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コールセンターの生産性をCPHで測る 計算方法とAI導入後に読み違える理由

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コールセンターの生産性をCPHで測る 計算方法とAI導入後に読み違える理由

CPH(Calls Per Hour、1時間あたりの処理件数)は、処理件数を時間で割るだけで計算できます。難しいのは読み方です。CPHは個人の速さだけでなく、どんな用件が届いたかで動きます。AIが簡単な問い合わせを引き受けるようになると、オペレーターが1人も遅くなっていないのに、センターのCPHは下がります。AI導入後もCPHを生産性の目標に置き続けるなら、用件の構成をそろえて比べる仕組みとセットにしないと、改善を悪化と読み違えます。

結論として、AIを入れたセンターではCPHを個人評価から外し、用件別の管理指標として使うことを提案します。

CPHの計算方法と分母の選び方

CPHの計算方法と分母の選び方

式は1行です。

CPH = 処理件数 ÷ 時間

分子の「処理件数」は、オペレーターが対応した件数です。Amazon Connectのメトリクス定義の「対応した問い合わせ」は、どういう経路で接続されたかを問わず、エージェントに接続された問い合わせを数えます。転送を受けた側も1件と数えるので、転送の多い用件は、センター全体で見ると2回以上数えられることがあります。センター単位のCPHを出すときは、顧客から見た件数(転送の重複を除いた件数)を分子にするかどうかを先に決めます。

分母の「時間」は、選び方が3通りあります。

分母 意味 何が混ざるか
勤務時間 給与が発生している時間あたりの件数 研修・会議・欠勤の多さ
受付可能時間 電話を受けられる状態にいた時間あたりの件数 入電の少なさ(待機)
処理時間 実際に対応していた時間あたりの件数 1件の長さだけ

処理時間を分母にしたCPHは、3,600秒をAHT(1件あたりの平均処理時間。通話・保留・後処理の合計)で割った値と同じです。受付可能時間を分母にすると、そこに占有率(受付可能な時間のうち対応していた割合)が掛かります。

CPH(受付可能時間あたり)= 3,600 ÷ AHT秒 × 占有率

仮に AHT 360秒、占有率 80% の場合
  3,600 ÷ 360 × 0.8 = 8.0件/時

この式が示すとおり、CPHは「1件の速さ(AHT)」と「待機の少なさ(占有率)」の掛け算です。分母に勤務時間を取れば、さらに在席の割合が掛かります。どの分母で出したCPHかを書かない数字は、他の月や他のチームと比べられません。

他のセンターと比べるときは、もう1つ注意がいります。占有率は規模で変わります。KooleとMandelbaumの解説論文によると、米国の通販会社のセンターはピーク時に約95人で占有率約65%、米国の医療保険会社は12センターの平均で占有率91%でした。AHTが同じでも、占有率が65%と91%ならCPHは1.4倍違います。規模の違うセンターのCPHを並べても、速さの比較にはなりません。

CPHが上がる3つの理由、そのうち1つは改善ではない

CPHが上がったとき、理由は3つに分かれます。

1つめはAHTの短縮です。後処理の入力を減らした、ナレッジが探しやすくなった。こうした短縮は顧客との会話を削らないので、そのまま改善と言えます。

2つめは占有率の上昇です。同じ入電を少ない人数で受ければ、待機が減ってCPHは上がります。ただし占有率を上げると待ち時間は延びやすく、応答率と引き換えになっている可能性があります。

3つめが、用件の構成の変化です。簡単な問い合わせの比率が増えた月は、誰の腕も上がっていなくてもCPHが上がります。例えば、キャンペーンの簡単な確認の電話が集中した月がこれに当たります。逆も起きます。そしてAIの導入は、この3つめを逆向きに大きく動かします。

AHTを短くしてCPHを上げる場合でも、確認を省いた短縮は再入電として別の日に戻ってきます。この点はAHT短縮の健全な範囲を扱った記事で詳しく書きました。

AI導入後にCPHだけで見ると誤る理由

AI導入後にCPHだけで見ると誤る理由

ボイスボットやチャットボットにまず任せやすいのは、住所変更や受付時間の確認のような、短く定型の用件です。人に残るのは、長く込み入った用件です。この入れ替わりがCPHに何をするか、仮の数字で計算します。

導入前 導入後
定型の用件(AHT 3分) 50件 20件(30件をボットが完結)
込み入った用件(AHT 9分) 50件 50件
人が対応した件数 100件 70件
人の処理時間の合計 600分 510分
平均AHT 6.0分 約7.3分
CPH(占有率80%) 8.0件/時 約6.6件/時

(数字は説明のための例です)

用件ごとのAHTは導入前後で変わっていません。この例では、それでもCPHは約18%下がります。CPHを生産性の目標にしていると、この数字は「AIを入れたら生産性が落ちた」と報告されます。センター全体で見れば、30件分の対応をボットが引き受け、人の処理時間は90分減っているにもかかわらず、です。人が減った件数と時間をもとに必要人数をどう見直すかは、要員計画をAI導入後に見直す記事に手順があります。

