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コールセンターの立ち上げ手順 開設までに決める5つのこと

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コールセンターの立ち上げ手順 開設までに決める5つのこと

コールセンターの立ち上げは、電話システムを選ぶところからではなく、「どんな用件の電話が、月に何件来るか」を紙に書き出すところから始めます。順番は5つです。用件と件数を見積もる、自社で運営するか委託するかを決める、電話番号とシステムと記録の仕組みを決める、人を集めて教える、本番の前に試行する。どの手順も前の手順の答えを材料にするので、順番を入れ替えると手戻りが出ます。

もう1つ、最初からAIを入れたい場合に先に言っておきたいことがあります。開設初日からボイスボットに電話を受けさせるより、最初の数か月は人が受けて、用件と結果を毎回記録するほうが、AIの導入は早く進むと考えています。理由は5つめの手順のあとで書きます。

1. 用件の一覧を作り、件数と処理時間を見積もる

1. 用件の一覧を作り、件数と処理時間を見積もる

最初に作るのは用件の一覧表です。「何のためのセンターか」という目的は1行で書けますが、人数もシステムも予算も、目的からは決まりません。決まるのは、用件ごとの件数と、1回の応対にかかる処理時間からです。

既存の窓口があるなら、営業部門や店舗に来ている問い合わせのメール・電話メモを1か月分集めて分類します。新しい商品やサービスの窓口で実績がない場合は、契約件数や会員数に対して何割が問い合わせてくるかを仮置きし、その仮定を表に書いておきます。仮定を書かずに数字だけ残すと、開設後に見積もりがずれたとき、どこを直せばよいか分からなくなります。

用件一覧は次の列で作ります。そのまま表計算ソフトに写して使えます。

用件 想定件数(月) 想定処理時間(分) センターで完結できるか 完結できない場合の渡し先 必要な情報・システム
例: 申込方法の案内 1,200 4 できる なし FAQ、申込ページ
例: 契約内容の変更 900 8 本人確認後にできる なし 顧客台帳の更新権限
例: 請求金額の問い合わせ 600 6 一部 経理部門(折り返し) 請求データの参照
例: 不具合の申告 300 10 できない 技術部門(チケット) 受付票、製品の型番

表の数字はすべて説明用の例です。

この表から、月の処理時間の合計が出ます。例えば表の4行の仮の数字で計算すると、1,200×4+900×8+600×6+300×10で18,600分、310時間です。1か月の営業日を20日とすると1日あたり15.5時間分の通話と後処理があることになりますが、これを1人8時間で割った2人では回りません。電話は朝や月曜に偏って鳴り、受けられなかった電話は待たせるか取りこぼすことになるからです。時間帯ごとの入電の偏りから必要な人数を出す計算はアーランC式で必要人数を出す記事に計算機付きでまとめたので、ここでは「月の合計時間を人数で割るだけでは足りない」ことだけ押さえておきます。

「センターで完結できるか」と「渡し先」の2列は、立ち上げで最も軽く扱われがちな列です。ここが空欄のまま開設すると、オペレーターは答えられない電話を受けるたびにSV(現場の管理者)を呼び、SVは他部門に電話をかけ、折り返しの約束だけが積み上がります。

2. 自社で運営するか、委託するかを決める

自社運営か委託か。この判断は、手順1の表を見てからにします。完結できない用件が多く、社内の他部門とのやり取りが毎日発生するなら、社内に置いたほうが話が早い。反対に、定型の案内が大半で、繁忙期だけ件数が跳ねるなら、席数を増減しやすい委託先のほうが合います。費用面でどちらが先かは外注費とAI投資の順番を扱った記事で比べています。

委託する場合に、発注側がどこまで決めて渡すかは、自治体の仕様書が参考になります。たとえば吹田市のワクチン接種コールセンターの仕様書は、契約締結から業務開始の前日までを準備期間とし、受託者に作業工程計画書の提出と、業務マニュアル・FAQの作成と発注者による確認を求めています。マニュアルにない事例が起きたら発注者に連絡し、協議のうえでマニュアルを更新する決まりも書かれています。

委託しても、作るべきものは減りません。

作る人が変わるだけです。用件一覧、渡し先、判断に迷ったときの連絡経路は、発注側が持っていないと委託先は書けません。

個人情報を扱う業務を委託する場合、委託元には委託先を監督する義務があります。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、法第25条の関係で、適切な委託先を選ぶこと、委託契約を結ぶこと、委託先での取扱状況を把握することを挙げています。契約書のひな形を委託先から受け取る前に、取扱状況をどう報告してもらうか(定期の報告書か、監査か)を自社で決めておくと、交渉が短く済みます。

3. 電話番号、システム、記録の仕組みを決める

システムを決めるのは3つめです。この順番には理由があります。用件一覧と運営形態が決まっていれば、要件の大半はすでに出ているからです。

決めることは4つあります。1つめは電話番号で、既存の代表番号から転送するのか、専用番号を取るのか。2つめは受けた電話をオペレーターに振り分ける仕組みで、用件ごとに音声案内(IVR)で振り分けるか、全員で受けるか。3つめは顧客ごとの応対履歴を残す場所で、4つめが通話録音の有無と保存期間です。

自社運営で小さく始めるなら、クラウド型の電話基盤は選択肢になります。たとえばAWSのAmazon Connectの料金ページは、最低利用条件や長期契約は不要で、必要な分だけ支払う形をうたっています。開設前に席数を固めきれない立ち上げ期には、この形のほうが見積もり違いの損が小さくなります。

記録の仕組みでは、応対履歴に「用件コード」と「結果コード」を必ず入れる設計にします。用件コードは手順1の一覧の行、結果コードは「完結」「折り返し」「他部門へ転送」「対応不可」のような区分です。自由記述のメモだけでは、開設後にどの用件が多く、どこで詰まっているかを数えられません。

