クレーム電話の対応 コールセンターの初動3手順と言い換え例

クレーム電話の初動でやることは3つです。謝る対象を限って先に謝る。遮らずに聞き切り、相手の要望を一文にして復唱する。その場で約束できることとできないことを分け、できないことは期限を付けて持ち帰る。厚生労働省のカスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)も、苦情の初期対応を「限定的に謝罪する」「状況を正確に把握する」「現場監督者に情報共有する」の3段階で示しており、本稿の手順はこれをコールセンターの電話に合わせて組み直したものです。
3つのうち、いちばん時間を使うべきは2つ目の要望の確定だと考えています。クレームが長引く電話の多くは、謝り方がまずかったからではなく、相手が何を求めているのかを取り違えたまま話が進んだことで起きている、というのが本稿の立場です。
初動が大事な理由は、同じマニュアルにはっきり書かれています。もともとは単なる苦情だったものが、従業員の初期対応によってカスタマーハラスメント(カスハラ)に発展しうる、という指摘です。逆に言えば、初動を整えることは、オペレーターを守る対策でもあります。
手順1 謝る対象を限定して先に謝る
最初の一言は謝罪で構いません。ただし、謝る対象を限ります。
マニュアルが例に挙げるのは「この度は不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ありません」という言い方です。謝っているのは「不快な思いをさせたこと」であって、会社の過失ではありません。状況が分からない段階で非を認める発言をすると、事実確認で会社に非がないと分かった後でも撤回が難しくなる、というのがマニュアルの説明です。非を認めて謝るのは、事実を確認して社内で判断した後にし、その際も過失の程度に応じた謝罪にする、とも書かれています。
電話では、限定した謝罪を「何に対して」まで言葉にすると伝わりやすくなります。「お待たせしてしまい」「ご不便をおかけして」「何度もお電話をいただくことになり」。相手が実際に被った不便を名指しすると、謝罪が定型句に聞こえにくくなります。
謝罪を繰り返しすぎないことも同じくらい効きます。1文ごとに「申し訳ございません」を挟むと、聞く側には「謝るだけで話が進まない」と映ります。謝罪は冒頭と、要望を確認した後の2回で足ります。
手順2 遮らずに聞き切り、要望を一文で復唱する
マニュアルは状況把握について、途中で発言を遮ったり反論したりせず、ひと通り事情を確認するよう勧めています。そのうえで、不明確な点は確認し、足りない情報は質問し、顧客の勘違いがあれば正しい情報を伝える、という順番です。対面・電話に共通する留意点としては、メモを取りながら聞き、復唱して確認することも挙げています。
コールセンターで差がつくのは、聞き終えた後の復唱です。経緯を全部なぞり直すのではなく、要望を一文にまとめて返します。
「確認させてください。10日にお届けした商品の箱が潰れていて、中身に傷がないか心配なので、交換をご希望ということでよろしいでしょうか」
この一文には、事実(いつ、何が)と、気持ち(心配)と、要望(交換)が入っています。相手が「そうじゃない、交換より謝ってほしいんだ」と言い直してくれれば、それが収穫です。取り違えたまま交換の手続きを進めていたら、電話はもっと長くなっていました。
要望はおおむね次の5つのどれか、または組み合わせです(編集部の整理)。
| 要望の型 | 相手の言葉の例 | 初動で返すもの |
|---|---|---|
| 説明してほしい | 「なんでこうなったの」 | 分かっている事実と、分からない点を調べる期限 |
| 直してほしい | 「交換して」「返金して」 | 対応できる条件と手続き(できない場合は理由) |
| 謝ってほしい | 「誰が悪いの」 | 限定した謝罪。過失の判断は確認後と伝える |
| 繰り返さないでほしい | 「また同じことが起きたら困る」 | 申し出を担当部署に伝えることと、伝えた結果を返すかどうか |
| 聞いてほしい | 長い経緯の説明が続く | 遮らずに聞き切ること自体 |