一方で、AIがオペレーターを支援する場合は、CPHを上げる方向に働きます。Brynjolfssonらの研究は、5,179人のカスタマーサポート担当者のデータで、生成AIの支援により1時間あたりの解決件数が平均14%増え、経験の浅い担当者やスキルの低い担当者では34%増えたと報告しています。同じ論文の本文では、1件の処理時間が9%短くなり、1時間あたりに処理できるチャットの件数(論文ではCPH)も増えています。

ボットが簡単な用件を抜けばCPHは下がり、支援AIが1件を速くすればCPHは上がる。両方を同時に入れたセンターでは、2つの力が1つのCPHの中で打ち消し合い、どちらがどれだけ効いたかは見えなくなります。

用件の構成をそろえてCPHを比べる

読み違えを避けるには、用件別にAHTとCPHを出し、用件の構成を基準の月に固定して比べます。

構成をそろえたAHT = Σ(基準月の用件構成比 × 今月の用件別AHT)

仮に基準月の構成比が 定型50%・込み入った用件50% の場合
  今月の用件別AHTが 定型3分・込み入った用件8.5分 なら
  0.5 × 3 + 0.5 × 8.5 = 5.75分(基準月は6.0分)

このAHTから計算したCPHが基準月より上がっていれば、オペレーターの処理は速くなっています。生のCPHが下がっていても、です。生のCPHとの差は、用件の構成が変わった分として別に説明できます。

あわせて、センター全体の指標を1つ置きます。使いやすいのは「顧客1件あたりの人の処理時間」です。人の処理時間の合計を、ボットが完結した件数も含めた全件数で割ります。上の例では、導入前が600分÷100件で6.0分、導入後が510分÷100件で5.1分です。人とAIを合わせたセンターの効率は、この数字で見ます。

用件別に出すには、コールリーズン(問い合わせ理由)が1件ずつ記録されていることが前提です。分類が粗いと、同じ「解約」の中に5分で済むものと20分かかるものが混ざり、構成をそろえても差が残ります。支援AIの効果を測るときの比べ方は、エージェント支援の効果の測り方の記事も参考になります。

CPHを個人評価に使うときの注意

CPHを個人評価に使うときの注意

CPHを個人の目標にすると、オペレーターは短い用件を取りたくなり、長くなりそうな用件を早く切り上げたくなります。どの電話が誰に届くかを本人は選べないので、届いた用件の違いがそのまま評価の差になります。新人とベテランで担当するスキルが違えば、なおさらです。

前出の研究は、生産性の主な指標をチャットの件数ではなく「1時間あたりに解決できた件数」に置いています。速く切り上げても、解決していなければこの数字には入りません。

AIを入れたセンターでは、CPHを個人評価から外し、用件別の管理指標として残すのがよいと考えています。用件別CPHは要員計画や、ナレッジの穴がある用件を見つけるのに役立ちます。個人には、解決したかどうかと再入電の少なさを組み合わせた指標を置きます。全員が同じ用件を受け、AIを使っていないセンターなら、CPHをそのまま個人の目安に使っても大きな歪みは出ません。

まとめ

  • CPHは処理件数÷時間。分母が勤務時間・受付可能時間・処理時間のどれかを必ず書く
  • 受付可能時間あたりのCPHは、3,600÷AHT秒×占有率に分解できる
  • CPHはAHT・占有率・用件の構成で動く。用件の構成の変化は改善ではない
  • AIが簡単な用件を引き受けると、誰も遅くなっていなくてもCPHは下がる。用件の構成を基準月に固定して比べ、センター全体は「顧客1件あたりの人の処理時間」で見る
  • AIを入れたセンターでは、CPHを個人評価から外し、用件別の管理指標にする

先月のCPHが下がったとき、その理由を用件の構成と処理の速さに分けて説明できるでしょうか。

よくある質問

CPHの目安は何件ですか。

用件の長さと占有率で決まるため、一律の目安はありません。例えばAHTが6分で占有率80%なら約8件、AHTが10分なら約4.8件です。他社の数字ではなく、自社の用件別のAHTから計算します。

CPHとAHTはどちらを見ればよいですか。

処理時間を分母にしたCPHは3,600÷AHTなので、中身は同じです。受付可能時間や勤務時間を分母にしたCPHは、AHTに加えて待機や離席の多さも含みます。1件の速さを見るならAHT、人の時間の使われ方まで含めて見るならCPHです。

チャットのCPHは電話と同じように計算できますか。

計算はできますが、チャットは1人が同時に複数件を持つため、AHTが長くてもCPHが高くなることがあります。電話のCPHと並べて比べないようにします。


注記: 本稿は2026年10月16日時点の公開情報と、編集部による実務上の整理によるものです(確認日: 2026年10月16日)。表と計算の数字は説明のための仮の値で、実在のセンターの実績ではありません。Brynjolfssonらの研究の数字は、1社のチャットによるカスタマーサポートを対象とした論文の値です。KooleとMandelbaumの数字は2002年の論文に掲載された米国の事例で、論文ではutilizationと表記されています。指標の定義は製品や設定で異なるため、自社のシステムの定義を確認してください。本稿は特定の製品やサービスを推奨するものではありません。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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