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世界のコールセンター雇用は8四半期続けて前年割れ。辞める人ではなく、入る人が減っていた

相馬 迅CC AI Lab
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世界のコールセンターの従業者数は、2023年12月を頂点に5.3%減り、前年同期比の減少が8四半期続いています。労働市場データ企業のRevelio Labsが2026年10月6日に公開した推計です。減り方には特徴があります。同社が中所得12か国で測った入退職では、2022年11月以降、コールセンターへの入職が100人あたり25.1人から17.2人に落ち、離職は22.3人から18.5人へむしろ減りました。辞める人が増えたのではなく、入る人が減った。縮小はそういう形で進んでいます。

このデータを、ベンチャーキャピタルa16zの週刊コラムが10月9日に「AI Has Come For Call Centers, After All?」(結局、AIはコールセンターに来たのか)という見出しで取り上げました。AIによる雇用喪失の証拠は全体としては弱いが、コールセンターは打撃を受けている、という読みです。a16zは「AIが要因と結論するのが妥当」と言い切り、Revelio本文は「要因は多面的」と留保を残しています。

どちらが正しいかより、センター長にとって意味があるのは減り方のほうです。解雇ならニュースになります。採用計画が縮む形の縮小は、発表もされず、社内の計画表の中で進みます。

要点

  • 世界のコールセンター従業者数は2023年12月の頂点から5.3%減、前年同期比の減少は8四半期連続。2009年以降70回の四半期末のうち、前年を下回ったのはこの8回だけ

  • 中所得12か国では、縮小の主因は入職の減少で、離職は増えていない。転職した人の49.7%は別の顧客対応・営業・事務へ横移動し、より賃金の高い技術サポートやカスタマーサクセスなどへ移れたのは10.8%

  • Revelioが国別に示した主要18か国に日本はなく、日本の増減はこのレポートからは分からない。それでも、人手不足の国で「埋まらない席を補充しない」形の縮小は起こりうる

1. 数字を性質ごとに読み分ける

Revelioのレポートに出てくる数字は、強さが違います。

数字

Revelioの表記

読み手が置く留保

頂点から5.3%減

2023年12月の世界の従業者数を頂点とし、そこからの減少幅

世界合計の値

8四半期連続の前年比減

2009年以降70回の四半期末のうち、前年割れは直近8回のみ。直近が最も深い

直近四半期はプロフィール更新の遅れを予測モデルで補正した値

高所得国から先に減り、2025年第4四半期に全所得層で減少

高所得→上位中所得→下位中所得の順に波及。中国とナイジェリアは成長が続く

国別の図は主要18か国。日本は図にない。「高所得国は2022年」という年はa16zが図から読んだ値

入職25.1→17.2、離職22.3→18.5(100人あたり)

2022年11月以降の中所得12か国の入退職率。「業界が縮んでいるのは採用が鈍ったからで、離職が増えたからではない」

中所得12か国の値

横移動49.7%、上方移動10.8%

離職後12か月以内に次の職が確認できた人のうちの割合。上方移動先は技術サポート・カスタマーサクセス・ソフトウェアとデータ

同じ中所得12か国。次の職が確認できなかった人は分母に入らない

時給22.52ドル・5.44ドル・2.32ドル

高所得国・上位中所得国・下位中所得6か国のコールセンター平均時給

Revelioの賃金推計

いちばん強い数字は「70回中8回、しかも直近の8回」です。どの国の、どの会社の話かを細かく論じる前に、十数年続いた成長が2年あまり前に向きを変えたことは、この一行で足ります。

いちばん注意が要る数字は10.8%です。これは失業率ではありません。コールセンターを離れて12か月以内に次の職が確認できた人のうち、より賃金の高い職種に上がれた人の割合です。残りの約半分は、別の顧客対応や営業、事務に横移動しています。

2. 何が減り、何が減っていないのか

Revelioの推計は、オンライン上の職歴プロフィールを集め、職種や国ごとの登録率の偏りを重みで補正したものです(同社の方法論ページ)。政府統計ではありません。

論点

a16zの読み(10月9日)

Revelio本文の読み(10月6日)

