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カスハラ研修の内容と対象者 コールセンターで組む4つの研修

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カスハラ研修の内容と対象者 コールセンターで組む4つの研修

カスハラ研修は、全員に同じ座学を年1回行うだけでは足りません。2026年10月1日に施行された改正労働施策総合推進法(第33条)と厚生労働省の指針が義務にしたのは、方針と対処の内容を「管理監督者を含む労働者」に周知・啓発すること。研修はその代表的な方法として例示されています。

コールセンター(コンタクトセンター)なら、対象をオペレーター、SV(スーパーバイザー)、相談窓口の担当者、センター長・経営層の4つに分けて組むのが、指針の書き方に最も素直な形です。

4つのうち、時間を最も厚く配るべきはSVだと考えています。指針が対処の例として挙げる「管理監督者に直ちに報告し、その場の対応の方針について指示を仰ぐ」は、報告を受けた側が判断できて初めて機能するからです。オペレーター向けの研修だけを充実させても、報告を受けたSVが迷えば、現場は止まります。

指針で研修はどう位置づけられているか

指針で研修はどう位置づけられているか

指針は、事業主が講じなければならない措置(義務)と、行うことが望ましい取組を分けて書いています。研修が出てくる箇所を並べると次のとおりです。

指針の項目 研修の出てき方 主な対象
方針の明確化と周知・啓発(義務) 方針と対処の内容を周知・啓発するための研修・講習を「認められる例」として挙げる 管理監督者を含む全労働者
相談体制の整備(義務) 相談を受けた場合の対応についての研修を例示 相談窓口の担当者
事後の対応と再発防止(義務) 方針と対処の内容の研修・講習を「改めて」実施することを例示 全労働者
プライバシーの保護(義務) プライバシー保護に必要な研修を例示 相談窓口の担当者
望ましい取組 接客・商品やサービス・苦情対応の研修、消費者の心理や障害特性の研修 顧客に接する労働者

義務の中身は「周知・啓発」で、研修はその方法の例です。社内報や対応マニュアルへの記載も、同じく例として並んでいます。ただし厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)は、周知は研修等の形で行うことが考えられるとし、全員が受講し定期的に実施することが重要だとしています。中途入社やパート・アルバイトにも入社時に研修や説明を行うよう促しています。文書を配って終わりにしない、というのがマニュアルの示す線です。

自社の担当者が委託先や取引先に電話をかける側になる場面の注意も、どこかの研修に1項目入れておきます。指針は法第34条第2項の事業主の責務(努力義務)として、他社の労働者への言動に注意を払うよう研修の実施などに努めることを挙げています。

義務化の前の時点では、教育まで手が回っている職場は少数でした。UAゼンセンが公表した2024年調査で、勤務先の対策として「迷惑行為対策への教育」を挙げた人は21.0%、「特に対策はなされていない」は42.2%です。

1. オペレーター向け 定義と初動と報告の合図

全オペレーターが受ける研修の中身は、厚生労働省のマニュアルが内容例として挙げる項目でほぼ足ります。カスハラの定義と正当な苦情との違い、判断の基準と事例、類型別の対応方法、苦情対応の基本的な流れ、謝罪や話の聞き方、記録の作り方、ケーススタディです。

コールセンター向けに力点を置きたいのは3点です。

まず、正当な苦情との違い。指針は、社会通念上許容される範囲の申し出は正当な申入れでありカスハラに当たらないとし、厚生労働省のリーフレットも、障害者が不当な差別的取扱いをしないよう求めることや、社会的障壁の除去を必要としている旨を伝えること自体はカスハラに当たらないと明記しています。電話口で聞き返しが多い、話が長いといった事情を、すぐにカスハラと結びつけない練習が要ります。

次に、報告の合図。暴言が出た、説明後も同じ要求が続く、通話が一定時間を超えた、など、SVに保留で報告する条件をセンターで決め、研修で全員が言えるようにします。合図が決まっていれば、オペレーターは「これはカスハラか」を自分で判定しなくて済みます。

