NatWestは、なぜコールセンターのAI進捗指標を二段で開示するのか?

英NatWest Groupの2025年年次報告は、AIアシスタント「Cora」の進捗を、2つの別々の数字で開示しています。
1つは、生成AI化を終えた顧客対応ジャーニーが4本から21本に増えたこと。もう1つは、生成AIを入れたジャーニーの成果が、入れていないジャーニーを約20ポイント上回ったことです。
実装の量と効果を、同じ行に書かない。この分け方は、日本のコールセンターがAIの進捗を経営へ報告するときに、そのまま使える型だと見ています。
Coraの規模と2025年の数字

NatWestの技術・データ・AIのページによると、Coraはモバイルアプリ・オンライン・電話の3チャネルで、100を超えるトピックを扱う顧客対応AIです。
2025年の年次報告では、2025年に1,290万件の会話を処理し、その50%が人の介在なしで完了したと開示しました。電話を含むチャネル横断の件数であって、削減できた入電の数ではありません。
2026年に入っても、水準は落ちていません。同社の開示では、2026年上半期に710万件の会話のうち380万件が完全デジタルで完結し、前年同期比23%増でした。
この「完全デジタル完結」が、年次報告の「人の介在なし50%」と同じ定義かは、開示からは確定できません。そのため割り算して比べるのは避けます。なお380万÷710万は約53.5%ですが、これは当ラボの計算で、同社の開示値ではありません。
ここが分かれ目です。多くの事例発表は、この規模の数字だけで終わります。
比較の相手に米Bank of Americaを置くと、測り方の違いが見えます。
同行は2026年7月21日の発表で、1万8,000人超のカスタマーサービス担当者が使う「EricaAssist」に生成AIを足し、平均通話時間が1件あたり約1分短くなったとしました。
電話チャネルを、オペレーター支援と処理時間で測るBofA。ジャーニー単位の自己完結で測るNatWest。
どちらも同社発表の自己申告値で、顧客層も業務範囲も違うため、優劣は比べられません。比べられるのは「何を単位に測るか」という設計思想の差です。
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