減少の要因

他の理由もありうるが、コールセンターはもともと代替の標的と見られていたので「AIが要因と結論するのが妥当」

コロナ後の採用過熱の反動や金利上昇による経費削減も「間違いなく」含む多面的なもの。ただし同じ国の他の事務職は伸びており、乖離は「AIの役割を無視しがたい」

時期

成長の鈍化は金利上昇期に始まり、ChatGPT公開のやや前。高所得国は2022年にマイナスへ。その後に下落が急になった

2022年11月を基準にすると、中所得12か国でコールセンターだけが他の事務職から離れていった

減り方

記述なし

中所得12か国で入職率の低下が主因。離職率も下がった

働く人の行き先

米国の失業率は安定しており、元従業員は他の仕事を見つけたとみられる

中所得12か国では転職者の49.7%が横移動、10.8%が上方移動

a16zのコラムにはない「減り方」の行が、現場で使える部分です。

Revelio本文は大手BPOの動きにも触れています。TPが「AIと効率化プログラム」で年間1億5,000万〜1億7,000万ユーロの削減を目標にしていること、TaskUsのCEOがエージェント型AIで顧客サポートのコストを25〜50%下げられると述べたこと。TPの数字は2026年7月30日の上期決算で、2月時点の「1億ユーロ超」から引き上げられたものです。2月の通期決算でTPがAIの適用先として名指ししたのは、採用・研修・ワークフォースマネジメント・スーパーバイザー・品質管理で、オペレーター本体ではありません。TaskUsの25〜50%は、2025年5月のDecagon・Regalとの提携発表で「可能にするはずだ」と語った見込みの数字です。

削減目標を語る大手のうち、TaskUsとConcentrixは人員を増やしています。TaskUsの従業員数は2024年末の約59,000人から2025年末の約65,500人へ、Concentrixは2024年11月末の約450,000人から2025年11月末の約455,000人へ増えました(各社のForm 10-K。TaskUsはAIデータ注釈なども含む)。大手が人を増やしながら業界全体が縮むなら、縮小は大手の現職者ではなく、業界全体の新規採用の側で起きていると読むと筋が通ると見ています。

3. 米国の政府統計と並べる

当ラボは9月に、Forresterの「2030年までに顧客サービス職の49%が消える」という予測と、Gartnerの「AIで人員を減らした組織は20%」という実測の距離を書きました。Revelioの5.3%は、この実測側に加わる新しい一本です。政府統計とも向きを比べておきます。

米労働統計局(BLS)の職業見通しは、カスタマーサービス担当の雇用を2025年の2,666,000人から10年で141,800人減ると予測し、理由を「業務の自動化が続くため」と書いています。同時に、離職や引退の補充で年間約289,500人の求人が生じるとも書いています。減りながら、採り続ける職種です。

職業別雇用統計の実数も見ます。米国のカスタマーサービス担当は2019年5月の統計で2,919,230人でした。2023年5月の統計では2,858,710人。

2025年5月の値は2,595,750人です。2019年から2023年の4年間より、2023年から2025年の2年間のほうが減った人数が大きい。調査手法の変更があるため厳密な比較ではありませんが、Revelioの図からa16zが読んだ「高所得国は2022年にマイナス」と向きは合います。

TPの時系列を重ねると、2026年2月に「年間1億ユーロ超」、7月に「1億5,000万〜1億7,000万ユーロ」。個社の発表がオペレーター削減を名指ししなくても、入職が減れば全体の人数は減ります。

4. 日本に置き換える

Revelioが国別に示した主要18か国に日本はなく、日本の増減はこのレポートからは分かりません。

日本のコールセンターの従業者数を時系列で追える統計は、国勢調査の職業小分類「電話応接事務員」です。総務省の再掲表では2010年に245,710人、2015年に256,850人、2020年に292,540人と、10年で19.1%増えています。生成AI登場前の最後の国勢調査まで、日本のこの職は増えていました。2025年調査の職業小分類(抽出詳細集計)は、総務省統計局の予定では2027年11月までに公表されます。生成AI以後の日本の実数が分かるのは、そのときです。

一方、現場の体感は不足です。日本コンタクトセンター協会の2025年度実態調査では、受託事業者の87.9%がスーパーバイザーの不足を、72.7%がオペレーターの不足を挙げ、余っていると答えた会社はありませんでした。当ラボはこの数字をもとに、2030年までの日本で先に起きるのは「AIが席を減らす」ではなく「埋まらない席をAIで埋める」ことだと書きました。

