型手続きの受付、通話要約の下書き、品質評価の一次採点、呼量予測の算出

  • 部分的に向く(一部の軸が欠ける): 本人確認を伴う契約内容の照会(軸3の連携次第)、FAQで答えられない問い合わせの振り分け(軸4の検証が難しい)、オペレーターへの回答候補の提示(人が選ぶ前提なら軸1は満たす)

  • 向かない(軸がそろいにくい): クレームの本格対応、解約の引き止め、高額商品の相談、例外的な返金や補償の判断

「部分的に向く」業務が最も多く、ここは「AIが途中まで進め、条件を外れたら人へ渡す」設計になる。そのとき重要なのは、引き継ぎの際に顧客が同じ説明を繰り返さずに済むよう、AIが聞き取った内容を人に渡す仕組みである。Gartnerの調査で顧客が最も懸念していたのが「人につながりにくくなること」だった点を思い出せば、自動化の設計は、人へ渡す出口の設計と一体で考える必要がある。

4. 示唆

ここからは私の見立てとして述べる。国内のコールセンターが自動化の対象を選ぶなら、「顧客に見えない業務から、検証できる業務から」という順序が妥当だと考える。後方業務で運用の型(出力の確認手順、誤りの記録、改善の回し方)を身につけてから前線に広げれば、顧客の64%が抱く不安を現場の失敗で裏づけてしまう事態を避けやすい。

ただし、この順序には反論がある。後方業務をいくら自動化しても、入ってくる電話の件数そのものは減らない。人手不足で応答率が落ちているセンターにとって、要約や品質評価の効率化は即効性に欠け、入口の自動化を先送りする言い訳になりかねない。この反論は正しい面を持つ。だから順序は絶対ではなく、入口の業務でも軸2と軸3を満たす定型照会に限れば、並行して着手してよい。

実務の出発点としては、ツールの比較表より先に、自社の用件を業務単位で棚卸しした一覧を作ることを勧めたい。用件ごとの件数と処理時間を並べ、4軸の当てはまりを記入すれば、「件数は多いが軸3を満たさない」用件のように、自動化の前にデータ連携を整えるべき箇所が見えてくる。ベンダーの提案を受けるのは、その一覧ができてからでも遅くない。

そのうえで、ある業務を自動化の対象に入れる条件を3つに絞る。第一に、誤ったときに人が引き取る経路が決まっていること。第二に、答えの元データにAIがつながっていること。第三に、成否を測る指標が導入前に定義されていることである。

まとめ

第一に、「コールセンターの自動化」は一つの取り組みではなく、進み方の違う業務の集まりであり、期待値と実測値の差はその混在から生まれている。第二に、自動化の向き不向きは、誤りが顧客に届くか、判断の幅、元データの所在、検証のしやすさという業務の性質でおおむね決まる。第三に、顧客に見えない業務から始める順序は安全だが、入口の件数を減らしたいセンターには別の判断が要る。

自社の業務一覧を4つの軸で並べ直したとき、いま自動化を検討している業務は、本当に条件のそろった側にあるだろうか。


※本稿の確認日は2026年9月28日。数値は各出典の公表時点のもので、調査対象・時期が異なるため単純比較はできない。4つの軸と見立ては筆者の個人的な整理であり、特定の製品・ベンダーを推奨するものではない。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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