コールセンターの応答率を改善する 下がった原因を4つに切り分けて打つ手を選ぶ

コールセンターの応答率が下がったとき、原因はほぼ4つに分かれます。呼量が予測より多かった、1件の処理時間が延びた、席にいる人数が計画より少なかった、時間帯ごとの配置が波とずれていた。この4つを30分単位の予実で並べれば、どれが効いたかは数字で分かります。打つ手は原因ごとに違い、増員は最後に検討する手です。採用と研修には月単位の時間がかかり、原因が配置のずれなら、人を足しても空いている時間帯の待機が増えるだけだからです。
応答率・放棄率・サービスレベルの定義の違いは2分で読める指標の解説に、つながりやすさと稼働の綱引きはサービスレベルと稼働率の記事に任せ、ここでは「下がった後に何を見て、何を直すか」に絞ります。
応答率が下がったら最初に作る予実の表
応答率は、かかってきた電話のうちオペレーターが出た割合です。公的な窓口の例では、日本年金機構の主要統計がねんきんダイヤルの応答率を「総呼数に対する応答数の割合」と定義し、毎月公表しています。2026年4月応対分は82.1%、6月応対分は69.2%でした。同じ窓口でも、月によって10ポイント以上動く指標だということです。
動いた理由を探すとき、月の平均や日の合計を見ても答えは出ません。応答率を崩すのは特定の30分なので、比べる単位も30分にします。用意するのは、例えば次のような表です。
| 区間 | 入電数(予測/実績) | AHT秒(予測/実績) | 席にいた人数(計画/実績) | 応答率 |
|---|---|---|---|---|
| 10:00〜10:30 | 90/100 | 300/330 | 18/15 | 71% |
| 10:30〜11:00 | 85/88 | 300/310 | 18/17 | 89% |
(数字は説明のための例です)
AHTは1件あたりの平均処理時間で、通話・保留・後処理を含みます。Amazon Connectのメトリクス定義も、平均処理時間に通話時間、保留時間、後処理時間を含めています。製品によって含める範囲が違うので、予測に使った値と実績の値が同じ定義かを先に確かめます。
この表から、1つの式で「仕事量」がどれだけ予測を超えたかが出ます。仮の数字で計算すると次のとおりです。
区間の仕事量(人分)= 入電数 × AHT秒 ÷ 区間の秒数(30分なら1,800)
予測: 90件 × 300秒 ÷ 1,800 = 15.0人分
実績: 100件 × 330秒 ÷ 1,800 = 18.3人分
この例では、入電数は11%、AHTは10%の上振れですが、掛け算なので仕事量は22%増えています。そこに席の人数が18人の計画で15人しかいなければ、仕事量18.3人分を15人で受けたことになり、待ち行列は伸び続けます。この区間の応答率71%は、3つの原因が重なった結果です。どれか1つを直しても、全部は戻りません。
原因1 呼量が予測を超えた
入電数の予実差が大きい区間は、まず中身を分けます。見るのは3つ。
1つめは、かけ直しの混入です。待ちきれずに切った人の一部はかけ直します。総呼数を分母にする応答率では、同じ人の2回目、3回目もそれぞれ1件として数えられるため、応答率が下がった区間ほど入電数がふくらむ循環が起きます。待ち行列の研究でも、KooleとMandelbaumの解説論文は顧客の待てる長さ(忍耐)を主要な論点に挙げ、かけ直しの傾向にも触れています。発信者番号で重複を除いた「ユニーク呼数」を並べると、本当の需要がどれだけ増えたかが見えます。
2つめは、自社が作った呼です。請求書や通知の発送、料金改定、システム障害。日本年金機構はねんきんダイヤルの案内ページで、通知書が届いてから5日間程度は電話が集中してつながりにくくなると利用者に知らせています。発送日がずれただけで呼量の山は動くので、発送スケジュールを呼量予測の担当が事前に受け取れているかを確かめます。
3つめが、用件の増加です。コールリーズン(問い合わせ理由)の集計で特定の用件が伸びているなら、打つ手は電話の外にあります。FAQやWebでの告知、手続き画面の改善です。ここはAIの出番でもあり、住所変更や受付時間の確認のような定型用件はボイスボットやチャットボットに渡せます。
原因2 1件の処理時間が延びた
AHTの上振れは、通話・保留・後処理のどこが延びたかに分けます。同じ10%増でも、手の打ち方が全く違うからです。
後処理が延びたなら、記録項目が増えた、システムが遅い、新しい手続きが始まった、のどれかが多い。保留が延びたなら、オペレーターが答えを探している時間です。ナレッジの不足か、二次対応部署への確認に時間がかかっています。通話そのものが延びたなら、用件の構成が変わった可能性を先に疑います。簡単な用件が別チャネルに移ると、残った電話は難しいものの比率が上がり、平均は延びます。
ここで避けたいのが、AHTの目標を締めて応答率を取り戻そうとすることです。確認を省いて短くした通話は、再入電として別の日に戻ってきます。後処理の短縮は通話の質を削らないので、最初に手を付けやすい場所です。AIの通話要約は、ちょうどこの後処理に効く道具です。
原因3 席にいる人数が計画より少ない
シフト表上は18人でも、その時間に電話を受けられる状態にいた人数は別物です。差を生むのは、欠勤・遅刻、休憩や研修の時刻のずれ、会議の延長、後処理以外の作業への離席です。
これを数字で見るのがスケジュール遵守率(アドヒアランス)です。予定どおりの時間に予定どおりの状態にいた割合で、Amazon Connectのスケジュール遵守の説明では、電話対応のような生産的な作業が予定されている時間に「利用可能」の状態でいれば準拠、と判定します。仮に計画18人で遵守率が85%なら、実際に受けられたのは約15人分です。