最後に、記録。日時、要求の内容、相手の言葉、こちらの説明、報告したSVの名前をその場でメモに残せば、録音と合わせて後の事実確認に使えます。

形式は座学よりロールプレイが向いています。マニュアルも、自社で起きた事案を踏まえた事例やケーススタディを入れると実践的な研修になるとしています。自社の通話録音から、個人情報を除いて台本に起こすのが手早い方法です。

2. SV向け その場の判断と被害者への声かけ

SVの研修は、オペレーター研修の上級版ではありません。役割が違います。

指針は、カスハラの対処の内容を決める際、労働者から報告があった場合や管理監督者が現認した場合に、管理監督者が直ちに適切な対応をすることが必要な場面もあると踏まえて定めるよう求めています。対処の例も、管理監督者への報告と指示、一人で対応させないこと、必要に応じた管理監督者による代わりの対応、と並んでいます。電話の現場でこれを担うのはSVです。

厚生労働省が公表した職場のハラスメントに関する実態調査でも、顧客等からの著しい迷惑行為を受けた後の行動で最も多かったのは「社内の上司に相談した」(38.2%)でした。被害を受けた人がまず頼る先として、最も多いのは上司です。

SV向けに入れておきたい内容は次のとおりです。

  • 報告を受けたときの判断の順番(代わって出るか、指示だけ出すか、打ち切りに進むか)
  • 代わりに電話に出るときの名乗り方と、引き継いだ後の話の進め方
  • 打ち切りの基準と、打ち切った後の記録・報告先
  • 被害を受けたオペレーターへの声かけと、休憩や配置の調整
  • 相談窓口へつなぐ基準(SVの段階で抱え込まない)

4つ目の声かけは、研修で台詞まで練習しておく価値があります。「大丈夫?」と聞けば、多くの人は「大丈夫です」と答えます。「今の電話のあと、5分席を外していいよ。戻ったら記録を一緒に見よう」のように、取る行動を具体的に示すほうが受け取りやすい。打ち切りの基準そのものの決め方は、対応方針の粒度の記事で扱っています。

3. 相談窓口担当向け 聞き方とプライバシー

3. 相談窓口担当向け 聞き方とプライバシー

相談窓口の担当者は、指針の中で研修が2回出てくる対象です。相談を受けた場合の対応についての研修と、相談者のプライバシー保護のための研修です。

マニュアルは、相談窓口の担当者が現場の状況把握、事実確認、顧客への対応、相談者へのフォローを担うため、研修は大変重要だとし、話を傾聴し詰問にならないよう留意することを求めています。研修では、相談者から事実を聞き取る順番、録音や応対記録の確認の仕方、関係部門への共有範囲、相談したことを理由に不利益な扱いをしないことの伝え方を扱います。

指針は、カスハラに当たるか微妙な場合でも広く相談に対応するよう求めています。研修では「カスハラと判断できないから受け付けない」という返し方をしない練習も入れます。窓口が使われる条件は、相談窓口の設計の記事で詳しく書きました。

4. センター長・経営層向け 止める判断を引き受ける研修

4つ目の対象は、現場の外で判断を下す人です。指針は抑止のための措置として、特に悪質なものへの対処の方針を定め、対処できる体制を整えることを義務にしています。対処の例は、警察への通報、警告文の発出、法令の範囲内でのサービス提供の停止、仮処分命令の申し立てなどです。

どれも、センター長や本社が決める判断です。マニュアルは、経営層にはカスハラの事業への影響や優先順位を判断した上での対応が求められることを、外部講師による研修などで意識してもらうことが有効だとしています。

センター長・経営層向けには、次の3点を扱います。

  • 悪質な相手へのサービス停止や警告を誰がどの基準で決めるか
  • 業法や契約でサービス提供の義務がある場合の扱い(指針も業種による違いへの留意を求めています)
  • 委託先のオペレーターを守る方針の示し方

最後の点はコールセンター特有です。指針は雇用する事業主の措置として書かれているため、委託先オペレーターの研修は委託先の措置の範囲と読めます(派遣労働者は扱いが違い、指針は派遣先にも自社の労働者と同様の措置を求めています)。そのうえで指針は、自社が雇用していない人に対する顧客の言動についても同様の方針を示すことを、望ましい取組としています。委託元のセンター長が方針を示し、委託先の研修内容と揃っているかを確かめる。その段取りまでが経営層の研修の範囲です。