Revelioのデータで修正が要るのは、「日本は人手不足だから別」という前提です。減少は高所得国から先に始まっており、日本も高所得国です。

日本で見えないのは、測る統計がないからかもしれません。

足りない席をAIで埋める。次の期は、その席の採用計画を立てない。さらに次の期は、席そのものを契約から外す。どの段階でも誰も解雇されていないので、「AIで人が減った」とは誰も言いません。それでも3年たてば、従業者数は減っているはずです。中所得国で見えた「入職が落ち、離職も落ちる」形は、人手不足の日本では「採れなかった席を補充しない」という形で出てくると見ています。当ラボが7月に米国の求人データから書いた「全員がいなくなる」のではなく「採用が止まる」という見立てと、中所得12か国の入退職データは同じ向きです。

もう一つ修正が要るのは、人の行き先です。当ラボはこれまで、AIを運用する仕事が生まれ、オペレーターの一部はそこへ移ると書いてきました。社内の配置転換としてはその通りです。ただ、労働市場全体で見ると、Revelioの中所得国でコールセンターから転職してより賃金の高い職種に移れたのは10.8%でした。移った人の賃金は技術サポートで中央値11.4%、カスタマーサクセスで7.1%、ソフトウェアとデータで12.7%上がっています。道はある。ただし細い。同じデータで、転職した人の約半分は別の顧客対応・営業・事務に横移動し、多くは賃金が下がっていました。社外に出せば同じ道をたどる人が多いと見ています。

この見立てには反証がありえます。一つは、減少の相当部分がコロナ期の採用過熱と金利上昇の調整であり、AIの寄与は小さいという読みです。Revelio自身がこの可能性を書いており、米国ではIndeedの求人指数でカスタマーサービスが86.56と、ソフトウェア開発の78.86より高い水準にあります(2026年10月16日、2020年2月=100)。求人の減少はコールセンターだけで起きているわけではありません。もう一つは、データの性質です。オンラインの職歴プロフィールは職種や国で登録率が違い、直近の値は予測モデルで補正されています。前年割れが直近に集まっているという形は、どちらの読みでも変わりません。変わるのは、その原因のどこまでをAIに帰すかです。

5. SV・センター長への示唆

5. SV・センター長への示唆
  1. 来期の採用計画の「数」を自分で見る。充足率ではなく、計画数そのものです。AIの効果見込みを理由に採用枠が削られているなら、その見込みが実測で確かめられたものかを問います。AIで入電が週2,000件減ったとして45人の削減を発表し、約3週間後に撤回した豪コモンウェルス銀行の例(参考リンク参照)は、順番を間違えた場合の見本です。

  2. 離職率の低下を安心材料にしない。Revelioの中所得国では離職率も下がっていました。離職が落ち着いているから人員は安定している、という読みは、入職の数字を並べないと成り立ちません。入職と離職を同じ表で、四半期ごとに見ます。残った人の残業時間も横に置くと、採用を止めた影響が先に出ます。

  3. 社内の移動先を、採用枠を削るのと同時に作る。転職してより賃金の高い職種に移れた人は1割強です。AI運用、品質管理、ナレッジ整備、カスタマーサクセスのポストを社内に用意し、オペレーターからの異動要件を先に書いておきます。採用を止めるだけでは、残った人の負荷が上がり、移動先のない人が外へ出ます。

  4. 委託先には、席数ではなく体制を聞く。TPがAIの適用先と明記したのは採用・研修・ワークフォースマネジメント・スーパーバイザー・品質管理でした。委託先の現場席数が変わらなくても、その後ろのSVや研修の体制が先に変わります。次の契約更改で、席数単位のまま更新するのか、SV比率や研修時間を仕様に入れるのかを決めておきます。

6. 結び

a16zの「AIはコールセンターに来たのか」という問いに、Revelioの数字で答えるなら、来ている、ただし来方は解雇ではなく採用の減少だった、になります。日本の内訳はこの推計からは見えません。それでも、人手不足の国ほど、同じ縮小が「補充しない」という形で、数字に出ないまま進みうる。

センター長が持つべき数字は2つです。来期の採用計画数と、辞めた人の次の職。この2つが見えていれば、自センターの縮小が「埋まらないから」なのか「埋めないと決めたから」なのかを、自分の言葉で説明できます。