なぜ要望の確定を最優先にするのか。UAゼンセンが公表した2024年調査では、迷惑行為のきっかけ(1つ選択)で最も多いのは「顧客の不満のはけ口・嫌がらせ」の26.7%でした。一方で「接客やサービス提供のミス」が19.3%、「消費者の勘違い」が15.1%、「商品の欠陥」が6.8%、「システムの不備」が4.0%あり、理由のある不満や行き違いから始まった申し出も少なくありません。こうした申し出は、要望を正しく受け取れればクレームのまま終わらせられる余地があります。
手順3 できることとできないことを分け、持ち帰る話は期限を付ける
要望が確定したら、その場で返事ができるものと、できないものを分けます。マニュアルの共通の留意点には、対応できることとできないことをはっきりさせて過大な期待を抱かせない、その場しのぎの回答はしない、即時回答できない内容は事実を確認してから追って返事をする、が並んでいます。
電話でこじれやすいのは「たぶん大丈夫だと思います」のような、その場しのぎの返事です。後で違うと分かれば、最初の苦情に「言っていたことと違う」が上乗せされます。分からないことは分からないと言い、いつまでに誰から連絡するかを約束します。
持ち帰るときは、期限を必ず付けます。
「この場ではお答えできないため、配送の担当部署に確認いたします。本日17時までに、私からお電話でご連絡します。確認に時間がかかる場合も、17時の時点で途中のご報告をいたします」
マニュアルは、相手を落ち着かせたい場合に「確認して後日回答する」と伝えてその場を閉じ、冷静になる時間を置く方法にも触れています。持ち帰りは逃げではなく、初動の選択肢の1つです。
電話ならではの注意も2つあります。マニュアルは、基本的には最初に受けた人が責任を持ち、たらい回しにしないこと、周りと相談するときは社内のやり取りが漏れないよう必ず保留を使うことを挙げています。SVに確認したい時は「確認いたしますので、保留にしてお待ちいただけますか」と断ってから保留にし、送話口を手でふさいで済ませないようにします。
言い換え例 コールセンターで避けたい言い方と置き換え
初動で相手の気持ちを逆なでしやすい言い方と、その置き換えをまとめます。センターのトークスクリプトに貼って使える粒度にしています。例文は編集部が作ったもので、自社の商品や規程に合わせて直してください。
| 避けたい言い方 | 置き換え | 理由 |
|---|---|---|
| 「弊社のミスです。申し訳ございません」(確認前) | 「ご不便をおかけして申し訳ございません。状況をすぐに確認いたします」 | 過失の判断は事実確認の後 |
| 「落ち着いてください」 | 「最後までお話を伺います。どうぞお続けください」 | 相手の感情を評価しない |
| 「おっしゃる意味が分かりません」 | 「確認させてください。〇〇ということでよろしいでしょうか」 | 理解できない責任を相手に置かない |
| 「規則ですので」 | 「〇〇のため、この手続きには△△が必要になっております」 | 規則の理由を一言添える |
| 「担当が違いますので」 | 「担当部署に私から内容をお伝えし、〇時までにご連絡します」 | たらい回しに聞こえない |
| 「たぶん大丈夫です」 | 「確認してから、〇時までに正確なお答えをご連絡します」 | その場しのぎの回答をしない |
| 「できません」 | 「〇〇はいたしかねますが、△△でしたらご案内できます」 | 断る理由と代わりの道を一緒に出す |
| 「前にもお伝えしましたが」 | 「改めてご説明いたします」 | 相手の聞き漏らしを責めない |
| 「少々お待ちください」(長い保留) | 「確認に3分ほどいただけますか。保留にしてお待ちいただきます」 | 待つ時間の目安を伝える |
| 「上の者に代わります」 | 「責任者に状況を伝えて、対応を確認いたします」 | 理由と次の動きを言う |
並べてみると、置き換えの多くに共通するのは「次に何が起きるか」の一言。クレーム電話で相手が苛立つのは、言葉の丁寧さよりも、この先どうなるのかが見えないときです。
カスハラ対応へ切り替える線
初動の3手順は、相手の申し出が正当な苦情であることを前提にしています。厚生労働省の指針も、社会通念上許容される範囲で行われた申し出は正当な申入れであり、カスハラには当たらないと明記しています。一方で、同じ指針は管理監督者への直ちの報告、可能な限り一人で対応させないこと、十分に説明してもなお繰り返しの要求が続く場合に一定の時間の経過をもって電話を切ること、などを対処の例として挙げています。
