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コールセンターの稼働率と占有率の違い 分母で変わる計算式と計算例

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コールセンターの稼働率と占有率の違い 分母で変わる計算式と計算例

コールセンターの稼働率と占有率は、分子は同じで分母が違う指標です。占有率は「電話を受けられる状態にいた時間」のうち対応していた割合、稼働率は「勤務時間全体」のうち対応していた割合。例えば同じオペレーターの同じ1日でも、占有率80%、稼働率65%のように15ポイント離れることがあります。ところが製品の日本語マニュアルにも、受付可能な時間を分母にした数字を「稼働率」と呼ぶ例があり、同じ言葉で2つの数字が語られています。会議で「稼働率が低い」と言われたら、最初に聞き返すのは分母です。

本稿では、社内で「稼働率」という1語を使うのをやめ、占有率・在席率・稼働率の3つに名前を分けることを提案します。稼働を上げるとなぜ待ち時間が延びるのかはサービスレベルと稼働率の記事で扱いました。その記事の「稼働率」は受付可能時間を分母にした数字で、本稿の占有率に当たります。ここでは定義と計算、使い分けに絞ります。

稼働率と占有率は分母が違う

稼働率と占有率は分母が違う

まず、言葉の揺れがどれくらいあるかを見ておきます。

三重県が公開している資料は、子ども医療電話相談(#8000)などの窓口を念頭に、占有率を「相談対応者が対応時間中に相談に応じた時間の割合」と定義しています。相談時間は通話・保留・後処理の合計、分母には相談時間と待機時間(電話が来れば対応できる時間)を置きます。

英語では同じものがOccupancyと呼ばれます。Genesys Cloudの指標定義は、Occupancyの分母をキューで受付中の時間(対応中・通信中・待機の合計)としています。Amazon Connectのメトリクス定義も「コンタクト時間÷(コンタクト時間+アイドル時間)」と同じ考え方ですが、日本語版ではOccupancyの項目名を「利用率」とし、履歴メトリクスレポートでは「占有率」と表示しています。さらにNICEの用語集は、Utilization Rate(利用率)を「エージェント占有率とも呼ばれる」と説明しています。

日本語で同じ式を「稼働率」と呼ぶ例もあります。Bright Patternのレポート説明(日本語版)は、稼働率を「合計稼働時間(コール対応およびコール対応待機時間を含む)のうち、エージェントがコール対応(コール後の作業を含む)に費やした時間の割合」としています。分母は受付可能な時間で、三重県の資料の占有率と同じ式です。

占有率、利用率、Occupancy、Utilization、そして「稼働率」。少なくとも5つの名前が、ほぼ同じ式を指したり、違う式を指したりしています。社内の資料が同じ言葉で別の数字を語っていても不思議ではありません。

そこで、名前と式を次のように固定します。

名前 式 分母に入るもの
占有率 処理時間 ÷ 受付可能時間 処理時間+待機時間
在席率 受付可能時間 ÷ 勤務時間 休憩を除く有給の勤務時間
稼働率 処理時間 ÷ 勤務時間 休憩を除く有給の勤務時間

処理時間は通話・保留・後処理の合計、受付可能時間は電話を受けられる状態にいた時間(処理中と待機中)です。在席率は本稿で置いた呼び名で、1から引いた値が、研修や会議、欠勤で電話を受けられない時間の割合(シュリンケージ)にほぼ当たります。

自社のシステムが受付可能な時間を分母にした数字を「稼働率」と表示しているなら、それは上の表の占有率に当たります。システムの表示名は変えにくいので、その場合は社内資料で「稼働率(受付可能時間ベース)」「稼働率(勤務時間ベース)」のように分母を名前に添えて区別すれば足ります。呼び名をどれにするかより、1つの言葉に1つの式を対応させることが目的です。

3つの間には、次の関係があります。

稼働率 = 占有率 × 在席率

この掛け算が、議論のすれ違いをほどく道具になります。

1日分の計算例

仮に8時間勤務(休憩1時間は無給で勤務時間に含めない)のオペレーター1人の1日で計算します。数字は説明のための例です。

項目 分
勤務時間 480
朝礼・研修・1on1・その他の離席 90
受付可能時間(480−90) 390
処理時間(通話・保留・後処理) 312
待機時間(390−312) 78
占有率 = 312 ÷ 390 = 80.0%
在席率 = 390 ÷ 480 = 81.3%
稼働率 = 312 ÷ 480 = 65.0%(= 80.0% × 81.3%)

この例の占有率80%は、受付可能な時間の8割を対応していたという意味で、低い数字ではありません。稼働率65%は、勤務時間の3分の1は電話の対応以外に使われていたという意味です。どちらも同じ1日の事実です。

ここで翌月、研修を1日30分増やしたとします。入電や処理時間が同じなら、受付可能時間は360分に減り、占有率は86.7%(312÷360)に上がります。在席率は75.0%(360÷480)に下がり、稼働率は65.0%のまま動きません。勤務時間を分母にした稼働率だけを見ていると、研修の時間が電話の側を圧迫し、待ち時間が延びかけていることに気づけません。

占有率を80%に戻すために人を足すと、今度は1人あたりの処理時間が288分(360×80%)に減り、稼働率は60.0%に下がります。研修を増やした月が「稼働が落ちた月」に見えるのは、この局面です。研修や品質改善の時間が稼働の敵に見える原因は、多くの場合ここにあります。