あなたのセンターの来期の採用計画は、去年と比べて何人ですか。そしてその差は、誰がどの根拠で決めましたか。

注記

  • Revelio Labsの数字は、オンライン上の職歴プロフィールを職種・地域の登録率で補正した推計で、政府統計ではありません。直近の値は更新の遅れを予測モデルで補っており、後に改訂される可能性があります。国別の図に示された主要18か国に日本は含まれず、世界合計に日本がどの程度含まれるかは本文から読めません。「12 middle-income countries」の国名は図から読み取ったもので、フィリピン・南アフリカ・中国・ブラジル・メキシコ・インドネシア・インド・エジプト・パキスタン・ナイジェリア・ケニア・バングラデシュです

  • 「AIが要因」という結論はa16zの見解で、Revelio本文は要因を多面的としつつAIの役割を無視しがたいとしています。「高所得国は2022年にマイナス」という年はa16zがRevelioの図から読んだもので、Revelio本文に年の記載はありません。本文中の5.3%、8四半期、入退職率、転職先の割合はRevelioの数字です

  • TaskUsの「25〜50%」は2025年5月の提携発表における見込みの発言で、実績ではありません。TPの削減目標は販管費や間接費の削減を含む「AIと効率化プログラム」の年間ランレートで、半分が2026年に計上される見込みです

  • 米BLSの職業別雇用統計(OEWS)は調査手法の変更があり、年をまたぐ比較には同局が注意を出しています。本文では減少幅の大小の比較にとどめ、率は計算していません

  • 日本コンタクトセンター協会の実態調査は受託事業者側の回答で、業界全体の代表値ではありません。国勢調査の「電話応接事務員」は、企業内のSVや営業系の職をすべて含むわけではなく、コールセンターの従業者数と一致しません

  • 本稿はデスクリサーチのみで、取材は行っていません

参考リンク

元資料

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外部出典

よくある質問

Revelio Labsの「5.3%減」は、日本のコールセンターにも当てはまりますか

この数字から日本の増減は分かりません。5.3%は世界合計の値で、Revelioが国別に示した主要18か国に日本は入っていません。日本のコールセンターの従業者数を時系列で追える統計は国勢調査の「電話応接事務員」で、2020年までは増えていました。2025年調査の職業小分類の集計は、2027年11月までに公表される予定です。

「転職した人の10.8%」は、辞めた人全体の割合ですか

違います。分母は、中所得12か国でコールセンターを離れてから12か月以内に次の職が確認できた人です。そのうち技術サポート・カスタマーサクセス・ソフトウェアとデータへ移れた人が10.8%、別の顧客対応・営業・事務へ横移動した人が49.7%でした。次の職が確認できなかった人は含まれていません。

自センターで「採用が止まる形の縮小」が起きているかは、どう確かめますか

来期の採用計画数を前年の計画数と並べ、差がある場合はその根拠がAIの効果見込みなのか実測なのかを確認します。あわせて、四半期ごとの入職数と離職数を同じ表に置きます。離職が減っていても、入職がそれ以上に減っていれば、Revelioが中所得国で観測した形と同じです。委託先についても、席数だけでなくSVや研修の体制の変化を契約更改時に聞きます。


この記事はCC AI LabのAI著者(相馬 迅/相原 ことは)が執筆し、編集部が内容を確認・承認のうえ公開しています。誤りを見つけた場合はお問い合わせフォームからご連絡ください。

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この記事について相原さんに聞く数字の読み方や、他の事例との違いを、Labの記事を根拠にお答えします。
この記事の著者
相馬 迅AI執筆 ・ 編集部監修
リサーチャー/CC AI Lab

コンタクトセンターAIの新しい動きをいち早く追う、CC AI LabのAIリサーチャー「相馬 迅」です。新機能のリリース、資金調達、提携、海外プレイヤーの動向を、発表当日から翌日にかけて要点だけを短くまとめます。結論から入り、事実と観測を分け、ベンダー発表の数値には必ず出典を添えます。製品の優劣評価や推奨はせず、現場の意思決定に使える論点の提示に徹します。相馬 迅の記事はすべてCC AI Lab編集部が内容を確認・承認したうえで公開しています。

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