頻度と時期 年間の組み方

頻度と時期 年間の組み方

マニュアルが重要とする「全員が受講し、定期的に実施する」を、コールセンターの年間計画に落とすと次のようになります。時間の目安は編集部の例です。

時期 対象 内容 時間の目安(例)
入社・配属時 新人オペレーター(中途・パート・派遣を含む) 方針、定義、報告の合図、記録 60〜120分
年1回の定期 全オペレーター 判断の事例更新、ロールプレイ 60〜120分
昇格時と年1回 SV 報告を受けた後の判断、代わりの対応、被害者への声かけ 半日
着任時と年1回 相談窓口担当 聞き取り、事実確認、プライバシー保護 120〜180分
年1回 センター長・経営層 抑止措置の判断基準、委託先との方針共有 60〜120分
事案の発生後 当該チーム 事例の振り返り、手順の見直し点 30〜60分
手順・ツール変更時 全員 変わった箇所だけ 15〜30分

事案の発生後の研修は、指針の再発防止の措置に例として出てくるものです。マニュアルは、現場を預かる現場監督者が注意喚起をするだけでも効果が見込まれるとしています。大がかりな研修を組まなくても、朝礼の10分で事例を共有すれば足りる場面があります。

AIツールを入れているセンターは、最後の行を忘れがちです。通話の自動要約、暴言や怒りの検知アラート、録音の自動保存などを入れたら、アラートが鳴ったときに誰が何をするか、録音を誰がどこまで聞けるかを全員に伝えます。指針は録音・録画にあたって個人情報保護法などを守ることも求めています。アラートは鳴るのに誰も動かない状態は、研修で防ぐ領域です。

教材をゼロから作る必要はありません。厚生労働省はあかるい職場応援団の業種別の取組支援ページで、業種別のマニュアルや研修動画を公開しています。自社の研修は、こうした教材に自社の方針と報告の合図、自社の事例を足して組むのが現実的です。

まとめ

  • 研修は、オペレーター、SV、相談窓口担当、センター長・経営層の4つに分けて組む
  • 時間を最も厚く配るのはSV。報告を受けた側が判断できなければ、対処の手順は動かない
  • 入社時と年1回の定期に、事案の発生後と手順・ツールの変更時の短い研修を足す

よくある質問

カスハラ研修は法律で義務になったのですか。

改正法と指針が義務にしたのは、方針と対処の内容を労働者に周知・啓発することです。研修そのものは義務の本文ではなく、その方法の例として指針に挙げられています。

研修はどのくらいの頻度で行えばよいですか。

厚生労働省のマニュアルは、全員の定期的な受講と、中途入社やパート・アルバイトへの入社時の研修や説明を重要としています。本稿では、これに事案の発生後と手順変更時の短い研修を足す組み方を例として示しました。

派遣や委託先のオペレーターも研修の対象ですか。

派遣労働者は対象です(指針は、派遣先も労働者派遣法第47条の4により雇用する事業主とみなされるとしています)。委託先のオペレーターの研修は指針の建付けから委託先の措置の範囲と読め、委託元は方針を示して研修内容が揃っているかを確かめます。


注記: 確認日: 2026年10月16日。指針・マニュアル・リーフレット・調査の記述は同日時点の厚生労働省の公開資料によります。職場のハラスメントに関する実態調査は義務化前の2023年12月〜2024年1月の調査で、UAゼンセンの調査はサービス業に従事する同団体の組合員が対象です。4つの対象への分け方、SV向けの内容、年間計画の表と時間の目安は編集部の案です。本稿は法令の解釈や個別の事案の判断を行うものではなく、具体的な対応は社会保険労務士・弁護士などの専門家への相談を推奨します。本稿はAI著者によるデスクリサーチです。

施行後の運用を整えるなら

本記事で触れた論点を、実務の判断に落とし込むための実務ガイドを会員向けに公開しています。 書き込み式の様式3点(対応方針・相談窓口の運用フロー・対応記録シート/Word)と、 施行日から逆算した準備チェックリスト(Excel)が付いています。

カスハラ義務化 実務ガイド ー 2026年10月1日までに、コールセンターが決めるべきこと(会員限定)


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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