遵守率が低い区間は、たいてい理由が決まっています。朝礼が延びる、昼休憩の戻りが重なる、研修が電話の山にかかっている。休憩と研修の時刻を山から外す、朝礼を5分短くする、といった手は今週から打てます。欠勤が原因なら、計画段階で見込む欠勤の割合(シュリンケージ)を実績に合わせて直します。シュリンケージを使った在籍人数への換算は割り算で行います(実働人数÷(1−シュリンケージ))。
原因4 時間帯の配置が波とずれている
1日の合計人数は足りているのに、特定の時間だけ応答率が落ちる。この形なら、原因は配置の形です。
入電は、例えば朝の開始直後や昼休み明けに山ができ、夕方にかけて下がる、というように時間帯で偏ります。一方、シフトを「9時から18時」のような固定の枠だけで組むと、山の時間にも谷の時間にも同じ人数がいる形になります。山で溢れた分は応答率を下げ、谷の時間には待機が増えます。
打つ手は3つあります。短時間シフトや開始時刻をずらした勤務を山に重ねること。電話以外の作業(メール返信、折り返し、研修)を谷の時間にまとめること。そして、山の時間の需要そのものを動かすことです。日本年金機構が夕方や月の後半はつながりやすいと案内しているように、つながりやすい時間帯を知らせれば、急ぎでない人の一部はそちらに移ります。折り返し予約(コールバック)を受け付けるのも、山を谷へ移す手です。
打つ手を選ぶ順番と、増員を最後にする理由
4つの原因と、早く効く順に並べた打つ手をまとめます。
| 原因 | 先に打つ手 | 効くまでの目安 |
|---|---|---|
| 席の人数(遵守) | 休憩・研修・朝礼を山から外す | 翌週 |
| 時間帯の配置 | 開始時刻の分散、谷へ作業を寄せる、つながりやすい時間の案内 | 次のシフト作成時 |
| 処理時間 | 後処理の項目削減、ナレッジの穴埋め、通話要約 | 数週間〜数か月 |
| 呼量 | 発送日の共有、定型用件のWeb・ボット化、ユニーク呼数での再計算 | 数週間〜数か月 |
増員は、この表の手を打っても仕事量が席の人数を恒常的に上回るときの手です。採用から独り立ちまで月単位でかかるうえ、原因が配置のずれのまま人を足すと、谷の時間の待機が増えて稼働の数字が悪化し、次の予算で人を削られる、という戻り方をします。先に配置と処理時間を直し、それでも足りない仕事量を人数に換算して要求するほうが、増員の稟議も通りやすいと見ています。
AIを入れる場合も順番は変わりません。ボイスボットで定型の電話が減ると呼量は下がりますが、残った電話は1件が重くなり、AHTは上がりやすくなります。入電数の減り方だけで人数を減らすと、原因2と原因3が同時に起きます。AI導入後の人数の見直し方は要員計画をAI導入後に見直す記事にまとめています。
まとめ
- 応答率が下がったら、30分単位で「入電数・AHT・席にいた人数」の予実を並べ、入電数×AHT÷1,800で仕事量の上振れを出す
- 入電数の上振れは、かけ直し・自社が作った呼・用件の増加に分ける
- AHTの上振れは、通話・保留・後処理のどこが延びたかに分ける。AHT目標を締めて取り戻そうとしない
- 席の人数は遵守率で、時間帯の偏りは配置の形で見る。どちらも今月中に打てる手がある
- 増員は最後。直した後に残る仕事量を人数に換算して要求する
先月いちばん応答率が低かった30分に、席には何人いたでしょうか。
よくある質問
応答率の目標は何%にすればよいですか。
一律の正解はありません。業種や用件の緊急度、許容できる人件費で変わります。目標を決めるときは、何秒以内の応答を数えるのか、短時間で切れた電話を除くのかといった定義を、数字と一緒に書いておきます。
コールバック(折り返し予約)を入れると応答率は上がりますか。
数え方によります。Amazon Connectでは、コールバックのためにキューに入れられた問い合わせは放棄に数えません。顧客の待ち時間は減りますが、折り返しの作業は谷の時間に残るので、その人手は計画に入れておきます。
応答率が低いのは人手不足のせいだと言われます。どう確かめますか。
本文の予実の表を作り、仕事量(入電数×AHT÷区間秒数)と席にいた人数を区間ごとに比べます。仕事量が計画どおりで席の人数だけが足りないなら配置や遵守の問題、仕事量そのものが恒常的に上回っているなら人数の問題です。
注記: 本稿は2026年10月16日時点の公開情報と、編集部による実務上の整理によるものです(確認日: 2026年10月16日)。表と計算の数字は説明のための例で、実在のセンターの実績ではありません。日本年金機構の応答率は同機構の公表値です。指標の定義は製品や運用で異なるため、自社のシステムの定義を確認してください。本稿は特定の製品やサービスを推奨するものではありません。
出典
- 日本年金機構「日本年金機構の主要統計(194)」
- 日本年金機構「日本年金機構の主要統計(192)」
- 日本年金機構「ねんきんダイヤル」
- AWS「Connect Customer のメトリクス定義」
- AWS「Connect Customer でのエージェントの生産性に関するスケジュールの遵守」
- Ger Koole, Avishai Mandelbaum「Queueing Models of Call Centers: An Introduction」
この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。