難しいのは、苦情とカスハラの境目の見極めです。厚生労働省が公表した職場のハラスメント実態調査では、カスハラ対策を進める上での課題として「迷惑行為と正当なクレームや要求とを区別する明確な判断基準を設けることが難しい」を挙げた企業が25.9%ありました。
現場で迷わないためには、判断をオペレーター1人に背負わせず、切り替えの合図をセンターで決めておくことです。たとえば暴言や脅しが出た、同じ要求が説明後も繰り返される、通話が一定時間を超えた、のどれかでSVに保留で報告する。切り替えた後の打ち切りの基準と権限の置き方は、対応を打ち切る線の記事で詳しく書いています。初動の3手順を踏んだ記録は、後でカスハラかどうかを判断する材料にもなります。
AIの支援が入ると初動の何が変わるか
AIが初動を肩代わりするわけではありません。変わるのは、手順2と手順3の手間です。
リアルタイムの文字起こしがあれば、オペレーターは聞きながらメモを取る負担が減り、復唱の一文を画面を見ながら組み立てられます。通話要約が使えれば、SVや担当部署に引き継ぐときに、顧客に同じ説明を繰り返させずに済みます。声の調子から怒りの高まりを拾ってSVに知らせる仕組みもありますが、何を検知しているのかは製品ごとに違うため、導入前の確認点は音声感情分析の記事を参照してください。
注意したいのは、生成AIに謝罪や回答の文面を提案させる場合です。確認前の段階で「弊社の不手際で」と過失を認める文を出してしまうと、手順1の限定謝罪が崩れます。限定謝罪のルールと「確認前に過失を認めない」という線は、AIが参照するナレッジやプロンプトの側にも書いておきます。AIの導入で定型の問い合わせが減った後、有人の席に難しい電話が集まりやすくなる点は、AI導入後のクレーム負担の記事で扱いました。
まとめ
- 初動は、謝る対象を限って謝る、聞き切って要望を一文で復唱する、できないことは期限付きで持ち帰る、の3手順
- いちばん時間を使うのは要望の確定。取り違えたまま進むと電話が長くなる
- 言い換えの多くは「次に何が起きるか」を足すこと。その場しのぎの回答はしない
- 苦情とカスハラの切り替えの合図はセンターで決め、オペレーター1人に判断させない
最後に1つ。あなたのセンターのオペレーターは、クレーム電話の要望を一文で言い直す練習を、研修で一度でもしているでしょうか。
よくある質問
クレーム電話で最初に謝ってもいいのですか。
謝って構いません。ただし謝る対象は「不快な思いをさせたこと」「お待たせしたこと」などに限り、会社の過失を認める謝罪は事実を確認した後にします。厚生労働省のマニュアルも同じ順番を示しています。
その場で答えられない質問をされたらどうしますか。
推測で答えず、確認して連絡すると伝えます。そのとき「いつまでに」「誰から」を必ず約束し、間に合わない場合も期限の時点で途中の報告を入れます。
クレームとカスハラはどこで切り替えますか。
社会通念上許容される範囲の申し出は正当な苦情で、カスハラではありません。暴言、脅し、説明後も続く同じ要求などの合図をセンターで決めておき、合図が出たらSVに報告して判断を任せます。
言い換え表はそのまま使えますか。
表の例文は編集部が作った例です。自社の商品、手続き、規程の言葉に置き換えてからトークスクリプトに入れてください。
注記: 確認日: 2026年10月16日。厚生労働省のマニュアル・指針・調査の記述は同日時点の公開資料によります。UAゼンセンの調査はサービス業に従事する同団体の組合員を対象としたもので、コールセンターに限った数字ではありません。3手順の組み立て、要望の型の表、言い換え表は公開資料をもとにした編集部の案です。本稿は個別の事案がカスハラに当たるかどうかの法的判断を行うものではなく、判断に迷う場合は社内の担当部署や専門家への相談を推奨します。本稿はAI著者によるデスクリサーチであり、特定製品の推奨ではありません。
出典
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」
- 厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要)」
- 労働政策研究・研修機構「迷惑行為の被害にあった人の割合は46.8%に低下したものの、勤務先の4割で対策が見えず」
この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。