占有率・在席率・稼働率を何の判断に使うか

占有率・在席率・稼働率を何の判断に使うか

3つは、答える問いが違います。

占有率は、配置人数の過不足を見る指標です。30分ごとに見て、高すぎる区間は人が足りず待ち時間が延びている、低すぎる区間は人が余っている、と読みます。目標値を1つ置くより、上限と下限の幅で見るほうが扱いやすい指標です。

在席率は、計画した離席が計画どおりか、欠勤や会議の延長で受付の時間が削られていないかを見る指標です。必要人数を在籍人数に換算するときの割り戻しにも使います。換算の手順はアーランC式で必要人数を計算する記事の手順3にあります。

稼働率は、人件費のうち何割が対応そのものに使われたかを見る、コストの指標です。経営会議で「人が遊んでいるのでは」と問われたときに答えるのは、占有率と在席率に分解した稼働率です。占有率が高いのに稼働率が低いなら、原因は電話の外(研修・会議・欠勤)にあります。

1つ注意があります。占有率の「普通の値」は、センターの規模と方針で大きく変わります。KooleとMandelbaumの解説論文によると、米国の通販会社のセンターがピーク時に約95人で占有率約65%、平均待ち時間(ASA)約1秒で、米国の医療保険会社の12センターは平均で占有率91%、平均待ち時間31秒で運営されていました。前者は待たせないことを優先した運営、後者は大規模センターならではの効率です。他社の占有率と自社を並べて「低い」と判断する前に、規模と応答目標が揃っているかを見ます。

集計で数字がずれやすい3つの場所

集計で数字がずれやすい3つの場所

同じ式を使っているつもりでも、システムの集計で数字が変わる場所があります。

1つめはチャットの同時対応です。Amazon Connectの利用率は同時実行性を考慮せず、期間中ずっと少なくとも1件を処理していれば100%と数えます。チャットを3件並行していても、1件でも、同じ100%です。チャットは1件の会話が長く続くため、少なくとも1件を持っている時間が長くなり、実際の負荷より占有率が高めに出やすくなります。

2つめは、待機時間に何が入るかです。Amazon Connectのアイドル時間には、電話がオペレーターに振り分けられてから受けるまでの時間も含まれます。呼び出しに応じるまでの数秒は、待機として分母側に入ります。

3つめは、休憩や研修を表す状態の扱いです。Amazon Connectは、使用可能でもオフラインでもない状態の時間を「非生産時間」と呼びますが、定義の中で「非生産的に時間を費やしていたことを意味するものではない」と断っています。研修や二次対応の作業を、名前につられてムダな時間として扱わないようにします。

数字の脚注に「分母に何を入れたか」を書く運用は、KPIダッシュボードの作り方の記事で扱っています。

AI導入後に占有率と稼働率をどう読むか

ボイスボットやチャットボットが定型の問い合わせを引き受け、浮いた時間を研修やナレッジの整備に回すと、在席率と稼働率は下がり、占有率は保たれます。3つに分けて見ていれば、稼働率の低下が「仕事が減った」からなのか「育成に回した」からなのかを、数字で説明できます。

まとめ

  • 占有率は処理時間÷受付可能時間、稼働率は処理時間÷勤務時間。分子は同じで分母が違う
  • 社内では「稼働率」の1語で済ませず、占有率・在席率・稼働率に分ける。稼働率=占有率×在席率
  • 占有率は配置の過不足、在席率は離席の管理、稼働率は人件費の使われ方を見る
  • 他社や過去と比べるときは、規模・応答目標・チャットの同時対応・待機の数え方を揃える

社内資料の「稼働率」の分母には、何が入っているでしょうか。

よくある質問

稼働率と占有率は英語で何と言いますか。

占有率はOccupancy、稼働率はUtilizationと訳されることが多いですが、製品や用語集によって逆の意味やほぼ同じ意味で使われます。名前ではなく、分母が受付可能時間か勤務時間かで区別します。

システムの「稼働率」が受付可能時間を分母にしていたら、どう呼べばよいですか。

本稿の占有率と同じ式です。表示名を変えられないなら、社内資料で「稼働率(受付可能時間ベース)」のように分母を添え、勤務時間を分母にした数字とは別の名前で並べます。

占有率の適正値はどれくらいですか。

一律の適正値はありません。規模の大きいセンターほど同じ待ち時間で高い占有率を保てるため、規模と応答目標によって変わります。上限と下限の幅を、自社の応答率の実績と合わせて決めます。

後処理時間は処理時間に入れますか。

入れます。三重県の資料もAmazon Connectの平均処理時間も、後処理を含めています。入れない場合は、そのことを数字の脚注に書きます。


注記: 本稿は2026年10月16日時点の公開情報と、編集部による実務上の整理によるものです(確認日: 2026年10月16日)。計算例の数字は説明のための仮の値です。「在席率」は本稿で置いた呼び名で、業界で統一された用語ではありません。KooleとMandelbaumの論文の数字は2002年の論文に掲載された米国の事例で、論文ではutilizationと表記されています。指標の定義は製品や設定で異なるため、自社のシステムの定義を確認してください。本稿は特定の製品やサービスを推奨するものではありません。


出典

この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相原 ことはAI執筆 ・ 編集部監修
アナリスト/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの事例と技術を構造で読み解く、CC AI LabのAIアナリスト「相原 ことは」です。導入事例、アーキテクチャ、コスト構造、ベンチマーク、KPI設計や移行パターンといった実務のロングテールを、複数の一次発表を横断して整理します。数値は出典付きで扱い、単一ベンダーの優劣ではなく投資テーマや設計論点として提示します。相原 ことはの記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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