開設前に決めておくことはもう1つあります。2026年10月1日から、事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられました。厚生労働省のリーフレットは、電話やSNSなどで行われる言動も対象に含まれるとし、方針の明確化と周知、相談窓口の設置、事後の対応などを講ずべき措置に挙げています。新しく作る電話窓口は、開設日から対象です。

4. 人を集め、研修とマニュアルを用意する

4. 人を集め、研修とマニュアルを用意する

研修で教えることは、仕様書の言葉を借りると分かりやすくなります。千葉市の高齢者予防接種コールセンターの仕様書は、業務に必要な研修をあらかじめ実施し、内容に情報セキュリティや個人情報保護、応対マナー、事業内容を含めるよう求めています。業務責任者を1人置くこと、毎日の業務終了後に受付件数の集計表や折り返し対応の一覧表を翌開庁日までに出すことも書かれています。

研修の中身は、手順1の用件一覧から作ります。件数の多い用件から順に、案内の手順と言い回しをトークスクリプトにし、完結できない用件は「どこへ、何を添えて渡すか」を練習します。

研修を終えたことと、一人で電話を受けられることは別です。開設前の最終日に、用件一覧の上位の用件について模擬応対をし、渡し先への引き継ぎまでできた人から本番に入れます。ここで全員を通そうとしないこと。

5. 本番の前に試行し、開設後30日で見直す

いきなり全面公開しないのが原則です。社員や一部の顧客だけに番号を案内する試行期間を置き、通話の録音と応対履歴を毎日見返します。見るのは、用件一覧にない用件が来ていないか、想定処理時間と実際の差が大きい用件はどれか、渡し先で止まっている件がないか、の3点です。

立ち上げにかかる期間は、業種や規模で幅が大きく、一般論として言える公的な統計は見当たりません。目安を置くなら、外部への告知から逆算します。千葉市の仕様書(4回線で始める期間限定の窓口)では、受託者は決まった電話番号を8月28日までに市へ通知し、コールセンターの開設は9月24日です。番号の通知期限から開設まで約4週間。仕様書は理由を書いていませんが、番号を案内状やWebに載せる時間をこの間に取れる日程です。

開設から30日たったら、用件一覧を実績で書き直します。想定件数と処理時間を実数に入れ替え、人数とシフトを組み直す。この最初の見直しを予定表に入れておかないと、立ち上げ時の仮の数字がそのまま翌年の予算になります。

最初からAIを入れる場合に足すこと

最初からAIを入れる場合に足すこと

開設と同時にボイスボットやチャットボットを入れたい場合でも、冒頭で書いたとおり、最初の数か月は人が受けて記録を貯めるほうが近道だと考えています。AIに任せる用件を選ぶには、用件ごとの件数、処理時間、完結率の実績が要ります。手順3の用件コードと結果コードがあれば、3か月後には「件数が多く、手順が決まっていて、完結率の高い用件」が数字で並び、そこから自動化を始められます。どの業務が自動化に向くかの整理は業務ごとの向き不向きの記事にまとめています。

そのうえで、開設前に決めておけばあとで困らないことが3つあります。

  • 録音とテキスト化を前提にした告知文と保存期間。あとから生成AIで要約や分析に使う予定があるなら、利用目的に含めておく
  • 応対履歴の項目(用件コード・結果コード・渡し先)。AIの学習や評価にそのまま使える形にする
  • 生成AIに個人情報を入力するときのルール。個人情報保護委員会の注意喚起は、個人情報を含むプロンプトを入力する場合、特定した利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認するよう求めている

まとめ

  • 立ち上げは、システム選びではなく用件一覧から始める。件数・処理時間・完結できるか・渡し先の4つが、人数と運営形態とシステムを決める
  • 委託しても、用件一覧と渡し先と連絡経路は発注側が持つ。個人情報を扱うなら委託先の監督の方法も先に決める
  • 応対履歴に用件コードと結果コードを入れる設計にする。開設後の見直しにも、のちのAI導入にも同じ記録を使う
  • 開設日は外部への告知から逆算し、開設30日後の見直しを最初から予定に入れる

自社の立ち上げ計画に、「この電話はセンターで完結できない」と書いた行は何行あるでしょうか。

よくある質問

コールセンターの立ち上げにはどのくらいの期間がかかりますか。

期間は、外部へ番号を告知する日から逆算して決めます。番号が決まってから開設までに4週間程度を見た自治体の委託例があります。

自社運営と委託はどちらがよいですか。

完結できない用件が多く社内の他部門とのやり取りが毎日あるなら自社運営、定型の案内が中心で繁忙期だけ件数が跳ねるなら委託が向きます。どちらでも、用件一覧と渡し先は発注側が作ります。

少人数でもコールセンターと呼べる体制は作れますか。

作れます。人数が少ないほど、用件ごとの渡し先と折り返しのルールを先に決めておく効果が大きくなります。クラウド型の電話基盤なら、最低利用条件や長期契約なしで始められるサービスもあります。

開設時からAIボイスボットを入れるべきですか。

最初の数か月は人が受けて用件と結果を記録し、件数が多く手順の決まった用件から自動化するほうが、選ぶ根拠のある導入になります。


注記: 本稿は2026年10月16日時点で確認した公開情報(確認日: 2026年10月16日)と、編集部の実務設計案によるものです。表と計算の数字は説明用の例で、実在の企業のデータではありません。自治体の仕様書は発注側が受託者に求める内容の例として引用しており、立ち上げ期間の一般的な目安を示すものではありません。個人情報保護法・労働施策総合推進法に関わる判断は、専門家への相談を推奨します。本稿はAI著者によるデスクリサーチであり、特定の製品やサービスの推奨ではありません。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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